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ランニング

期分け・14

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今回でスピード養成期についての話しは一区切りとします。

最後は3kのタイムトライアルについて考えていきますが、この3kの距離は一般的に言うと、馴染みの薄い距離になると感じますが、いかがでしょうか?

しかし、この3kは陸上競技的に言うと長距離走の登竜門となる基礎的な距離になります。それは、全国の中学生が各地で開催している陸上競技大会において、男子の最も長い距離が3kです。また、同じく全国の高校生が各地で開催している陸上競技大会において、女子の最も長い距離がこの3kとなります。

なぜ、中学生男子と高校生女子の最長距離が3k(3000m)なのかについては、私も正しく把握しておりませんが、長距離を志す男女のジュニア選手は必ずこの3kからスタートすることは間違いありません。そして、この3kで長距離的なスピード感覚やペース配分等々を体得しながら年齢と共に距離をのばしていくのが、日本の伝統的なスタイルのひとつです。

もちろん、実業団選手(プロ)になり、ハーフマラソンやマラソンのような長い距離を走れるようになった選手でも各種競技会に出場し、この3k(3000m)を走っています。実は、マラソンの日本記録保持者である高岡選手は、3000mの日本記録保持者(7分41秒)でもあります。

そして、マラソンの基礎的なスピードの目安となる5kや10kのタイムを短縮するためには、この3kのスピードをアップすることが大きなカギとなります。具体例として10kを40分以内で走ることが目標とした場合、5kの目安は19分30秒前後となります。更に、トレーニングの段階において、そのペースで3kを走り切る走力が必要不可欠になってきます。即ち、3kの目標タイムとして「19分30秒×3/5=11分42秒」となり、3kのタイムトライアルではこの「11分42秒」を意識して走ります。

では、実際に3kのタイムトライアルを走る場合の注意点として、まずは1kのタイムトライアル同様、距離の正確なトラックで正確なラップタイムを計測しながら実施するのが原則となります。また、1kのタイムトライアル同様に200m毎にラップタイムを確認しながら走る方がより正確で確実です。但し、距離が長くなる分、ペース配分がより重要になります。特に、出足のオーバーペースは致命的になりますので、最初の200mから400mあたりまでをおさえるようにして走ります。

この出足を少しおさえる感覚は、3kのタイムトライアルを通じて体得してほしい大切なポイントのひとつになります。また、距離が長い分、逆に2kあたりまでペースをおさえ、残り1kからペースアップする走り方は、ラストスパートをするタイミングや残った力の出し切り方を覚えるにも最適です。

最後にこのスピード養成期をまとめると、◆1).1kのタイムトライアルを通じて自分自身のスピード限界を高める。※失速を怖がらず積極的に走れる度胸と粘り。◆2).3kのタイムトライアルを通じて速いスピードでのペース配分やスパートのタイミングを体得していく。※失速しないように体力の配分を考えながら最後まで一定に走れる冷静さと安定感。

以上のように1kと3kのタイムトライアルをセットで実施することは、単にスピードを身に付けるだけでなく、マラソンに必要不可欠な積極性や粘り強さを体得することにもつながっていきます。

つづく。

期分け・13

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1kのタイムトライアルについて考えていきますが、可能な限り途中のラップが計測できる距離の正確なトラックで実施することをおすすめします。(近くにある学校のグラウンドでもOK)

既に何度も記載していますが、正確な距離を走り、そのタイムを正確に記録していくことがタイムトライアルの原則となります。もちろん、距離表示のある公園や河川敷でもかませんが、200m~400m毎の細かいポイントがわかる場所を探しておきましょう。(自分自身で予め距離を測定したコースでもOK)

次に、大まかな目安となる目標タイムを決めておき、200m毎のラップタイムを走る前に書き出し確認しておきます。参考までに今回は、1kを4分00秒で走ることを例にして話しをすすめていきます。

それでは実際に1kを4分00秒のイーブンペースで走った場合、200m毎のラップタイムは、「48秒―1分36秒(48秒)-2分24秒(48秒)-3分12秒(48秒)-4分00秒(48秒)」となります。そして、このラップタイムを頭の中でイメージしながら実際に1kを走ります。

ところが、1kのタイムトライアルを実施すると、ほとんどのランナーが600mを過ぎたあたりから大きく失速し、ゴール直前の200mは止まりそうになります。その代表的なラップは、「39秒―1分25秒(46秒)-2分13秒(48秒)-3分8秒(55秒)-4分8秒(60秒)」となりますが、皆さんはいかがでしょうか?

