ホーム > タグ > ランニング

ランニング

期分け・38

h24-2-22-12h24-2-22-21h24-2-22-31

引き続きマラソンを攻略していく上でのペース配分について考えていきますが、今回は過去の記録を解析してみます。

はじめに、マラソン世界記録と日本記録についての前半と後半の実績タイムと、その差異についてです。

◆男子マラソン世界記録:2時間3分38秒/前半1時間1分44秒-後半1時間1分54秒=▽10秒(▽0.27%)。◆女子マラソン世界記録:2時間15分25秒/前半1時間8分2秒-後半1時間7分23秒=△39秒(△0.96%)。◆男子マラソン日本記録:2時間6分16秒/前半1時間2分29秒-後半1時間3分47秒=▽1分18秒(▽2.08%)。◆女子マラソン日本記録:2時間19分12秒/前半1時間9分19秒-後半1時間9分53秒=▽34秒(▽0.82%)。※男子の日本記録は優勝ではなく、3位で樹立した記録。

上記の記録については、5k毎のラップタイムを割愛していますが、どれも見事なイーブンペースであると言えます。そして、どの記録もペースメーカーがキッチリとペースメークして樹立した記録でもあります。

では、次に私がコーチする女子選手(市民ランナー)が残した記録を解析してみます。具体的には、2時間50分00秒から2時間59分59秒までの実績タイムから導いたデータですが、その記録内でゴールした回数は合計で55回です。

◆2時間50分00秒~2時間54分59秒(22回):平均タイム2時間52分34秒/前半平均1時間25分15秒-後半平均1時間27分19秒=▽2分4秒(▽2.42%)。◆2時間55分00秒~2時間59分59秒(33回):平均タイム2時間57分18秒/前半平均1時間27分17秒-後半平均1時間30分1秒=▽2分44秒(▽3.14%)。◆合計(55回):平均タイム2時間55分24秒/前半平均1時間26分28秒-後半平均1時間28分56秒=▽2分28秒(▽2.86%)。

以上のような記録の解析になりますが、参考までに後半ペースアップした回数は、5回と3回で合計8回です。また、逆に後半の落ち込みが4分以上(≒5%以上)の回数は、4回と6回で合計10回でした。もちろん、データの数が多いとは言えないので単純に結論を導き出すことはできませんが、マラソンを攻略していく上での効果的なペース配分が何となく見えてきます。

次回は、更に掘り下げて考えていきます。

つづく。

期分け・36

h24-1-26-11h24-1-26-2h24-1-26-3

今回から実際のマラソンを走る上で、目標タイムに対してどんな設定ラップタイムで走っていくかを考えていきます。

既にご存知のとおり、マラソンはスタートしたら単純にゴールを目指すシンプルなスポーツですが、ゴールを目指す走法についてはいくつかのパターンがあります。はじめにそのパターンをあげてみます。

◆パターン1).イーブンペース型:単純に1k毎の目標ラップタイムを守ってゴールまで淡々と一定ペースで走るパターン。◆パターン2).前半突っ込み型:前半のハーフを速めに通過し、後半は失速しながらも走り切るパターン。◆パターン3).後半ビルドアップ型:前半のハーフを抑え気味に通過し、後半のハーフをペースアップしながらゴールするパターン。

主なパターンは上記3つになりますが、どんなレベルの選手が走っても必ずどれかに当てはまる至極当然のパターンです。

ところが、どのパターンが自分自身に最も適しているかをしっかりと自己分析できているランナーは驚くほど少ないと感じます。もちろん、出場する大会毎にコンディションやレース展開は違います。そのため自分自身に合うパターンを見つけることは、難しいことでもあります。

さて、皆さんはどのパターンが得意でしょうか?

