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秋を走る Archive

期分け・72

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【期分け・72】前回は、10月の走り込みに入る前に「現状の自己分析」を実施する話しをしましたが、今回から結果が悪かったケースについて考えていきます。

あらためて、マラソンで失敗したパターンについて解析していくと、実に様々なケースがあります。代表的なのは、やはりマラソン当日のコンディションによるものです。多いのは、気温や湿度が高かったため脱水症になったケース。冬の冷雨や雪で低体温症に陥ったケース。海岸沿いのマラソンコースに特有の強い向かい風。…等々、どれもマラソンの記録を阻む最大の要因です。

次に、よく耳にするのは、やはり30k以降の失速です。そして、その原因の多くは前半のオーバーペースです。特に、男性市民ランナーに多く見受けられます。具体例として、元々運動神経が良く、短距離が速いタイプの方は10kまでの距離なら走り込みをしていなくても意外と速く、10kで40分を切ってしまう方も珍しくありません。このような方がマラソンに挑戦した場合、15kから20kあたりまで快調にとばし、そこから大きく失速するパターンは本当に多いと感じます。

更に、コースの起伏が大きいケースや途中の給水に失敗するケース等、もっと掘り下げていくと複数の要因が重なっているケースもあります。

そして、これらの要因について更に解析していくと、そのほとんどが「走り込み不足」にたどりつきます。上記した当日のコンディションについても、後半の失速についても、走り込み不足から起因する「ペース感覚をつかめていない」ことが、最も大きな要因のひとつとなります。特に、マラソンを走る場合、かなり余裕のある一定のペースで走ることが基本となります。

実は、多くの方は、物心が付いた頃から「走ること=全力疾走(競争)」とのイメージを植え付けられています。その証拠に幼稚園からはじまり、中学や高校でも「ゆっくり長く走る」ことを教える授業や指導はほとんど見かけることはありません。少なくとも私自身は受けたことがありません。

したがって、多くの方が持っている「ペース感覚」とは、全力で走る方への物差しであり、苦しいことを察知する感度ばかり発達していると考えます。一方で、マラソンを攻略していく上で重要な「ペース感覚」とは、その逆で、より楽に感じる「余裕度」を自分自身の中で構築していくことがポイントとなります。

別の表現をするなら「辛い(速い)」と「甘い(遅い)」です。辛さについては「激辛」と言うように細かく何段階にも分け、人はそれを感じることができます。しかし、甘さについては「激甘」とは言いません。コーヒーにスプーンで砂糖を入れていったとき、おそらく3杯も10杯も感覚的にはわからなくなります。

つまり、人は「辛さ(速い=きつい)」には敏感だが、「甘さ(遅い=楽)」には鈍感です。マラソンを攻略していく上での「ペース感覚(走り込み)」は、この「甘さ(遅い=楽)」に対し、敏感になる必要があります。だからこそ難しいのかもしれません。

つづく。

期分け・71

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【期分け・71】10月に入りましたが、思ったほど涼しくなりません。走り込みに最も適した月と話しましたが、厳しいコンディションが続いている状況です。…と、言いながら走り込みを断念する訳にはいきません。そこでもう一度、マラソンに向けた走り込みについての考え方を整理してみます。

はしめに、これからマラソンに挑戦しようとしている皆様方は、自分自身がどんな状況にあるかを確認することが最初の一歩となります。もう少し具体的に説明すると、今回が初マラソンなのか、既に何度かマラソンの経験があるのか。更に、マラソン経験があるなら、特に前回のマラソンが狙いどおりに走れたか。狙いどおりに走れた方は自己新だったか。そして、その成功要因を把握できているか。等々…。

逆に失敗した人は、その理由が当日の天候等によるコンディションだったか。あるいは、スタミナが枯渇し後半大きく失速したのか。その状態でも最後まで完走したか。その失敗要因を把握できているか。等々…。

このように、いくつかの項目を確認することはとても重要です。実は、これまでも「期分け」シリーズでマラソンに向けた走り込みを考えてきましたが、正確には個々に走力やトレーニング環境等が違うため、誰もが同じ走り込みを実施したからと言って、同じ結果を見込めるとは限りません。

実際に私が主宰する富津合同マラソン練習会においても、この時期はほぼ週末毎に40k走を実施しています。そして、多くの市民ランナーたちが切磋琢磨しながら走り込んでいます。ところが、同じ走り込みを実施して同じ大会に出場しても結果を残せるランナーと、思うように結果を残せないランナーが必ず存在します。