実は、小中学生の地区陸上大会(市内大会レベル)を見ていると、ほとんどの選手がこれに近いパターンの走りをします。即ち、スタートからダッシュで飛び出し、ゴールに向かってどんどん失速していきながら、ゴール直前が最も遅いペースとなる走り方です。そのためレース中のかけひきやラストスパートはあまりなく、単にゴールに向かって消去法的なレース展開が多くなります。これは走歴が浅く、練習量の少ないランナーに多く見られる走り方です。

そして、この悪いパターンを修正していくためには、タイムトライアルを定期的に取り入れてペース感覚をつかんでいくことは、ひとつの打開策となります。特に、この1kのタイムトライアルは、5kや10kのように走行距離や走行時間も長くなく、誰でも手軽に挑戦できる距離でもあります。

また、スタートから飛ばすと上記のように最後は失速しますが、逆に最初の200mをコントロールできればラストスパートも出せるようになります。したがって、200m毎に様々なペース配分を試していくことで、自分自身の能力に合ったペース配分を見つけることもできます。そして、たったの1kだからこそ逆に、1回のトレーニングで何パターン(1k×3~5本)も試すことが可能となります。

このように、1kのタイムトライアルを活用し、様々なペース配分を想定しながら走ることは、頭の中でイメージしたスピードを手足に正しく伝達していく能力を高めることにもつながります。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・2

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梅雨もあけた7月9日(土)から10日(日)の日程で、大阪府堺市において「第22回日本身体障害者陸上競技選手権大会」が開催されました。今大会は、来年に迫ったロンドンパラリンピック代表選考大会のひとつに指定されており、日本代表入りを目指した選手たちの熱き戦いが繰り広げられました。

もちろん、日本盲人マラソン協会の強化指定選手たちも多数出場し、ロンドンパラリンピック参加A標準記録の突破を目指しました。特に、マラソンの記録を目指す上でスピードのバロメーターにもなる「5000m」については、どの選手も記録を狙っています。

しかし、初日の気温は30度以上、湿度も70%以上の厳しいコンディションとなり、あと一歩のところで記録に手が届きませんでした。選手にとってはどんなに厳しいコンディションになったとしても言い訳できませんが、中長距離種目にとってはあまりにも過酷なコンディションでした。

ところが、その翌日は更に気温も高くなり、ただ単に競技会を観戦しているだけでも幸いコンディションとなりました。しかも最終日の種目は、全員が「1500m」です。この1500mは、マラソンを目指している選手の多くは苦手意識も強く、マラソンとは関係なさそうですが、スピード強化の段階においてはとても重要な種目のひとつです。

また、前日の失敗レースからわずか24時間でどの程度の立て直しができているのか?更に、2日連続の厳しい暑さでのレースに対し、集中力をどこまで持続できるのか?・・・等々、各選手のメンタル面やコンディショニング、ウォーミングアップ等を観察するには、逆に絶好の機会でもあります。

はたして結果は、T11クラス(全盲)の和田選手が、4分27秒69の日本新記録&A標準記録突破。更に、T12クラス(弱視)の堀越選手が、4分7秒30の日本新記録&A標準記録突破と、見事な集中力と精神力を見せてくれました。もちろん、他の選手たちも積極的な走りを見せてくれ、これまで地道に継続してきた強化合宿の成果を確認することができました。

さて、オリンピックやパラリンピックでの選手コールや招集はとても厳しく厳格です。具体的にはスタート1時間前あたりから選手は招集所に拘束され、ウォーミングアップすらできない状況になるケースも多々あります。したがって、いつものウォーミングアップが実施できなくなり、大舞台で力を発揮することができない原因のひとつにもなっています。