それでは上記パターンについて、それぞれを詳しく考えていきますが、はじめに最近の傾向について考えてみます。※但し、テレビ中継のあるエリートマラソンについてです。

この時期は、ほぼ週末毎にマラソンのテレビ中継があります。そして、どの大会もペースメーカーがレースを先導します。ペースの目安として男子は1kを3分、女子は3分25秒あたりでしょうか。

これを上記パターンに当てはめると、パターン1のイーブンペース型になります。しかし、ペースメーカーは25kから30kあたりで役目を終えます。したがって、そこからが本当の勝負です。つまり、そこからがマラソン競争となり、パターン3の後半ビルドアップ型へとなるはずですが、大会によってはそこから大きく失速してパターン2へと陥ることも多々あります。

特に国内の大会では、ペースメーカーが離れた後、ペースが上がらずパターン2となるマラソン大会の方が多いような感じさえ受けます。もちろん、その理由は様々ですが、レース展開が走っているランナーの走力や走法にマッチングしていないことが大きな原因と感じます。

しかし、最も効率のよさそうなイーブンペース型で走っているにも関わらず好記録ラッシュに結びつかないところが、マラソンの難しさでもあります。そして同時に、目標の記録をどのような走法で攻略していくかは、とても重要なポイントであると考えます。

つづく。

期分け・35

h24-1-18-1h24-1-18-2h24-1-18-3

今回も「マラソン期」で実際にマラソンを走る際の目標タイムやそれに伴う数字(タイム)について考えていきます。

前回もふれましたが、マラソンを走る前にほとんどのランナーは目標タイムを設定します。そして同時に、目標タイムに対し、1k毎の通過設定タイムや5k毎の通過設定タイムに関しては、ほとんどのランナーが確認します。ところが、10kや15kの通過設定タイム、更には25kや35kの通過設定タイムになると、逆にほとんどのランナーは確認及び把握していないケースの方が多いと感じます。

もちろん、1k毎の目標ペースをスタートからゴールまでキッチリと刻める走力やペース感覚の優れたランナーなら全く問題ありません。ところが、実際のマラソンレースでそれを実行するのは簡単なことではありません。

なぜなら、実際のマラソンレースでは、走力や目標タイムの違う数千人から数万人のランナーが一斉にスタートします。その結果、他のランナーに惑わされる可能性が高くなるからです。特に、スタート直後から10k前後あたりまでは人波が凄く、自分自身のペースを維持していくことは事実上困難な状況と言えます。※マラソンは「1対1」の勝負ではなく、「1対他」の勝負となります。

同様に、大会主催者側が準備しているペースメーカーのいるグループについたとしても、そのペースメーカーを務めているランナーがペースを一定に刻める保障もありません。つまり、前半のペースが遅れた場合や速すぎた場合、ペースメーカーの判断でペースの上げ下げを必ず実施します。

そのため、目標タイムに対する5kの設定タイムはキープできたとしても、その間の1k毎にペースの上げ下げをするケースが多々あり、走力の伴っていないランナーはそのペースの変化で力を使い切ってしまいます。

ところが、このとき自分自身の目標タイムに対する各ポイントの通過設定タイムをしっかりと把握していたとします。すると、そのペースの変化を身体(感覚)だけでなく、自分自身の時計を目で見て確認し、実際の数字(タイム)として頭の中で正確な判断ができます。

このような話しをすると「そんなことは当たり前」と、誰もが言います。しかし、実際のマラソンレースではペースが速すぎたり遅すぎたりしていることを正確な数字(タイム)として把握できず、最終的には自滅するパターンが意外と多いのです。

つづく。

期分け・34

h24-1-12-11h24-1-12-2h24-1-12-3

ここまで長々と「期分けシリーズ」を連載してきましたが、いよいよ狙ったマラソンを走る「マラソン期」について考えていきます。

はじめに、ここまでの期分けを簡単に振り返っておきます。

◆スピード養成期:4月~7月 → ◆第1次走り込み期(基礎体力養成期):8月~9月 → ◆第1次走り込み期(スピード持久力養成期):10月~11月 → ◆調整期:11月~12月 → ◆マラソン期:11月~1月。・・・以上のような流れとなります。そして更に、それぞれの期について考えてきました。※期間(月)については目安です。

もちろん、毎度のことですが、上記の期分けが絶対ではありません。なぜなら、市民ランナーの多くは実業団選手(プロ)や学生選手のようにランニングを軸にした生活スタイルを継続していくことが難しいからです。したがって、それぞれがそれぞれの仕事や生活スタイルに合わせた流れ(期分け)を構築していくことが重要なポイントになります。

一方で、マラソンは球技のようなスポーツと違い道具を使いません。そのため、ランニングに上手い下手はありません。また、別の見方をすると、バッティングセンターで素人が140キロの速球を偶然打ち返すことはできても、マラソン4時間のランナーが運よく2時間10分で走れることは絶対にあり得ません。