そして、目標を達成できたか否かに関係なく、その要因は何かを最初に考えることは、次のマラソンを目指す上で最も重要なデータとなります。もちろん、最初から科学的とか運動生理学的の専門的な解析を伴う必要はありません。上記したような項目について大まかでも把握しておくことが重要です。

この10月から本格的な走り込みを開始していく皆様方も、まずはこの点をしっかりと把握した上で走り込みを開始してほしいと思います。

次回からは、この点を考慮した走り込みを考えていきます。

つづく。

絆・12

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【絆・12】盲人マラソン協会主催の強化合宿を10月5日(土)から1泊2日の日程で、千葉県富津市富津公園にて実施しました。今回の強化合宿は、選手と伴走者及びスタッフの合計が38名と、過去最大の参加人数となりました。

また、今回は医科学サポートのご協力により、トレーニング中の乳酸値測定とハートレートモニターを着装して心拍数を記録しました。至極当然のことですが、医科学的な測定や解析を実施したからと言って直ちにトレーニングやパフォーマンスに反映できるものではありません。日々のトレーニング同様、今後も定期的にデータを積み重ねていくことが重要です。

同時に、測定した数値に異常があったからと言って、その選手の記録が悪くなるとも言えません。私の経験談になりますが、私も現役時代、月に1回以上は必ず血液検査を受けていました。当時の走行距離は、多い月は千キロに達していたので、貧血と常に隣り合わせの状況でした。もちろん、食生活や睡眠時間等にも注意していましたが、血液検査の数値が良い方に改善された場合、当時のお世話になった先生に必ず言われたのは、「今月は練習をかなり落としているね(サボっているね)」でした。

つまり、激しいトレーニングをしている選手の各種数値が改善されることは、逆にトレーニングを落としている(サボっている)疑いもあり、必要以上に練習を休めば必ず数値は改善されます。その証拠に、先生から強豪チームの血液データを見せていただいたことが何度かありましたが、力のない選手ほど各種数値が良い傾向にあったのです。つまり、力のない選手は練習量や質が足りていないのと、自分自身を追い込めない証拠でもあると教えていただきました。※参考までに今現在の私はジョギング程度なので、貧血とは全く無縁の健康的な数値となっております。

そして、医科学的なデータや栄養学的なサポートを取り入れることは、トレーニング量を減らして効率を上げることではありません。医科学的なデータや栄養学的なサポートが後押しすることで、トレーニング量や質を更に上げるためにあると考えます。即ち、これまで以上に苦しく厳しいトレーニングを可能にしていくためのサポートであるとも考えます。

今回、はじめて各種測定を受ける選手も多かったのですが、データ的に見ても強い選手は自分自身をキッチリと追い込みきれており、やはりデータは嘘をつかないとも感じました。もちろん、今後も定期的に医科学サポートを受けながら、世界と勝負できるトレーニングを目指していきます。同時に、選手たちの意識レベル向上にもつなげていきます。

つづく。

期分け・70

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【期分け・70】厳しかった残暑(猛暑)もひと段落し、いよいよマラソンシーズンの到来です。同時に、マラソンに向けた走り込みを実施するにも適した季節となります。特に、10月は1年間を通じて最も走り込みに適した月のひとつで、厳しい残暑を乗り切ったランナーの皆様方にとっては、実りの秋でもあります。

また、この「期分け」シリーズでもマラソンに向けた走り込みのトレーニング方法を取り上げてきました。その中において、この10月は「第1次走り込み期(8月~10月)」と位置付け、秋から冬のマラソンシーズンに向けた走り込み期としては極めて重要な期であります。そして、今年も10月に突入し、再び走り込みの季節がめぐってきました。

ところが、今年の夏は記録的猛暑となり、更に厳しい残暑が続きました。そのため、夏の走り込みを十分にできなかったランナーも多いと推測されます。同時に、秋のマラソンには間に合わないと、既に諦めムードに陥っているランナーも意外と多いのではと思いますが、いかがでしょうか?