実は、この点についての対策をコーチや選手自身が重要視していないケースが多く、個人的にはとても残念に感じる点です。そして、今大会のようにとても厳しいコンディションの中でのレースは、それに近い状況に似ています。

そんな中、どの選手も2日間にわたり気持ちを集中させ、ピーキングを考えて行動していた点は大きな成長であり、大きな自信となったに違いありません。

期分け・12

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あらためて皆さんは、1kの距離を全力疾走したことがあるでしょうか?

3kや5kの距離なら駅伝等で走った経験があるランナーでも、たったの1kを最初から本気で走ったことは意外と少ないかもしれません。しかし、5kや10kのスピードアップにとって、この1kを全力で走ることは重要なポイントになります。

また、5kや10kはマラソンの基礎になる距離と言っても、スタートから全力で走るには距離が長いと思っているランナーは、多いのではないでしょうか。その理由は様々だと思いますが、大きな要因のひとつが最初からスピードを出すと最後までもたないと考えるからです。

具体的には、運動会で走ったようにスタートからスピードを全開させるような感覚で5kや10kを走れないと、決め付けているからです。もう少し別の言い方をするならスタートから速く走ろうと手足を動かす前に、頭や気持ちの中でブレーキが掛かってしまうのです。

実はスピードを上げて長く走ることは心拍数が上がり苦しくなるとイメージしますが、初心者を中心に多くのランナーは手足を早く動かそうと頭で指令を出してもそれがうまく手足には伝わりません。その結果、5kを走るスピードもマラソンを走るスピードもあまり変わらないランナーが多くなります。

つまり、頭から手足に指令を伝える神経を発達させることができれば自身のスピードもコントロールできるはずです。そして、その手段がスピードトレーニングであり、タイムトライアルなのです。もちろん実際に速く走ろうと頭から指令を出し、そのとおりに手足が動くようになれば、自分自身が持っているスピードの上げ下げも思い通りになります。それは、マラソンでの「スピード的ゆとり(余裕)」にもつながっていくはずです。

このように、スピード養成期で1kや3kのタイムトライアルを積極的に実施した方が良い理由は、単に心肺機能を向上させるだけではありません。速く走ろうとする指令を手足に正しく伝える神経系を鍛えることで、自分自身のスピードを自在にコントロールするためでもあるのです。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、次回からはタイムトライアルの具体的な走り方を考えていきます。

つづく。

期分け・11

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今回から「タイムトライアル(1k&3k)」について考えていきますが、トレーニング内容はとてもシンプルです。具体的には、指定した距離を実際のレース同様に全力疾走し、そのタイムを計測するトレーニングです。インターバルトレーニングやペース走のような細かい設定タイム等はありません。単純に今の力を出し切ることが目的のトレーニングとなります。

ところが、このように説明すると、誰でも手軽に実施できるトレーニングになりますが、実際は前回話したように全力疾走する感覚をつかめていないランナーが多いのです。

そこで、最初にこのタイムトライアルを実施する主な目的や狙いをあげておきます。

◆目的1).最初からトップスピードを出していく走り方を身につける。

◆目的2).エネルギーが枯渇し、脚が動かなくなってから更に粘り抜く走り方を身につける。

以上のようにとてもシンプルな内容となりますが、ふたつともマラソンにつながるとても重要な目的となります。「目的1」については、自分自身の限界スピードを知ることによって、逆にマラソンペースを知る目安のポイントになります。同じく「目的2」については、まさにマラソンで35k以降の走り方に直結していきます。ますはこの2点についてしっかりと頭の中で理解しておきましょう。

次にタイムトライアルを実施する際の注意点をいくつかあげてみます。

◆注意1).場所(コース)について:タイムトライアルを実施する場所(コース)については、公園内や河川敷の距離表示を利用しても構いませんが、可能なら距離が正確で細かいラップタイムを計測できるトラックで実施しましょう。

