ホーム > タグ > 盲人マラソン

盲人マラソン

第63回別府大分毎日マラソン・上

h26-2-5-1h26-2-5-2h26-2-5-3

【第63回別府大分毎日マラソン・上】第63回別府大分毎日マラソンが、2月2日(日)に開催されました。伝統あるこの大会に、今回も私の選手(市民ランナー)も多数出場しました。また、日本盲人マラソン協会(JBMA)からも全盲ランナーである和田伸也選手と谷口真大選手が出場し、一般ランナーたちの胸をかりて快走しました。

さて、この大会は、2011年大会から参加標準記録を「3時間30分以内」に緩和したため、世界を目指すトップランナーから男女の市民ランナーまでの幅広いランナーたちが集う、名実ともに日本マラソン界を支える大会にリニューアルしました。

その後、参加人数も右肩上がりで増えており、今大会は過去最多の約3200名のランナーが参加しました。同時に、底辺拡大をはかったことで、一時期低迷気味だった同大会も再び活況を呈してきました。参考までに、過去5大会の2時間20分と2時間30分突破人数、そして、3時間突破人数を調べてみました。

◆2010年大会/2時間20分突破:22名、2時間30分突破:39名、3時間00分突破:470名(ゴール関門が3時間以内)。◆2011年大会/2時間20分突破:13名、2時間30分突破:40名、3時間00分突破:836名。◆2012年大会/2時間20分突破:22名、2時間30分突破:48名、3時間00分突破:815名。◆2013年大会/2時間20分突破:22名、2時間30分突破:44名、3時間00分突破:959名。◆2014年大会/2時間20分突破:26名、2時間30分突破:66名、3時間00分突破:997名。※女性ランナーは除く。

もちろん、大会当日のコンディションに記録は大きく左右されるので、単純に数字を比較できませんが、大会が盛況になってきていることは間違いありません。ところが、参加標準記録を「3時間30分以内」に緩和したと言っても市民ランナー的には、別大マラソンのハードルはかなり高い設定と言えます。しかし、その結果、先頭から後方ランナーたちまでが、本気で記録と向き合って激走している姿が多く、逆に大会を引き締めているようにも感じました。

前置きが長くなりましたが、私がコーチする選手たち(市民ランナー)も、この1年間、伝統の別大マラソンで快走することを目標に地道な走り込みを継続してきました。特に、2011年から新設された女子の部を目標に走り込む女性市民ランナーが多くなり、今回も7名の女性が挑戦しました。

そして何より、日本盲人マラソン協会(JBMA)から全盲ランナーの和田伸也選手と谷口真大選手が初参加しました。両選手は昨年夏にフランスで開催されたIPC世界陸上に日本代表として出場し、和田伸也選手が銀メダル、谷口真大選手が自己新記録で5位入賞。その後も好調をキープしている日本人トップ2の全盲選手です。

また、今回の別大マラソンは、今井正人選手や前田和浩選手等、国内外トップクラスの選手が多数招待されており、個人的にもマラソンファンとして楽しみな大会となりました。

つづく。

絆・15

h26-1-13-0501h26-1-13-054h26-1-13-062

【絆・15】今年最初の盲人マラソン強化合宿を千葉県富津市において実施しました。日程は1月11日(土)から1月13日(月・祝)にかけての2泊3日で、参加選手は男子が8名、女子が2名、選手をサポートするガイドランナー(伴走者)は10名、更にスタッフ等を含め総勢31名での強化合宿となりました。

また、今回もガイドランナーに国際武道大学陸上部の現役学生選手をはじめ、走力のある方々に参加いただいたことで、量も質も充実した強化合宿を実施することができました。まずは、今回の強化合宿にご尽力いただいた関係各位の皆様方に対し、あらためて御礼申し上げます。

はじめに、この強化合宿に初参加した新田選手を紹介します。彼は、右腕の肘から先端が先天的に欠損している障害を持っており、障害クラスで言えば「T46クラス」に該当する選手です。実は、いつもガイドランナーをお願いしている順天堂大学陸上部に所属している現役学生選手でもあり、本当に偶然知ることになった選手です。