マラソンで最も大切なことは、「最後まで諦めない心」です。

厳しい暑さのため、夏に思うような走り込みができなかった方々も、この10月での挽回は可能です。何度も言いますが、「最後まで諦めない心」です。まずは、この気持ちを常に忘れることなく、これからの走り込みを積み重ねてほしいと思います。

さて、これまで「期分け」シリーズの中で、マラソンに向けた走り込みについて色々と考えてきました。上記したように、秋のマラソンに向けた「第1次走り込み期」は、8月から10月としていますが、実に3ヶ月間の期間です。

実は、これまであまり触れてきませんでしたが、特に走歴の浅い市民ランナーの多くは、3ヶ月間も走り込みを持続していくことが体力的に難しく、逆に故障や怪我をしてしまう方も少なくありません。また、メンタル面でも単調な走り込みに飽きてしまい、途中で気持ちが途切れてしまうケースも見受けます。これは、意外にも実業団選手(プロ)の中でも見られるケースで、マラソンは難しいと思われる理由のひとつでもあります。

しかし、逆に上記の理由で夏の走り込みが不足した方でも気持ちを集中させ、10月の走り込みを充実させれば、11月下旬から12月以降のマラソンも十分に対応できると考えます。そのためには、「最後まで諦めない心」を忘れず、10月の走り込みに挑戦してほしいと思います。

つづく。

南房総市ロードレース千倉

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【南房総市ロードレース千倉】9月23日(月・祝)、千葉県南房総市において、「南房総市ロードレース千倉」が開催されました。この大会は、今回で42回と伝統があり、かつて私も何度か走った大会です。

今回、、久々に選手の応援で大会会場まで足を運びましたが、アットホームな大会の雰囲気は昔と変わりません。ご存知のとおり、ランニングブームがきっかけで、全国各地で開催される多くの市民マラソン大会は大盛況で、申込みがわずか1日で終了してしまうケースも珍しくなくなりました。

同時に、大会会場の大きさや会場までのアクセス等を考慮しないまま定員だけを増やし、多くのトラブルを抱えている大会が増えているのも事実です。そんな中、同大会もランニングブームの影響で参加者は増えていますが、身の丈に合った大会運営を継続していると感じる大会です。もちろん、個人的にもこの雰囲気を継続してほしいと願っております…。

また、同大会は日本陸連未公認大会なのですが、昔から箱根を目指す多くの学生選手たちが出場することでも有名です。ちょうど、夏の走り込みを終え、秋の駅伝シーズンに入る前の調子を確認する意味でも、手ごろな大会だからです。かくいう私も現役時代、同様の理由で同大会のハーフを何度か走りました。

その当時は、夏の走り込みを終え、あえて調整をしない状態でハーフを走るのですが、一緒に走る二十前後の学生選手は容赦なくスタートから突っ込みます。もちろん、、負けじと付いていきましたが、夏の疲労が残っている状態なので、15kあたりからかなり苦しみました。まるで30kを過ぎたマラソンのようでした。しかし、このハーフで強い刺激が全身に入ると、10月から一気に調子が上向いていきました。今となっては懐かしい思い出です…。

さて、42回目となった今大会は、海からの風が強く、参加したランナーたちを苦しめました。もちろん、その強風は記録にも影響し、どの部門の記録も低調でした。そんな中、私がコーチする選手(市民ランナー)たちも元気に出走しました。

結果は、強風の影響で記録は低調でしたが、それぞれの部門で上位に入ることはできました。特に、10kの部門に出場した2選手は、前日に30kの距離走を実施してからの出場でしたが、男子総合4位と女子総合優勝と、マラソンランナーとしての粘り強さを発揮しました。

これから本格的なマラソン及び各種ロードレースや駅伝シーズンに入ります。箱根を目指す学生選手たちのように駅伝やハーフまでの距離が目標なら、各種記録会やロードレース大会での実戦を多く積むことは、スピードに慣れる意味でも有効的な調整方法になります。

しかし、目標がマラソンなら逆に走り込み不足に陥る危険性もあります。なぜなら練習の一環として出場するハーフマラソンや駅伝にも関わらず、わざわざ練習量を落として調整をしてしまうケースが多いからです。したがって、これが毎月何本も出場するペースになってくると、本人は実戦で鍛えるつもりでも、逆に走り込みの絶対量(土台部分)が不足していく危険性もあります。この点のバランスは、十分に注意してほしいと思います。

皆さん、風邪に注意です!