◆注意2).タイムの計測について:タイムの計測については、ストップウォッチ機能の付いた腕時計を必ず利用するようにしましょう。この点については、基本中の基本的なことですが、時計すら持たずに走っているランナーは意外に多く見受けます・・・。

◆注意3).タイムの計測方法について:ランニング仲間と2人以上でタイムトライアルを実施できる場合はお互いにタイムを取り合う方法がより正確で確実です。※タイム計測をする担当者がいる場合は問題ありません。

よくランニングチームの仲間全員で競い合いながら走る光景を目にします。もちろん、とても効果的なトレーニングになりますが、人によっては頑張りすぎてラップタイムを見ることやラップボタンを押せない人もいます。そんなトラブルを防止する意味からも2人以上の場合はペアをつくり、先に走るグループと後に走るグループに分けます。

そして、先に走るグループのときは後に走るグループが、ラップタイムやゴールタイムを計測するようにすれば、より確実で正確なタイムをお互いに記録することが可能となります。この正確な記録を残していく点は常に意識し、雑であいまいな取り組みにならないよう注意していきましょう。また、このときお互いの走りをビデオ撮影しておくと、後でフォーム解析も可能となります。

つづく。

期分け・10

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前回までの話しで、スピード養成につながるひとつの目安となる距離は、5kであることがわかりました。そこで、5kのスピードをアップするためのトレーニングを考えていきますが、別の言い方をするなら5kの自己記録を短縮するためのトレーニングとも言えます。

もちろん、この時期に5kの記録更新を目指すことが、秋のマラソンにつながっていかなくては意味がありません。至極当然のことですが、最終的な目標はマラソンの記録更新であることは、常に意識していくようにしましょう。

では、早速5kの記録更新について考えていきますが、皆さんは5kを全力で走れるでしょうか?

このように問いかけると、ほとんどのランナーが首をかしげます。と、言うより5kを全力で走る感覚がよくわからないランナーが多いと思いますが、いかがでしょうか?

既に何度もこのブログで話していますが、5kを走るスピードもマラソンを走るスピードもほとんど変わらないランナーが多いのです。したがって、マラソンより長いウルトラマラソンに移行していくことは比較的簡単にできるが、より短い距離をより速く走る方にシフトしていくことは難しいと、自分自身で壁をつくっているランナーは意外に多いと感じます。

その大きな理由のひとつは、上記の問いかけのように5kを全力で走る感覚がわからないからなのです。だからこそ逆に、その5kの記録更新ができたなら、それより長い距離である10k以上の距離やマラソンの記録更新につながっていく可能性も高まることでしょう。

また、5kの記録を短縮していく上でポイントになる距離があります。私の経験上の話しになりますが、それは1kと3kです。

1kについては、比較的長い距離を全力疾走するときの目安となる最短の距離となります。3kについては、5kの距離を攻略していく上で重要なポイントとなる距離となります。つまり、この1kと3kの距離を全力疾走していけるようなトレーニングをつむことで、5kの記録更新につながっていきます。

そして、その具体的なトレーニングとして「タイムトライアル」は最も効果的なトレーニング方法のひとつとなります。

次回は、そのタイムトライアルについて考えていきます。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道

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6月11日(土)から1泊2日の日程で千葉県富津市において、盲人マラソン強化合宿を実施しました。※日本盲人マラソン協会主催の強化合宿。

既にご存知のとおり、来年はロンドンパラリンピックが開催されます。したがって、今年度の主な身障者陸上競技大会は日本代表選考を兼ねた重要な位置づけとなり、日本代表入りを目指す選手たちの熱き戦いが期待されます。

日本盲人マラソン協会としても強化指定選手制度を設け、ロンドンパラリンピックにひとりでも多くの代表選手を送り込むことを目的に選手強化を継続しています。

そんなロンドンパラリンピックに出場するため最初の関門となるのが、参加標準記録です。この記録についてはオリンピック同様、種目毎にA標準記録とB標準記録が設定されています。そして、選手たちはIPC公認大会に出場し、決められた期間内にその記録を突破しなくてはいけません。つまり、一般の日本陸連公認大会に出場し、標準記録を突破してもパラリンピックに出場するための公式記録としては認められません。