既に皆様方も耳にしたことがあるかと思いますが、ひと口に「パラリンピックへの強化」と言っても、実はどのパラリンピック実施競技に関しても選手層が極端に薄く、新しい選手を発掘・育成していくことは最重点課題であるのと同時に、それが極めて難しい状況でもあります。

そんな中、いつもガイドランナーをお願いしている陸上競技の名門大学でもある順天堂大学陸上部にパラリンピックを目指せる新田選手が所属していたのです。まさに「灯台下暗し」です。早速、今回の強化合宿に参加を呼びかけ、初参加となりました。

と、言いつつ腕の障害は視覚障害と同じで、自身の脚で走ったり跳んだりするため、日頃は一般選手と全く同じ土俵で競技をすることも可能です。したがって、今回の合宿でも視覚障害選手と同じトレーニング内容で切磋琢磨することができます。

◆合宿1日目:午後/体幹トレーニング+調整jog+1k走。◆合宿2日目:早朝/調整jog、午前/30k走、午後/動作解析勉強会+調整jog。◆合宿3日目:早朝/調整jog、午前/1k×10本(ロードで実施)、午後/解散。

そんな新田選手も合宿初日は緊張した面持ちでしたが、パラリンピックに出場した選手たちと一緒に走り、宿舎では同室になることで、2日目からは本来の明るさも見えてきました。そして、最終日のトレーニングでは積極的に集団をリードし、力のあるところも見せてくれました。

合宿終了後、「2日目の日間走行距離は自己最高の53kを走れました」と、新田選手は初参加の強化合宿でしたが、何か自信をつかんだ様子がこちらにも伝わってきました…。

さて、冒頭にも記載したとおり、新しい選手の発掘・育成は待ったなしの状況です。しかし、今回の新田選手同様、かくれた逸材は必ず存在します。同時に、新しい選手を発掘・育成するための様々なプロジェクトや対策も必要不可欠です。

しかし、いつでも新しい選手を受け入れられる態勢をキープしていくためにも、地道な強化合宿の継続は強化全体の土台となります。今年もこのことを肝に銘じて取り組んでいきます。

つづく。

※毎週1回の更新を継続してきたこのブログも、おかげ様で「300回」となりました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

絆・14

h25-12-14-005h25-12-14-084h25-12-14-098

【絆・14】12月15日(日)、第44回防府読売マラソンが山口県防府市において開催されました。既にご存知のとおり、公務員ランナーの川内優希選手が、先日の福岡国際マラソンから連続となる「1ヶ月間で2度のサブテン(2時間10分切)」を見事に達成しました。川内優希選手は2位でしたが、優勝したモンゴルのセルオド・バトオチル選手に最後まで食い下がり、持ち前の粘り強さを発揮する素晴らしい内容でした。

レースは、川内優希選手とセルオド・バトチオル選手の一騎打ちとなりましたが、向かい風の強くなった32k過ぎに強烈なスパートで川内優希選手を引き離しました。結果的には、そのままセルオド・バトチオル選手が優勝しましたが、スパート時についた10数秒前後のタイム差をゴールまで持ち込む見ごたえのあるレースでした。

逃げるセルオド・バトチオル選手は何度も後ろを振り返り、追いかける川内優希選手は何度も離れては詰めよる粘りを繰り返し、まるで駅伝のアンカー勝負を見ているようでした。優勝したセルオド・バトチオル選手は自己記録を2分以上も短縮する「2時間9分0秒」。2位で粘り抜いた川内優希選手は「2時間9分15秒」と、2人とも見事なタイムでした。しかし、セルオド・バトチオル選手が惜しくも2時間8分台に突入できなかったのは、すぐ後ろで粘り抜いた川内優希選手が阻止したかのようにも感じました…。

さて、今大会には日本盲人マラソン協会の強化指定選手たちが、はじめて公式出場しました。それも11月後半に同大会出場を緊急決定する強行日程でしたが、大会関係各位のご理解ご尽力により、無事に出場することができました。あらためて御礼申し上げます。

