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東京マラソン2013

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【東京マラソン2013】ランニングブームの火付け役となった、今年で7回目の東京マラソンが、2月24日に開催されました。今年の大会からワールドマラソンメジャーズ(WMM)に加わったことで、名実ともに世界のトップレースとなりました。特に、海外からの男子招待選手は、2時間4分台の記録を持つ世界のトップランナーが4名も出場し、記録への期待はこれまで以上となりました。

ところが、当日の天候は晴れたとは言え、北風が強く気温も低めで、記録を狙うには厳しいコンディションだったと、沿道からは強く感じました。案の定、先頭集団はスローペースな展開となりましたが、30k過ぎから爆発的なスパートを見せたケニアのキメット選手が2時間6分50秒のコースレコードで優勝。日本人トップは、後半の粘り強さを見せた前田選手が2時間8分00秒の好記録で4位に入りました。

キメット選手の自己記録は2時間4分16秒、前田選手は2時間8分38秒と、4分以上の開きがあります。しかし、キメット選手の爆発的なスパートに対し、日本人ではたったひとり粘り抜き、1分弱の差でゴールした前田選手の走力は世界と十分に戦える可能性を示したと言えます。

また、30kまでのペースメーカーに対する厳しいコメントも見受けられましたが、個人的には好アシストだったと思います。なぜなら、過去の国際大会においても、厳しいコンディションの中で無理に設定タイムを貫いた結果、記録を狙った先頭集団全員が後半失速し、逆に先頭集団に付けなかった後方の選手たちが上位を独占してしまったケースは意外と多いからです。

今回、結果的には30kまでペースを上げられなかったことで、20名近い大集団を形成しました。同時に、有力選手たちがその集団の中で体力を温存できたことが、30k以降の爆発的なスピードを生み出し、好記録へつながったと感じます。

さて、私の選手たち(市民ランナー)も厳しいコンディションの中、自己の記録へ挑戦しました。特に、出産後はじめてのマラソンとなったママさん主婦ランナーのFさんは、「3時間30分突破」を目標に前半からキッチリと目標ラップタイムを死守していきました。そして、最も苦しくなる30k以降も日本人トップとなった前田選手に引けを取らない粘り強さと、得意のラストスパートを発揮し、「3時間29分43秒」の大記録でゴール!出産後の大きな目標だった別大マラソンの切符もガッチリと手にする見事な快走でした。

マラソンは自分自身の目標に沿ったラップタイプをしっかりと刻んでいくペース感覚は重要な要素となります。しかし、当日のコンディションやレースの流れを読んで、目標ラップタイムを上下に修正しながら粘り抜く力は更に重要な要素です。今回の東京マラソンは、その力の差が記録と順位に大きく反映されたマラソンだったと…。

期分け・61

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【期分け・61】前回までの話しで、AT値(無酸素性作業閾値)や、LT値(乳酸性作業閾値)から導いた乳酸の蓄積しない境界強度(速度)のペースで走り込むと、持久力も効率よく向上していくことが、理論的には理解することができました。

ところが、距離走を30k~40kとマラソンに近づけた場合、そのペースも実際のマラソンペースとほぼ同じことになります。そのため、マラソンを目標にした走り込みとしてのペースは、常に目標のレースペースでトレーニングを実施することにもなり、逆に強度が強すぎる傾向になります。もちろん、怪我や故障のリスクも高まることになり、単純に効果的とは言えません。

更に、スタミナをつけるために走り込みを実施しているにも関わらず、最初から目標のレースペースになるため、マラソン経験の少ないランナーほど途中で失速してしまうリスクも高くなります。では、マラソンを目標にした場合、どんなペース設定で走り込んでいけば良いのでしょうか?

冒頭のペースは、5kの記録を基準にすると、90%~93%のペースです。また、体感的には5kを全力で走った感覚を「きつい」とした場合、「ややきつい」となります。同時に、理論上はこのペースでマラソンを走り切れる計算にもなります。しかし、これより更に落としたペースの方が、マラソンに向けた走り込みは、失速のリスクも少なく効果的と予想できます。

具体的には、上記同様に5kの記録から導いていきます。

◆目安1).5kの記録を100%としたときの83%~87%の速度。◆目安2).5kを全力で走ったときの感覚を「きつい」としたとき、「楽である」と感じる速度。※今回も心拍数については割愛します。

以上の2つがマラソンに向けた走り込みにおいて、スタミナアップに効果的なペースとなります。実は、ここからの考え方は各種専門誌や専門コーチ毎による見解が微妙に異なってくるところです。

いわゆるマラソンに向けた「脚づくり」と、呼ばれているゾーンでもあります。つまり、マラソンを攻略していく上でのノウハウ的な要素が色濃く出てくるところです。コーチたちの手腕が問われる部分でもあります(汗)。