そのため、パラリンピックに出場するための参加標準記録を目指せる大会は極端に少なく、その数少ない大会に選手たちは調子を合わせる必要があります。つまり、各選手のピーキング能力がパラリンピック代表選手に選出されるか否かの大きなカギとなります。

では、日本盲人マラソン協会の強化指定選手たちが、パラリンピック代表を目指す種目と参加A標準記録を記載します。

◆T11(全盲クラス)1500m:4分38秒00。◆T13&T12(弱視クラス)1500m:4分15秒00。◆T11(全盲クラス)5000m:16分41秒00。◆T12(弱視クラス)5000m:16分00秒00。◆T12&T11(共通)マラソン:2時間55分00。※全盲クラスは伴走要。また、1万mは実施されません。

以上のようになりますが、ロンドンパラリンピックではメダル獲得を目標とし、最低でも入賞を目指せる選手を日本代表に選出したいと考えています。したがって、上記の参加A標準記録より更にレベルの高い記録を強化指定選手たちには要求していくことになります。

それは、数少ない大会(チャンス)で、より高いレベルの記録を目指していくことになり、強化指定選手たちにとっても極めて高いハードルになることは間違いありません。

しかし、これまでの強化合宿や海外遠征等で積み重ねてきた経験と実力をここ一番で必ず発揮してくれると、私は確信しています。

あらためて皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

期分け・9

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前回までのなかで、マラソンの記録を短縮していくためには10kの記録短縮がひとつのポイントになる話しをしてきました。今回もその10kの記録について考えていきます。

さて、皆さんは10kの距離をどのように感じるでしょうか?

ほとんどの人は、「マラソンの記録は10kのスピードが目安」と聞いても、10kは長いと感じるのではないでしょうか。また、10kを全力で走ったことがない人もいるのではないでしょうか。実際に、マラソンの記録が停滞している市民ランナーの多くは、マラソンを走るスピードも10kを走るスピードもそれほど変わらない人が意外と多いように感じます。

そんな視点から考えると、もう少し短い距離からスピードについて考えていく必要がありそうです。具体的には、10kの半分である5kのスピードから大きな影響を受けています。そこで前回と同じような視点から10kと5kの記録について考えますが、以前にこのブログで記載したとおり、10kと5kの記録には次のような関係があります。

◆10kの記録=5kの記録×2倍+1分。

もちろん、この公式は全てのランナーに当てはまりませんが、走歴を重ねていくと上記のような公式に近づいていきます。(私の経験上)

参考までに前回同様、マラソンの世界記録保持者であるゲブレセラシェ選手と日本記録保持者である高岡選手の1万mと5千mを見てみます。

◆ゲブレセラシェ選手:12分39秒(5千m自己記録)×2倍+1分=26分18秒≒26分22秒(1万m自己記録)。◆高岡選手:13分13秒(5千m自己記録)×2倍+1分=27分26秒≒27分35秒(1万m自己記録)。

このように若干の相違はありますが、ほぼ当てはまっています。つまり、10kの記録短縮を目指すには5kの記録が重要なポイントになります。したがって、スピード養成期でひとつの目安となる記録は5kも関係し、5kの記録を短縮していくことはマラソンの記録短縮につながる可能性も高まります。

次回からスピード養成期の具体的なトレーニングを考えていきます。

つづく。

期分け・8

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マラソンの自己記録を短縮するには、10kやハーフマラソンの記録短縮がポイントになる話をしてきました。もちろん、これ以外にもマラソンを攻略していく上で大切な要素は様々ですが、今回からマラソンにつながる10kの記録について考えていきます。

はじめに、持久係数についてもう一度説明しておきますが、10kの何倍でマラソンを走れているかの係数をさします。そして、その係数はランナー毎の走力にもよりけりですが、概ね4.50~5.00程度の間におさまります。もう少し細かく見ると、国際マラソンに出場するような走力の高いランナーの場合、持久係数は4.50の方に近づいていきます。逆に完走することが目標となるような走歴の浅いランナーは5.00をこえている場合もあります。