今回の防府読売マラソンには、女子強化指定選手全員がエントリーし、男子強化指定選手はベテラン勢が意欲的にエントリーしました。結果は、女子の道下選手(T12/弱視)が、「3時間6分32秒」の日本新記録をマーク。男子選手はベテラン勢が奮起し、福原選手(T11/全盲)が、「2時間53分8秒」。加治佐選手(T11/全盲)が、「2時間57分42秒」。そして、57歳の新野選手(T11/全盲)が、「2時間59分2秒」と、ベテラン3選手が揃ってサブスリーでゴールしました。実は、このベテラン3選手が揃ってサブスリーでゴールするのは、2007年の京都福知山マラソン以来となります。

これらの好記録の理由として最も大きなことは、今年度から女子の強化指定選手が加わり、強化合宿の雰囲気がより明るく意欲的な空気に変わったことです。その結果、少しマンネリ化になりつつあった男子選手たちも刺激を受け、特に若手選手が意欲的になりました。そして、肩身の狭くなっていたベテラン3選手たちが、強化合宿においても久々に積極的な走り込みを積み重ねるようになりました。

そんな意欲的な取組姿勢が実を結び、今回の結果につながったことは言うまでもありません。そして同時に、今回出場しなかった他の強化指定選手たちへの熱いメッセージとなったに違いありません。来年1月に再び強化合宿を実施し、今回出場しなかった強化指定選手の多くは、2月の別大マラソン、3月のびわ湖毎日マラソンと、ビッグレースへの本格参戦も待っています。

引き続き、皆様方の絶大なるご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

絆・13

h25-11-5-11h25-11-5-2h25-11-5-3

【絆・13】盲人マラソン協会主催の強化合宿を千葉県富津市において実施しました。今回は、11月2日(土)から11月4日(月・祝)までと、2泊3日の日程です。しかし、これまでは諸事情によりほとんどの強化合宿は1泊2泊と、週末を活用した慌ただしい日程が多かったので、久々に2泊3日の強化合宿でした。

と、言いながら1泊が2泊へ増えただけですが、時間的にはかなりゆとりが出てきます。そして、捻出できた時間をトレーニング以外の目的に活用することが可能となります。今回の具体的な合宿内容を記載すると、次のようになります。

◆11月2日(土):午後/集合、競技規則講習会(外部講師)、60分ジョグ+1k走。◆11月3日(日):早朝/各自調整ジョグ。午前/40k走。午後/トレーニング方法の意見交換会(現役学生ランナーと)、体幹トレーニング(外部講師)、各自調整ジョグ。◆11月4日(月・祝):早朝/各自調整ジョグ。午前/3k × 3本。午後/解散。

以上のように単に走り込むだけの強化合宿ではなく、様々な視点に立ったプログラムを組み込むことが可能となります。至極当然のことですが、これは極めて重要なことです。

特に、今回はガイドランナー(伴走者)として、国際武道大学陸上部から4名、帝京大学駅伝競走部から5名、計9名の現役学生ランナーをお招きすることができました。そして、彼らを交えての意見交換会は、選手たちはもちろん、私自身にとっても参考になる意見が多く、たいへん有意義な時間でした。

同時に、トレーニングにおいても、単に全盲選手のガイドランナーのみならず、単独走となっている弱視選手のペースメーカーも担っていただきました。特に、全日本インカレで入賞実績のある学生ランナーにも参加いただいたことで、かつてない質の高いトレーニングを実施することができました。

さて、今月23日に開催予定でした「京都福知山マラソン」が、先日の台風被害により中止となりました。この大会は盲人マラソンの日本選手権も兼ねており、今回参加した強化選手の多くがエントリーしていました。そこで急遽、大会申込が間に合った12月の防府マラソンを選手に紹介することになりました。※但し、日本選手権としては実施しない。