もちろん、私が今回示した数値が絶対ではありません。しかし、少なくとも私自身の経験や、私自身の指導経験からは効果的であると考えます。

つづく。

期分け・60

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【期分け・60】前回は、マラソンでサブスリーを達成するための理想的なスピードを5kの記録から考えました。その結果、理論上は5kを19分30秒で走れるランナーなら、5kを21分15秒のペースでマラソンを走り切れる計算となり、サブスリー達成も可能と…。

ところが、実際のマラソンでは、そう簡単にはいきません。つまり、計算上なら乳酸が蓄積しない境界強度のペースですが、3時間前後も走り続けると、話しはかなり違ってくるからです。すなわち、冒頭の計算どおりにマラソンを走るためには、もう少し別のアプローチが必要です。それは、3時間前後も走り続けるためのスタミナ(持久力)を高める走り込みです。いわゆる「脚づくり」と、言われる走り込みです。

さて、ここで勘違いをしてほしくないことは、5kのスピードを否定しているのではありません。やはり、スピードは必要不可欠です。しかし、マラソンを走り切るためには、スピード以上にスタミナがより重要となるのです。

少し視点を変えると、5kを速く走れるスピードがあっても、単純にそのスピードを距離にして8倍以上もあるマラソンまで引き延ばすことは困難です。しかし、マラソンを確実に走り切れるスタミナは、5kと言う短い距離に凝縮して一気に吐き出すことは可能です。つまり、スタミナをスピードとして活かすことができます。(スピードが付いたらスタミナもアップした=×、スタミナが付いたらスピードもアップした=〇)

よく箱根駅伝を走るようなエリートランナーたちやその関係者たちが、若いときにスピードを高め、それから距離をのばしていく方法を推奨しています。しかし、冷静に分析していくと、それは理論的には正しいのですが、過去にそのような方法でオリンピックのマラソンまで到達したランナーは、残念ながらほとんど見当たりません。(かつての瀬古選手や宗兄弟をはじめ、過去のオリンピックランナーの多くは、20代前半からマラソンとトラックを両立していました)

もちろん、個人差もありますが、スピードを付けた後に、スタミナを付けていく流れは理想的ですが、現実的には移行する過程におて膨大な時間と失敗(失速)を繰り返すリスクが高いと感じます。その結果、移行する過程において選手自身のメンタル面の方が、肉体より先にバーンアウト(燃え尽きる)してしまうケースも意外と多いのです。

そのため、マラソンを目指していくには、スピードよりスタミナに重きを置いたトレーニングの方が賢明で、結果的にはスタミナアップがスピードアップにもつながると考えます。特に市民ランナーの場合、私の指導経験からも最初からスタミナ重視のトレーニング方法にシフトした方が、マラソンを攻略できる可能性も高まります。

さて、話しが少し脱線しましたが、次回からは「脚づくり」と言われる走り込み方法を再びAT値(無酸素性作業閾値)や、LT値(乳酸性作業閾値)から考えていきます。

つづく。

第62回別府大分毎日マラソン

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【第62回別府大分毎日マラソン】2月3日に開催された伝統の別大マラソンは、期待どおりに川内選手と中本選手の一騎打ちとなり、川内選手が見事な大会新記録で優勝しました。

さて、「あの選手は勝負強いランナー」と、よく耳にします。その強さとは、一般的には勝負に勝つことを指します。ところが、どんなに小さな市民マラソン大会においても「優勝」することは、簡単ではありません。しかし、優勝すると、大会会場にいる大勢の前でインタビューを受けたり、表彰されます。また、大会によってはテレビ中継があり、翌日の新聞に名前や写真が掲載されたりもします。これは、誰もが本来持っている「認められたい」と言う欲求を見事に満たしてくれます。そして、一度でもこの経験(蜜の味)をしたランナーは、最も苦しい勝負どころでも最後まで優勝をあきらめません。すなわち、勝負強くなります。

川内選手は、2009年の別大マラソンでマラソンデビューをし、この4年間で実に21回もマラソンを走ってきました。特に、今回の別大マラソンを含め、この1年間だけで何と11回も走っております。そして、特筆すべきは、この1年間で優勝を7回も経験したことです。私が偉そうに言える立場ではありませんが、間違いなく現役日本人選手で最も勝負強いランナーのひとりであると言えます。

また、「あの選手は安定しているランナー」と、よく耳にします。その安定とは、一般的にはどんな大会でも上位でゴールしたり、記録にムラがないことを指します。その指標のひとつにマラソンを走った回数に対し、自己記録を何回達成したかを見ます。実は、実業団選手(プロ)をはじめ、市民ランナーの中でも既に10回以上マラソンを完走しているにも関わらず、自己記録更新を一度も経験したことのないランナーは意外と多くいます。つまり、初マラソンが生涯記録となっているケースです。もちろん、最初からレベルの高い記録をマークした場合、記録を更新することは簡単ではありません。