期分け・58

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【期分け・58】今回は、AT値(無酸素性作業閾値)やLT値(乳酸性作業閾値)を高めるトレーニングを、5kのタイムから考えていきます。更にもう少し専門的に説明すると、乳酸が蓄積しない境界強度(速度)でトレーニングを継続していくことで持久力が向上し、AT値やLT値も改善されていきます。その境界強度(速度)となる目安を5kのタイムから算出していく考え方です。

では、実際に5kのタイムから具体的な数値を考えていきます。もちろん、より専門的な器具での測定や個別の細かい分析も必要ですが、我々のような一般的な市民ランナーには不可能です。そこで、簡易的に用いられている計算式と私の経験的なことを織り交ぜて考えていきます。

◆目安1).5kの記録を100%としたときの90%~93%の速度。◆目安2).5kを全力で走ったときの感覚を「きつい」としたとき、「ややきつい」と感じる速度。※心拍数については割愛します。

以上の2つについてが、代表的な目安となります。おそらく皆さんもランニング雑誌等で一度は目にしたことのある考え方だと思います。私自身の経験や各種練習会等で指導してきた経験から話すと、目安2の「ややきつい」と感じる速度でトレーニングを継続していくと、持久力は効率的に向上していきます。

何度も話していますが、マラソンは自分自身の肉体と精神のみで勝負していく競技なので、様々なデータの積み重ねは重要です。しかし、生身の身体だけに日々の体調や精神状態、天候等のコンディションも同じではありません。つまり、データを蓄積していっても逆に当てはまらない部分も多く、そのため自分自身の身体と常に対話し、ランニング中に感じる「感覚」は最も重要な要素になると考えます。

したがって、目安1の「数値」と、目安2の「感覚」が常に一致していくような状態を身体で覚えていくことがトレーニングの重要な目的であり、それが持久力向上にもつながっていきます。実は、初マラソンに挑戦し、最初から狙いどおりの走りができるランナーと、何度も失敗を繰り返してようやくマラソンを攻略できるランナーがいます。その差の大きな要因のひとつは、この「感覚」をつかめているか否かによると、私自身の経験からも強く感じるところです。

次回は、マラソンの記録から具体的な数値を考えていきます。

つづく。

福知山&つくばマラソン大会

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【福知山&つくばマラソン大会】先日の3連休は全国各地で数多くのマラソン大会が開催されました。私も京都で開催された「福知山マラソン大会」と茨城で開催された「つくばマラソン大会」の2大会に足を運び、現地にて直接応援してきました。

今回、23日(金・祝)に開催された福知山マラソン大会、2日後の25日(日)に開催されたつくばマラソン大会ともにコンディションは良好でした。特に、2大会ともほぼ無風状態と、前週に開催された横浜国際女子マラソン大会とは正反対のコンディションとなり、どちらも好記録への期待が高まりました。

福知山マラソン大会では、視覚障害者マラソンの日本選手権も兼ねており、狙いどおりの好記録が誕生しました。特に、ロンドンパラリンピック日本代表の和田選手(全盲クラス)が、2時間36分32秒のアジア新記録&日本新記録をマークしたのをはじめ、期待の若手もキッチリと記録を残してくれました。

一方、つくばマラソン大会では、私がコーチする選手も6名出走しました。女子の部では、M・Sさんが堂々の3位入賞を果たしました。また、男子の部では、41歳のM・Kさんが、2時間52分27秒の大幅自己新記録。更に52歳のK・Kさんが、3時間4分44秒のこれまた自己新記録。同じく、51歳のK・Yさんも3時間6分32秒と目標を達成し、地元で一緒に走り込みを積んできた同世代のランナーたちへの熱いメッセージとなりました。

さて、前回もこのブログで取り上げましたが、マラソンはその日の天候に大きく影響を受け、天候の良し悪しが記録に直結するスポーツです。更に、レース中は常に暑さや寒さ等々、様々な状況に遭遇しますが、なかでも風による影響は記録に最もダメージを与える要因のひとつです。

また、私の経験上の話しになりますが、好調に仕上がった選手ほど当日の天候に左右される確率が高いと感じます。その理由はいくつかありますが、物を切る刃物に例えると理解し易くなります。すなわち、好調に仕上がった状態をカミソリとし、やや重い状態に仕上がった状態をナタとします。カミソリの場合、鋭い切れ味で物をきれいに素早く切ることが可能ですが、刃こぼれをし易く、切れる物が限定されます。一方、ナタの場合、鋭い切れ味と言うより、切りにくい物に対しても威力を発揮し、刃こぼれも少なく丈夫なつくりになっています。

これをマラソンに置きかえた場合、カミソリのように仕上がりが良かった場合、天候が少しでも悪い方に傾くと、一気に切れ味が悪くなり、失速していきます。逆に身体にキレのないナタのような仕上がりは、天候が悪い方に傾いても切れ味への影響は少なく、更にその状態を長くキープして後半に入っても粘れるケースが多いと感じます。