どの選手も調整計画を大幅に変更し、モチベーションを維持させることに苦労していました。しかし、今回の強化合宿において、現役学生ランナーたちの積極的なサポートのおかげで、気持ちと身体をもう一度スイッチすることができました。

最後になりしましたが、大切な選手を快く強化合宿に派遣いただいた国際武道大学の前河先生、帝京大学の中野監督、講習会にご足労いただいた講師の先生方、そして、毎度お世話になっている富津岬荘の皆様方に、あらためて感謝申し上げます。

つづく。

絆・12

h25-10-9-1h25-10-9-21h25-10-9-31

【絆・12】盲人マラソン協会主催の強化合宿を10月5日(土)から1泊2日の日程で、千葉県富津市富津公園にて実施しました。今回の強化合宿は、選手と伴走者及びスタッフの合計が38名と、過去最大の参加人数となりました。

また、今回は医科学サポートのご協力により、トレーニング中の乳酸値測定とハートレートモニターを着装して心拍数を記録しました。至極当然のことですが、医科学的な測定や解析を実施したからと言って直ちにトレーニングやパフォーマンスに反映できるものではありません。日々のトレーニング同様、今後も定期的にデータを積み重ねていくことが重要です。

同時に、測定した数値に異常があったからと言って、その選手の記録が悪くなるとも言えません。私の経験談になりますが、私も現役時代、月に1回以上は必ず血液検査を受けていました。当時の走行距離は、多い月は千キロに達していたので、貧血と常に隣り合わせの状況でした。もちろん、食生活や睡眠時間等にも注意していましたが、血液検査の数値が良い方に改善された場合、当時のお世話になった先生に必ず言われたのは、「今月は練習をかなり落としているね(サボっているね)」でした。

つまり、激しいトレーニングをしている選手の各種数値が改善されることは、逆にトレーニングを落としている(サボっている)疑いもあり、必要以上に練習を休めば必ず数値は改善されます。その証拠に、先生から強豪チームの血液データを見せていただいたことが何度かありましたが、力のない選手ほど各種数値が良い傾向にあったのです。つまり、力のない選手は練習量や質が足りていないのと、自分自身を追い込めない証拠でもあると教えていただきました。※参考までに今現在の私はジョギング程度なので、貧血とは全く無縁の健康的な数値となっております。

そして、医科学的なデータや栄養学的なサポートを取り入れることは、トレーニング量を減らして効率を上げることではありません。医科学的なデータや栄養学的なサポートが後押しすることで、トレーニング量や質を更に上げるためにあると考えます。即ち、これまで以上に苦しく厳しいトレーニングを可能にしていくためのサポートであるとも考えます。

今回、はじめて各種測定を受ける選手も多かったのですが、データ的に見ても強い選手は自分自身をキッチリと追い込みきれており、やはりデータは嘘をつかないとも感じました。もちろん、今後も定期的に医科学サポートを受けながら、世界と勝負できるトレーニングを目指していきます。同時に、選手たちの意識レベル向上にもつなげていきます。

つづく。

絆・11

h25-9-12-11h25-9-12-2h25-9-12-3

【絆・11】先日の9月7日(土)から2日間の日程で、障害者陸上の国内最高峰大会である「2013ジャパンパラ陸上競技大会」が、山口県で開催されました。2日間とも残暑の厳しいコンディションでしたが、どの種目も熱戦でした。

特に、日本盲人マラソン協会として立ち上げた強化指定女子選手たちが、長距離種目に初参戦しました。実は、視覚障害者女子マラソンは2016年ブラジルで開催されるパラリンピックの候補種目にもなっており、強化としては待ったなしの状況です。

しかし、今年度から選考した強化指定女子選手のほとんどは、市民ランナーです。したがって、マラソンを走った経験は豊富ですが、トラックレースや10k以下のロードレースへの出場は多くありません。

もちろん、単にマラソンを走り続けるだけなら、トラックレースや短いロードレースを走る必要はないかもしれません。しかし、目標を世界に切り替え、今の記録を大きく更新していくには、強化の一環としてもトラックレースを避ける訳にはいきません…。