つまり、いかなる理由があったとしても「走ること」を継続していかないと、マラソンを攻略していくことはできません。更に、目標のマラソンに向けて必要不可欠なことは、それぞれの走力やレベルに合ったトレーニング計画であり、期分けなのです。

さて、前置きが長くなりましたが、ここまで上記の期分けを通じて計画的なトレーニングを考えてきました。そして、いよいよ目標のマラソンに挑戦する「マラソン期」です。

今更言うことでもありませんが、狙ったマラソン前の睡眠時間や食事内容については、どんなレベルのランナーでも気を使います。また、当日のコンディションに合わせた暑さや寒さ対策、シューズ等についても考えます。同じく、レース中の給水対策に至っては、既にランナーにとって常識です。

ところが、意外と盲点になることがあります。それは、目標タイムの設定やペース配分についての数字です。具体的には、目標タイムが3時間突破のランナーなら、「4分15秒/kペース」で目標を達成できることは、どんなランナーでも把握しています。

しかし、3時間突破をするための15k通過予定タイムや25k通過予定タイムになると、ほとんどのランナーは答えることができません。そして、実際のマラソンでスタートから「4分15秒/kペース」が乱れると・・・。

次回はこの点を掘り下げていきます。

つづく。

期分け・33

h24-1-4-1h24-1-4-2h24-1-4-3

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、毎年のことですが、お正月三が日は「駅伝観戦」と、決めつけている方々も多かったと思いますが、いかがだったでしょうか?かくいう私も駅伝三昧の三日間でした・・・。

今年のお正月三が日は天候にも恵まれ、「ニューイヤー駅伝」、「箱根駅伝」ともに好記録が続出し、見ごたえのある駅伝でした。特に、どちらの駅伝も優勝したチームの安定した走りが目をひきました。具体的には、各区間に配置された選手たちがブレーキも無くそれぞれの役割を見事に全うし、予定どおりの力を出し切ったその「調整力」に驚きました。

駅伝はマラソンと違いチームで競い合います。しかも、区間毎の距離やコースの起伏等が全て異なります。同時に、スタート時間も全区間異なるので、区間毎に起床時間から食事時間、更にはウォーミングアップ等の流れに至るまで全てが異なります。

このように駅伝は、区間毎にまるで違うレースが展開されます。更に、それらをチームの目標に向けてひとつに合わせていくことは、本当に至難の業です。今回、ふたつの駅伝では、その調整力の差がそのままチーム順位に現れ、あらためて調整(ピーキング)の重要性を見せつけられる思いがしました。

また、正月の駅伝を目指している選手たちも春にはトラックレースを走り、夏には走り込みを実施します。ところが、1万メートルの平均タイムを短縮したとしても、夏の走り込みが計画どおり積めたとしても、最後の調整期間で勝負の明暗が分かれます。

この点は、マラソンを目指している市民ランナーの人たちも全く同じです。

マラソンは駅伝のように区間毎にスタート時間が異なったり、同じ大会で別々なコースを走ることはありません。しかし、マラソンも大会毎によってスタート時間が異なります。同じくコースの特性も違います。それらの点は駅伝もマラソンも同じであり、駅伝からのノウハウをマラソンに活かすことは可能です。

例として、箱根駅伝の1区を走るランナーは8時のスタート時間に合わせて夜中の2時から3時には起床し、体調を整えます。同様に、早朝9時より早い時間にスタートするマラソン大会だったとしたなら起床時間や食事等のノウハウはもちろん、早朝に体調を合わせていく調整方法は参考になります。また、アップダウンの多い区間を走る選手のトレーニング方法や調整方法は、起伏の多いマラソンコース攻略にも応用できるはずです。

このように、正月の駅伝を攻略したチームや選手たちの調整方法については、マラソンを目指す市民ランナーにとっても参考になると考えます。また、これから新聞や雑誌、ネット等で正月の駅伝を制したチームや選手たちの記事を目にする機会が増えてきます。是非ともそのコメントを注視し、調整方法のヒントを学んでほしいと思います。