さて、話を少し脱線させ、ここで日本記録と世界記録についての持久係数を見てみます。

マラソンの日本記録は高岡選手が2002年にマークした2時間6分16秒です。1万mについても高岡選手が2001年にマークした27分35秒が現在も残っており、高岡選手の持久係数は4.58となります。一方、マラソンの世界記録はゲブレセラシェ選手が2008年にマークした2時間3分59秒です。そして、ゲブレセラシェ選手の1万mは26分22秒で、持久係数は4.70になります。※ボストンマラソンの記録は、コースの設定が公認規格から外れており、未公認記録となります。

更に、ゲブレセラシェ選手が高岡選手と同じ持久係数だったとしたならマラソンの記録は、2時間00分46秒となります。そして、ゲブレセラシェ選手が2時間を突破するための持久係数は4.55となります。これは単なる数字上の話になりますが、1万mを26分30秒前後のスピードで走れるランナーが、持久係数4.50に相当する持久力を身につけると、理論上はマラソンで2時間を突破できることになります。

私の個人的な考えですが、男子マラソンについては2時間を突破するための肉体的条件は既に整いつつあると感じます。あとはハード面としてペースメーカーの途中交代を可能にしたり、高低差のない短い周回コースで気象条件が整えば・・・。

同じく日本人選手についても、高岡選手の日本記録を上回る27分30秒のスピードがあり、持久係数を4.50~4.60相当でマラソンに挑戦した場合をシュミレーションしてみます。

持久係数が4.58の場合、2時間5分57秒となります。そして、持久係数が4.50に到達すると、2時間3分45秒で今の世界記録を上回ることになります。もちろん、これについても単なる数字上の話となりますが、これからも日本人選手がマラソンで世界と勝負していける余地は十分に残っていると言えます。

つづく。

期分け・7

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前回は、持久係数から「10kはマラソンを走るための指標となるスピード」と話をしました。

実は、ハーフマラソンからも10kと同じような考え方をしていくことができます。しかし、走歴の浅いランナーを中心に多くのランナーは、ハーフマラソンの距離を最後まである一定のスピードを維持しながら走り抜くことはかなり難しいと感じます。

なぜならスタートから勢いよく飛び出していくと、後半はマラソンの30k以降と同じように大幅なペースダウンをするランナーが意外と多いからです。つまりスピード強化のために出走したハーフマラソンにも関わらず、結果的にはスタミナ不足まで露呈してしまうのです。

そこで逆に、後半のペースダウンを防止するために前半を抑えて走るようにします。ところが、今度はペースをつかめず自分自身のマラソンペースと同じようなスピードにはまってしまうランナーが多く、これではスピード養成の意味合いが薄れてしまいます。

このようにハーフマラソンは、マラソンを走るためのスピード養成として捉えていくにはかなりの経験と走力が必要になると、少なくとも私はそう考えます。

また、大会を申し込む段階で「同じ参加費を払うなら少しでも長い距離を走らないともったいない」と考えている人も意外と多いのでは?

皆さんはいかがでしょうか?

このような考え方で大会に参加していくと、年間を通じてハーフマラソン以上のレースしか走っていない状況に陥っていきます。単に、大会に参加することが目的の人ならそれも由ですが、上記したとおりハーフマラソンなのにマラソンに近いペースとレース展開を繰り返す可能性が高くなります。その結果、スピード養成の目的から逸脱していき、マラソンの記録も頭打ちになっていきます・・・。

さて、長々とハーフマラソンを否定するような話となりましたが、ハーフマラソンを走るなと言っている訳ではありません。ハーフマラソンを通じてスピード感覚を身につけていくのは簡単なことではなく、むしろレースでの走り方とすればスピード加減が難しい距離と理解しておくことが必要なのです。※ハーフマラソンについては別の機会にあらためて考えていきます。

次回からは、スピード養成期の10kについて掘り下げていきます。

つづく。

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