今回、5名の強化指定女子選手がトラックの5000mに挑戦しました。5選手とも伴走者と息の合った走りで、苦戦しながらも最後まで走り切り、記録的にも想定内でした。

ところが、公式発表に目を疑いました。何と1位と2位でゴールした選手が失格だったのです。しかもその理由は、フィニッシュラインを伴走者が選手より先にこえたのです。これには驚きましたが、このようなトラブルは国際大会でも目にします。

そして、レース中のトラブルは原則として選手の責任です。厳しい言い方ですが、最初に伴走者へルールを教えるのは、他でもない一緒に走っている選手自身だからです。もちろん、次回の強化合宿で、国際ルールの勉強会を実施し、同じ失敗をしないよう徹底していきたいと思います。

さて、2020年のオリンピック・パラリンピックが東京に決定しました。今回のジャパンパラ陸上競技大会に出場した選手たちはもちろん、誰にでも平等にチャンスがあります。ひとりでも多くの選手に、そのチャンスを与えられるよう、これまで以上に選手たちの後押しをしていきます。

あらためて、皆様方のご声援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

絆・10

h25-6-19-1h25-6-19-2h25-6-19-3

【絆・10】梅雨入りし、気温も湿度も一気に上がってきました。そんな中、6月15日(土)から6月16日(日)の日程で盲人マラソン強化合宿を実施しました。今回の合宿は、来月にフランスで開催されるIPC世界陸上競技選手権の代表選手を対象にした強化合宿です。

そのIPC世界陸上競技選手権には、盲人マラソン協会から全盲の和田、高橋、谷口の3選手を日本代表選手として派遣します。今回の合宿は、代表選手としての参加は全盲の谷口選手ひとりでしたが、ロンドンパラリンピック代表の岡村選手も参加してくれました。

今回も1泊2日の短期合宿で、トレーニング内容については次のとおりです。

◆1日目:午後/3000m+2000m+1000m+600m+300m。◆2日目:早朝/各自フリー、午前/30k走。

上記のように、トレーニングの流れは「スピード+スタミナ」です。谷口選手は、トラックの1500mと5000m、そして、マラソンの3種目に出場します。特に、トラック種目については、大幅な自己記録更新が期待されます。この点も考慮し、、初日にスピード系のトレーニングを実施しました。

余談になりますが、全盲の谷口選手には、必ず伴走者が必要になります。ところが、谷口選手もこれまでパラリンピックに出場してきた全盲ランナーたち同様、「伴走者泣かせ」の選手に成長してきました。

具体的には、これまでのトレーニング成果が実を結びだし、走力がグングン上がってきております。その結果、市民ランナー方の伴走対応が難しいレベルになってきたのです。実際に今回の合宿も、当初は現役学生選手に伴走の打診をしましたが、ちょうどこの時期は学生選手たちもトラックシーズンです。そのため、週末毎に各種トラックレースに出場するので、とても伴走をお願いできる状況ではありません。

そんな中、今回は何とか2時間35分前後でマラソンを走れる2人の市民ランナーにお願いしました。しかし、上記のようなスピードトレーニングになると、2人で交代しながらやっと谷口選手の伴走ができる状況でした。

視覚障害者マラソンの強化を仰せつかってもう何年にもなりますが、選手の育成同様に伴走者に対する走力の要求レベルが更に高くなってきたのも事実です。もちろん、他にも課題はありますが、これまで同様、様々な方々のお力を賜りながら少しずつでも選手のトレーニング環境を改善していきたいと思います。

つづく。

絆・9

h25-6-11-13h25-6-11-2h25-6-11-3

【絆・9】去る6月8日(土)から2日間の日程で、第24回日本身体障害者陸上競技選手権が大阪において開催されました。今更ながら、この時期のトラック競技は、気温や湿度が高くなり、特に長距離種目にとっては過酷なコンディションとなります。案の定、初日の6月8日(土)は、梅雨明けを思わせるほどの天候となり、厳しい状況でした。