つづく。

期分け・32

h23-12-18-060h23-12-18-106h23-12-25-003

今回は調整期に入ったが、諸事情により調整計画と違う内容を実施してしまうケースについて考えていきます。

実は、「調整計画と実施内容がどんどんかい離していくケース」が、失敗例の中では最も多いパターンのひとつです。しかし、多くの市民ランナーは自分自身の余暇時間を活用し、トレーニングを積み重ねていくスタイルなので、どうしても仕事や家庭が優先されます。その結果、想定外の用事に振り回されてしまい最後の調整で失敗するケースは意外と多いのです。

つまり、社会人(市民ランナー)としては、仕事や家庭を最優先することは、至極当然のことですが、マラソンで目標タイムを達成するためには、そのことが裏目にでてしまうことが多いのです。そして、この部分がマラソンの最も難しい点のひとつであり、マラソンの残酷な部分であると、少なくとも私は感じます。※真面目な人ほど失敗する?

しかし、調整の基本は「休養」です。更に前回も記載したとおり、「迷ったら休養」を実行に移せるか否かが重要なポイントであると考えます。

では、実際に調整計画と実施内容が相違した場合の「良いケース」と「悪いケース」に分けて考えてみます。

◆良いケース1).仕事や天候等により、予定していた走行時間(ジョグ)が短くなった。または、ゆっくり走ることになった。◆良いケース2).諸事情により、予定していたトレーニングが何もできず、「完全休養日」になった。◆良いケース3).身体が重く感じ、ペース走の設定タイムが予定より遅くなってしまった。または、途中でやめてしまった。

◆悪いケース1).仲間たちと一緒に走り、予定していた走行時間(ジョグ)より長く走ってしまった。または、ペース走を仲間の力をかりて、予定より速く走ってしまった。◆悪いケース2).仕事や天候等により、予定していた練習を翌日以降にスライドさせた。または、水泳や自転車トレーニングに振りかえた。◆悪いケース3).予定していた設定ペースで走り切れなかったので、翌日以降に再チャレンジした。

以上のようになりますが、いかがでしょうか?

また、良いケースを悪いケースと、悪いケースを良いケースと、逆に考えていた人も意外と多いのでは?

繰り返しになりますが、調整期に限っては「休養第一」です。この点をしっかりと押えることができた人は、マラソンで自己の目標を達成できる確率が飛躍的に高まります。そのためには、上記の「良いケース」と「悪いケース」をしっかりと理解しておくことは、大切なポイントになります。

※おかげさまで、今年も何とか「週に1回の更新ペース」を堅持することができました。来年もよろしくお願い申し上げます。

つづく。

期分け・31

h23-12-21-11h23-12-21-2h23-12-21-3

今回は、「調整期」の具体的な「内容&流れ」を考えていきます。

前回記載したとおり、この調整期に入るとメンタル的に不安定な状況に陥りやすくなります。そして更に、調整期にも関わらずハードトレーニングを実行に移して失敗するケースを多く目にしてきました。

それは、狙ったマラソン大会で失敗する原因の中では、おそらく上位にランクされる要因と思います。そして、そうならないような調整をしていくための最も基本的となることは次のことです。

「迷ったら休養!」

まずは、この点を頭の中に刻み、自分自身の中でいつでもブレーキを掛けられるようにしておくことが調整期の基本となります。しかし、なかなか実行に移せることではありませんが、常に意識していくことが大切です。

では、目標のマラソン大会から1週間前の具体的な調整計画と、それに対する二つの調整実績を次に記載します。

◆調整計画例:10k~15k走/日曜日 → 完全休養/月曜日 → 軽めのジョグ(30分程度)/火曜日 → 5k走/水曜日 → 軽めのジョグ(30分程度)/木曜日 → 完全休養/金曜日 → 軽めのジョグ(30分ジョグ)+1000m/土曜日 → 目標のマラソン大会/日曜日。

◆調整実績1(女性市民ランナー・スピードタイプ):15k走/日曜日 → 完全休養/月曜日 → 30分ジョグ/火曜日 → 5k走/水曜日 → 完全休養(マッサージ)/木曜日 → 30分ジョグ/金曜日 → 30分ジョグ+1000m/土曜日 → マラソン大会(2時間59分25秒・初サブスリー達成!)/日曜日。

◆調整実績2(女性市民ランナー・スタミナタイプ):120分ジョグ+100m×3本/日曜日 → 30分ジョグ/月曜日 → 60分ジョグ+1000m/火曜日 → 90分ジョグ+100m×3本/水曜日 → 30分ジョグ+マッサージ/木曜日 → 40分ジョグ/金曜日 → 30分ジョグ/土曜日 → マラソン大会(3時間9分3秒・自己新記録達成!)/日曜日。