実は、先週の横浜国際女子マラソン大会では、好調に仕上がり期待していた3選手は強風にあおられ見事に失速し、逆に最後まで調整に苦しんだ他の3選手が目標どおりの走りを見せました。今回の2大会に出場したランナーたちの記録が当日の天候にどの程度影響を受けていたかは、もう少し解析する必要はありますが、絶好の天候により全員が良い方向に影響したことは間違いありません。

私が現役の頃からもトラックはカミソリのような仕上がり、マラソンはナタのような仕上がりが良いと言われてきました。今後は、この点をより具体的なデータとして実際の調整期に落とし込んでいくことが重要なポイントになると考えます。

しかし、これが最も難しい…。

第4回横浜国際女子マラソン

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【第4回横浜国際女子マラソン】先日の11月18日(日)、第4回横浜国際女子マラソンが開催されました。結果は、ケニアのチェロメイ選手が15k過ぎから独走し、強風が吹き荒れる悪コンディションの中、2時間23分7秒の大会新記録で圧勝しました。

2位は、日本人トップとなる那須川選手でしたが、チェロメイ選手から1k弱も離される内容に評価も様々でした。また、私がコーチしている選手も6名出場しましたが、今回は厳しい結果となりました。

さて、マラソンは、ひとつのマラソンのために膨大な量を走り込んでいく競技なので、ひとつのマラソン大会に向けた準備期間の長さも他の種目とは比較になりません。ところが、どんなに良い練習を積み重ね、絶好調に仕上がったとしても、記録はその日のコンディション(天候)に大きく左右されるスポーツでもあります。

また、マラソンを少し違う角度から見ると、登山に似ていると感じます。特に、富士山をこえるような標高の高い登山に近い気がします。つまり、目指している大きな山に向け、どれだけトレーニングを積んでも、最新の装備を準備しても、登頂成功の有無を決める重要なカギは、その日の天候です。同時に、どんなに経験豊富な登山家でもその日の天候を変えることはできないのです。したがって、最終的には運を天に任せる状態となります。

実は、マラソンも同様のことが当てはまるスポーツなのです。今回の横浜国際女子マラソンに向け、ほとんどのランナーは夏頃から走り込みを開始しています。もちろん、万全の調子に仕上げてきたランナーも多かったはずですが、今回の強風を変えることはできませんでした。

特に、オリンピックや世界選手権の日本代表を目指すことが難しい市民ランナーの目標は、順位ではなく「記録」となります。そのため、悪天候になったからと言って、勝負に徹するようなことはあり得ません。それだけに、当日の天候は最も重要であり、記録を目指す上での最重要事項とも言えます。

更に見方を変えると、今回の横浜国際女子マラソンが開催される日は、毎年11月の第3日曜日となっています。実は、この日の天候を振り返ってみると、今回のような強風だったり、ミゾレに近い冷雨だったり、逆に高温だったりと、天候が安定しない代名詞となっているような日なのです。

私自身もこれまであまり注意していませんでしたが、今後は目標のマラソン大会当日の天候がどのようになるのかをもっと注視していく必要があると、強く感じております。マラソンは登山に似ていると話しましたが、同じ悪天候でも登山は登頂する日をずらすことができます。しかし、マラソンはスタートする日時が決まっているので、どんな悪天候だったとしても必ずスタートします。

今後は、マラソンを目指す上で過去の天候等の分析も重視し、天候が悪化するリスクの高いマラソン大会には最初からエントリーしないことも必要なのかもしれません。

期分け・55

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【期分け・55】前回は、パターン1である2日間連続でスピードトレーニングを実施する流れを検証しました。今回は、パターン2である「土曜日:スピード系トレーニング+日曜日:スタミナ系トレーニング(土、日曜日を入れかえても可)」についてです。

このパターン2については、既にこのブログでも取り上げたので、詳細につていは割愛しますが、推奨できるパターンとなります。もちろん、その前提としてスピード系トレーニングについては、各ランナーに応じた疾走(スピードアップ)する適切な距離と、その設定タイムと本数を間違わないようにすることは言うまでもありません。同じく、スタミナ系トレーニングについても根拠のない距離を走っても狙った効果を得ることは難しくなります。

また、2日間連続でスピード系とスタミナ系をセットで実施するため、それぞれの強度は特に注意する必要があります。具体的には、自身の全力に近いような強度で2日間連続で実施してしまうと、前回お話しした2日間連続でスピード系トレーニングを実施するパターンと同様のリスクが発生してきます。