そんな中、日本盲人マラソン協会の強化指定選手も多数参戦し、自己記録の更新へ挑みました。

◆1日目:T11男子800m/和田伸也/2分11秒05(優勝・日本新)、T11男子5000m/谷口真大/16分57秒83(優勝)、T12女子800m/近藤寛子/2分56秒32(優勝・自己新)。

◆2日目:T11男子1500m/和田伸也/4分22秒11(優勝)、T11男子10000m/谷口真大/35分09秒58(優勝・自己新)、T12男子10000m/熊谷豊/33分30秒96(優勝)、T12女子1500m/西島美保子/5分38秒58(優勝・自己新)、T12女子1500m/近藤寛子/5分52秒23(2位・自己新)。

以上のように結果を並べると、概ね全員が合格点に届く内容でした。中でも女子強化選手の西島選手と近藤選手は、慣れないトラックレースでしたが、見事に自己記録をマークしました。

今回の結果は、今年度から立ち上げた女子強化の成果とは言えませんが、少なくとも彼女たちの「マラソン(走ること)」に対する意識が大きくプラスに転じてきたことは間違いありません。そして、この「意識改革」こそが、強化の第一歩であり、全てのベースになると考えます。

また、男女とも若い高校生選手も出場しており、選手が極端に少ないこの世界においては、とても明るい収穫となりました。同時に、若い選手たちが目標を持って競技に取り組める環境整備や情報提供が重要なことは言うまでもなく、我々の方から積極的に歩み寄っていく姿勢がより重要であると、あらためて感じた次第です。

さて、話しは変わりますが、7月(来月)にフランスで開催される「IPC世界陸上競技選手権」に、日本盲人マラソン協会からは、全盲の和田、谷口、高橋の3選手が選考されました。また、私も日本チームの監督として帯同します。

あらためて、日本代表選手たちに対する皆様方の絶大なるご声援を、よろしくお願い申し上げます。

つづく。

絆・8

h25-5-22-11h25-5-22-2h25-5-22-3

【絆・8】先日の5月18日(土)、茨城県笠松運動公園陸上競技場において、第55回東日本実業団陸上競技選手権大会が開催されました。そして、今年も昨年同様、同大会のプログラムに「視覚障害者1500m」を加えていただきました。まずは、ご尽力いただいた関係各位に感謝申し上げます。

今年の出場選手は、昨年のロンドンパラリンピックで銅メダルを獲得した全盲の和田選手を筆頭に4名でしたが、4選手ともかなり調子を上げており、自己記録更新も十分に可能な調子で挑みました。

◆視覚障害者男子1500m決勝:1位/和田伸也(全盲)/4分23秒11。2位/岡村正広(弱視)/4分26秒88。3位/谷口真大(全盲)/4分36秒21。4位/米岡聡(全盲)/5分25秒08。

残念ながらマラソンを狙っている岡村選手を除く全盲の3選手とも、目標タイムに届かない結果となりました。中でも、全盲の和田選手と谷口選手については、7月にフランスで開催されるIPC世界選手権(※)をイメージして挑んだだけに課題が残りました。※5月22日現在、日本代表選手は決定しておりません。

翌日の5月19日(日)は、兵庫県尼崎市において、第57回関西実業団陸上競技選手権大会の5000mが実施されました。同種目には弱視の堀越選手も出場し、ロンドンパラリンピックで自身がマークした日本記録更新を狙いましたが、後半大きく失速し、目標タイムには届かない結果となりました。

特に、ロンドンパラリンピックで好成績と好記録の両方を達成した和田選手と堀越選手については、周囲からの期待も大きかっただけに本人たちも落ち込んでいました。

至極当然のことですが、自分自身を評価してほしいとか、注目されたいと思ったなら、まずは相応の実績を残す必要があります。その逆はありません。昨年のロンドンパラリンピックにおいて、和田選手と堀越選手は素晴らしい結果を残しました。帰国後は、多くの関係者から表彰を受け、周囲から認められる選手へとステップアップしました。