以上のような調整実績となります・・・。

もちろん、上記したパターンが絶対ではありません。様々な調整方法やパターンのある中のひとつとして参考にしてほしいと思います。但し、それらの中でも共通している点として、「思い切って走行距離を落としていくこと」です。そして、それが最も重要なポイントになります。

次回はもう少し踏み込んで、調整期の計画と実績がズレてきたケースについて考えていきます。

つづく。

期分け・18

h23-8-24-11h23-8-24-2h23-8-24-3

今回から「ゆっくり長く走る」について考えていきます。

はじめに、「ゆっくり」とは、どの程度のスピードなのでしょうか?

また、「長く」とは、どの程度の時間なのでしょうか?

実は、この2点の明確な定義については、少なくとも私自身はこれまで見たことも聞いたこともありません。したがって、具体的な数値を示し、必ずこのペースでこの時間を走り続けなさいと、言い切ることもできません。

・・・と、最初から無責任な言い方になりましたが、実は速く走るより、ゆっくり長く走る方が難しい面もあります。そのため、マラソンに向いてるかの判断をする材料として、単独でゆっくり長く走れるか否かを判断基準にしている指導者は意外と多く、もちろん私もその点は目安のひとつにしています。

では、話しを元に戻し、「ゆっくり」のペースについてですが、上記したとおり、明確な定義はありません。また、心拍数で管理する方法もありますが、今回は私の経験から数値で表してみます。

◆ゆっくりペースの目安 ≒ マラソンペース×1.5倍以上

具体例として、マラソンをサブスリーで走れるランナーの場合、1kペースは4分15秒になります。そのペースを1.5倍すると6分22秒となり、このペースより遅いペースが「ゆっくり」の目安になります。そして、このペースはサブスリーランナーにとって、仲間と会話をしながら走れるペースとなります。つまり、ゆっくりの目安は、「楽しく会話ができるペース」とも言えます。

更に、もう少し初心者レベルのランナーを例にとり、マラソンのタイムが6時間をこえる場合で考えてみます。この場合、1kのペースは8分30秒前後になります。そして、そのペースを1.5倍すると、12分40秒以上となります・・・。お気付きになったと思いますが、このペースはウォーキングのペースと変わらなくなります。即ち、マラソンのタイムが6時間をこえるようなランナーがゆっくり長く走ることは、長く歩くことと同じであるとも言えます。

このように、各自のゆっくりペースを計算していくと、ランニングペースがウォーキングペースと交錯するランナーもいます。いずれにしろ「ゆっくり」とは「楽しく会話ができるペース」であることを、ひとつの目安にしてほしいと思います。

次回は、「長く」について考えていきます。

つづく。

期分け・17

h23-8-17-1h23-8-17-2h23-8-17-3

今回も「基礎体力養成期(8月~9月上旬)」についてです。

既に大まかな流れについては話していますが、この期は「ゆっくり長く」がキーワードになります。具体的には、距離より時間です。即ち、「何キロ走る」から「何時間(分)走る」へのシフトです。その大きな理由は、気温や湿度が高い中で走り込みを実施する場合、距離を目標に一定のペースを保ちながら走ることが難しいからです。

例として、私がコーチする市民ランナーの中にはサブスリー達成者が多数います。そのランナーたちが30k以上のペース走を実施する場合、設定ペースは1kあたり4分30秒からが標準的な設定ペースと位置付けています。

ところが、この暑い8月にその設定ペースでペース走を実施すると、至極当然のことながら中盤あたりからペースを保つことが難しくなってきます。原因は言うまでもなく、気温と湿度が高いからです。そこで、更に設定ペースを落として走ればと考えます。実際に1kあたり30秒落とし、5分00秒ペースで走ると何とか走り切ることができます。

しかし、ここで新たな問題が出てきます。それは、設定ペースを落とし過ぎることで、11月のマラソンで目標記録にしているペースと大きくかい離することです。具体的には、次の「スピード持久力養成期」に移行した際、狙った設定ペースで30k以上のペース走が難しくなるランナーが・・・。もちろん私の経験上の話しが主なので全てのランナーに当てはまりませんが、設定ペースを落とし過ぎてペース走を実施する場合、自分自身が持っているペース感覚が遅い方へぶれるランナーが意外と多くなるのです。