ところが、スピード系とスタミナ系トレーニングの両方を6割から8割程度に抑えることで、2日間連続の効果が期待できます。具体的には、土曜日のスピード系トレーニングを8割程度の強度に抑えることで、ゆとりを持ちながら心肺(血管込)に適切な負荷を与えることができます。もちろん、脚筋にも疲労は残りますが、翌日のスタミナ系トレーニングに向けてのフォーム修正や心肺(血管込)への刺激にもなります。

そして、2日目のスタミナ系トレーニングを前日同様、8割程度の強度で実施します。と、言うより前日の疲労も残っているので、8割程度の感覚ではいつもより遅くなります。そのため、8割と言いつつ、もう少し頑張るような感覚が必要となるはずです。実はこの感覚が大切で、いつもの8割程度の内容にも関わらず、強度的にはもう少し苦しくなります。つまり、全力に近い負荷を身体に与えなくてもそれと同様の効果が期待できるとも言えます。これは、スピード系とスタミナ系を逆の日程にした場合も同様の感覚になります。

このように、本来1回のスピード系やスタミナ系トレーニングで心肺(血管込)や脚筋を別々にそれぞれ追い込むところを、強度を抑えることで、2日間連続のセットトレーニングが可能になります。その結果、負荷をかける心肺(血管込)や脚筋の異なる個所を連続で強化することが可能となり、短期間で効率的かつ効果的なトレーニングが期待できると考えます。

つづく。

期分け・54

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【期分け・54】前回は週末集中型トレーニングパターンを大きく3つに分け、それぞれを評価しました。今回はそれぞれのパターンを詳しく考えていきます。

はじめに、パターン1の「土曜日:スピード系トレーニング+日曜日:スピード系トレーニング」についてです。このパターンは、おすすめできない「X」と判定しましたが、具体的なトレーニング実施例を記載します。

実施例1).土曜日:400m×10本+日曜日:300m×15本。実施例2).土曜日:200m×15本+日曜日:1000m×5本。実施例3).土曜日:1000m×5本+日曜日:400m×10本。

以上のように2日間連続で、「ゼーゼーハーハー」と、かなり苦しむトレーニングですが、意外と多くの人が実施しているパターンです。もちろん、内容的には上記したパターンと異なるケースもありますが、全力失速に近いスピードで頑張るトレーニングです。

実は、マラソンを目指して走り込みをしていく段階で、各種ロードレース大会や駅伝大会に参加するようになります。そのとき一緒に参加した仲間たちから指摘されることが、「スピードがないとマラソンのタイムも悪くなる」、「長い距離ばかり走るからスピードが出なくなる」等々のスピードが出ないことに対する注釈です。ある意味、指摘されたことは間違いではありませんが、それを鵜呑みにした結果、上記のようなトレーニングパターンに…。

ではなぜ、このパターンを「X」と判定したかです。その理由はいくつかありますが、1つ目の理由は、「怪我や故障のリスクが大幅に上がる」。既に皆さんも経験していることですが、スピードを上げて走ることで、心拍数が上がり、呼吸もかなり苦しくなります。しかし、それ以上に筋肉へのダメージは相当なものになります。特に、スピードに苦手意識の強い人が更に翌日も同様なスピードトレーニングを実施することは、怪我や故障を誘発させる自殺行為とも言えます。

2つ目は、「精神的に燃え尽きる(バーンアウト)」。これについては、個人差もありますが、スピードトレーニングはどちらかと言えば即効性があります。しかし、頭打ちになる時期も意外と早く、逆に苦しい割には効果が見え難くなっていきます。そのため、更に負荷のある内容にシフトしていくのですが、ほとんどの人は苦しいことに耐え続けることが難しくなり、気が付けば走ることからも遠ざかっているケースは意外と多いのです。

3つ目は、「スピードを上げる適切な距離や本数、設定タイムを導くことが難しい」。まさに記載したとおりで、それぞれの走力に合った適切なスピードを導き、どんな距離をどんな設定タイムで走るかを判断できるようになるには相応の経験と知識も必要です。かといって、単に自分自身より速い人と一緒に走ることは、上記した1つ目と2つ目のリスクだけが大きくなる可能性もあります。

以上、大きく3つの理由から2日間連続でのスピード系トレーニングは避けた方が賢明と考えます。

つづく。

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