しかし、周囲からの期待が重荷に感じる場面も増えており、記録や結果に対するプレッシャーを感じることが多くなってきたのも事実です。もちろん、ロンドンパラリンピック前もプレッシャーはあったと思いますが、心のどこかで「ダメで元々」と、プレッシャーを感じるより、チャレンジ精神の方が上回っていました。

ところが、最近は本来のチャレンジ精神以上に周囲からの期待(プレッシャー)が強くなり、それが各レースで見受けられるようになってきたのです。具体的には、レース中の「力み」です。特に、トラックレースでは、スタート直後からの「力み」は後半の大きな失速に直結します。

これは、多くの学生選手や実業団選手にも見受けられます。プレッシャーよりチャレンジ精神の方が上回る各種記録会や海外競技会では、常に好記録を残せる選手は多く見受けます。しかし、タイトルのかかった国際大会、国内の選手権大会や駅伝大会のように、プレッシャーの方が強く、結果を求められる大会で自己記録(目標タイム)を更新できる選手は意外と少ないのです。

和田選手、堀越選手ともに、周囲の期待を正面から受け止め、更に狙った大会で結果を残せる強い選手に脱皮するためにも、ここは避けてとおれない壁でもあるのです…。

つづく。

絆・7

h25-5-4-0051h25-5-4-025h25-5-3-018

【絆・7】毎年恒例のGWも終わりましたが、計画どおりの走り込みや出場した大会では、目標を達成することはできたでしょうか?

さて、こちらも毎年恒例となりました、日本盲人マラソン協会主催の強化合宿を千葉県富津市において開催しました。今年は、初の女子強化指定選手も参加し、総勢32名と過去最大規模の強化合宿となりました。

はじめに、その強化合宿で実施したトレーニング内容を記載します。

◆5月3日(1日目):午後/ドーピング講習会(JADA)、120分LSD+1k走(全力)。◆5月4日(2日目):早朝/各自フリー、午前/30k走、午後/グループ討議(トレーニング方法等について)、90分LSD+1k走(全力)。◆5月5日(3日目):早朝/各自フリー、午前/400m×20本、午後:解散。

以上のような内容ですが、実施内容については、毎年大きく変わることはありません。淡々と毎年継続している内容です。昨年のロンドンパラリンピックで銅メダルを獲得した全盲の和田選手もこのトレーニング内容で、地道に力を付けてきました。特に、2日目は1日の走行距離だけで、60kを軽くこえる内容です。

今回の合宿では、成長著しい全盲の谷口選手も和田選手と同じグループで、同じ設定タイムで、同じ距離をパーフェクトに実施しました。また、弱視の岡村選手も元気な走りを取り戻し、久々に充実した様子を見ることができました。

一方、初参加の女子選手たちですが、合宿前はトレーニング内容や他選手とのコミュニケーション等に対し、不安を持っている選手もいました。しかし、合宿先の富津に集合し、一緒に切磋琢磨していく中で、表情や走りも自信に満ちた様子に変わっていきました。

今回、参加した女子選手たちの中に、その傾向の強い人もいましたが、一般の市民ランナーの中にも、情報過多になっているランナーは意外と多いと感じます。具体的には、トレーニング方法や食事、更には調整方法等に関する知識は豊富なのですが、自分自身の身体にその知識を落とし込んで、常に的確な設定タイムや距離を導き出すことがうまくできず、故障や怪我を繰り返すパターンに陥っているケースです。

もちろん、理論や知識を学ぶことは大切です。しかし、マラソンを攻略していく上で最も重要な要素は、自分自身が経験したマラソンや日々のトレーニングでの成功体験です。そして、その成功体験に最も近い理論やトレーニング方法を実践している人やチームこそが、実は自分自身に最も適した理論であり、トレーニング方法とも言えるのです。

また、いつの時代も口で言うのは簡単です。特に、マラソンについては、相応の手間と時間が必ず伴います。今回、初参加した女子選手たちも、これまで同様、地道な走り込みを継続していってほしいと、心から願っております。

つづく。

Home > Tags > 盲人マラソン

Search
Feeds

ページの先頭へ