・・・と、長々と説明してきましたが、暑い中でキッチリと設定ペースを守り、計画どおりの距離を走り込んでいくことはとても難しいのです。そして何より、苦しんだ割には身体に疲労を蓄積させるだけになり、精神的なストレスをためこむ結果にもなります。

このように、8月の暑い中での無理なペース走は個人差もありますが、マイナス面の方が多いのです。

そこでこの基礎体力養成期では、自らを設定ペースや距離のストレスから解放させ、「ゆっくり長く」をモットーに走り込んでいきます。更に、ゆっくり長く走ることは、長距離ランナーに必要不可欠な毛細血管網の発達を促進させます。実は、長距離ランナーの速さや強さを決める要素のひとつが、肺から取り込んだ酸素を身体の隅々まで運ぶ毛細血管網にあります。※専門的な話しは割愛します。

それは、この基礎体力養成期でゆっくり長く走ることが、11月のマラソンに必要不可欠な長距離ランナーとしての身体つくりにつながるのです。

つづく。

期分け・16

h23-8-10-1h23-8-10-3h23-8-10-2

前回は、「第1次走り込み期」を大きく二つに分けました。そして、今回からはその前半にあたる「基礎体力養成期」について考えていきます。

既にこのブログでも何度か夏の走り込みについて考えてきましたが、今回の基礎体力養成期についても大きく変わることはありません。実は、1年で最も暑いこの時期と反対に最も寒い時期のことを陸上競技では鍛錬期とも呼んでいます。即ち、最も暑い8月とその前後の月と、最も寒い2月とその前後の月は自分の種目に必要な基礎体力を養成する期間と、多くの陸上選手は位置付けています。

そしてこの期間は、短距離選手も積極的な走り込みを重ね、同時に筋力をアップさせるようなトレーニングを集中的に実施します。もちろん、同じ走り込みでも長距離選手のような走り込みとは異なりますが・・・。そのため、8月の暑い時期は涼しい場所へ移動し、2月の寒い時期は暖かい場所へと移動しての合宿形式のトレーニングが多くなります。

ところが、マラソンを目指している選手にとって、2月はマラソンやロードレースのシーズンにあたります。そのため、基礎体力を養成できる期間は8月とその前後の月だけとなります。そして、マラソンを目指している選手にとっての基礎体力を養成するトレーニングは、もちろん走り込みが中心となります。

このように、基礎体力養成期にあたる8月とその前後の月は、単に11月のマラソンを目指した走り込みだけでなく、1年間をしっかりと走り切るための土台を構築する最も重要な期間とも言えます。

一方で、7月から8月は1年間で最も気温や湿度が高く、ランニングには最も適さない季節であることも違いありません。そのため、この暑い時期を逆に休養にあてる市民ランナーも多く見受けます。この考え方は、運動生理学的に言えば正しいのかもしれませんが、暑い季節を避けて9月から走り込みを開始した場合、はたして秋や冬のマラソンで狙った結果を残せるのでしょうか?

私の経験上の話しになりますが、答えは「NO」です。その理由はいくつかありますが、最も大きな理由のひとつは暑さを避けた結果、暑さや湿度に対する「暑熱順化」ができていない点です。詳細は割愛しますが、暑い時期にじっくりと汗をかくような走り込みを積み重ねてこなかった結果、9月以降の厳しい残暑で夏バテや脱水症状に・・・。

特に、ここ数年は温暖化の影響で11月のマラソン大会にも関わらず気温が20度をこえるケースも珍しくなくなりました。つまり、夏の暑い時期を休養にあてたランナーは、9月以降の走り込みやレースで残暑による暑さの影響を受け易くなります。

また、走力や出場する大会のレベルは全く違いますが、実業団選手(プロ)や箱根駅伝を目指す学生選手においても、実は同様のことが言えます。つまり、秋や冬の各種大会で不調な選手の原因を突き詰めていくと、その年の夏を計画どおりに走り込めなかったことが大きな要因となっている選手は多いのです。

このように、8月を軸にした基礎体力養成期は秋のマラソンに向け、とても重要な期であると・・・。

つづく。

Home > Tags > ランニング

Search
Feeds

ページの先頭へ