しかし、自己記録を達成したことの無いランナーは、一発狙いの雑なレース内容が多く、自分自身の力を出し切る能力やレース状況を的確に判断する能力が不足しているケースが多いとも感じます。

中本選手は、今回の別大マラソンで10回目のマラソンでした。そして、5回目の自己記録更新です。ハイレベルな記録を目指している実業団選手(プロ)の中において、自己記録達成率が5割と言うのは、驚異的な安定感とも言えます。その真骨頂が、昨年のロンドン五輪での6位入賞と、中本選手は歴史に名前を刻みました。

このようにタイプの異なる川内選手と中本選手の直接対決が実現した今回の別大マラソンは、様々な意味で歴史に残る大会だったと感じます。また、かつての別大マラソンは、エリートランナーのみの大会でしたが、数年前から参加資格を3時間30分まで広げ、女子の部も新設しました。その結果、今大会は3千名以上のランナーが伝統ある別大マラソンに挑戦し、あらためて「新人の登竜門」と呼ぶに相応しい大会へと進化しました。

そして、川内選手と中本選手の歴史に残る一騎打ちは、一緒に別大マラソンを走った多くの市民ランナーたちへ、勇気と希望のメッセージを残したに違いありません。

第32回大阪国際女子マラソン

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【第32回大阪国際女子マラソン】今年、モスクワで開催される第14回世界陸上競技選手権の日本代表選考競技会を兼ねた今回の大阪国際女子マラソンに私の選手(市民ランナー)も2名出場しました。

当日のコンディションは、気温が6度前後で風もほとんど無いとの公式発表でした。しかし、実際に沿道で応援した感じでは、風は逆にかなり強く、途中で小雪が舞うなど、体感温度はもっと低く、厳しいコンディションだったと思います。

今回出場した私の2選手は、昨年11月のマラソンで不本意な結果に終わった選手たちです。その後、気持ちを切り替えて2月末の東京マラソンを目標に走り込みを続けています。今回、大阪での目標は、11月のマラソンで失敗したイメージを早く払しょくすべく、実際のレースを活用してペース走的な感覚で、最後までしっかりと走り切ることでした。

実は、マラソンを目指して走り込みを続けていく段階で、いくつかのタイプに選手を分けることができます。もちろん、私が経験的につかんだことなので、絶対ではありません。

◆タイプ1).スピードがあり、スタミナもある。◆タイプ2).スピードがあり、スタミナがない。◆タイプ3).スピードはないが、スタミナがある。

もっともっと細かく分類できますが、大きく分けると上記の3タイプにほぼ当てはまります。タイプ1は、誰が見ても理想的ですが、このようなタイプはマラソンの歴史を振り返っても多くはいません。では、タイプ2とタイプ3についてですが、一見するとタイプ2の方が将来性はあるように感じます。

ところが、実際に選手たちの走り込みを見ていくと、タイプ2は、「スタミナが付きにくく、スタミナが抜けやすい」と、長い距離への移行が難しいケースも多く、苦労する選手がほとんどです。逆に、タイプ3の選手は、走り込みの量と質がそのままマラソンのタイムに反映されていくケースが多く、マラソンでは安定したパフォーマンスを残している選手が多いと感じます。(市民ランナーも含めて)

また、タイプ1は、タイプ2の選手が苦労してたどり着いた姿とも言えます。しかし、実際のマラソンでは、30k以降に大きく失速するパターンを何度も繰り返し、スピードランナーと言われた多くの選手たちは、道半ばでマラソンへの移行を断念するケースも意外に多いと感じます。(市民ランナーも含めて)

さて、前置きが長くなりましたが、大阪を走った私の2選手は、タイプ2の選手です。市民ランナーですが、スピードがあり、長い距離もしっかりと走り込むことができています。しかし、実際のマラソンでは、練習量に見合った目標どおりの走りがうまくできないケースが多く、2選手ともその点は苦労しています。

はたして、今回の大阪でも35kから失速し、目標タイムでゴールすることはできませんでした。しかし、昨年11月のマラソンより調子は好転しており、2月の東京マラソンに向け、明るい兆しは見えました。

毎度のことですが、マラソンは奥が深く、うまくいかないケースばかりです。しかし、最後まで粘り強く走り込み、粘り強く最後までマラソンを走った選手が成功します。今回、優勝したガメラシュミルコ選手のように、最後の最後まであきらめない粘り強い姿を見習いたい…。

期分け・59

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【期分け・59】今回からマラソンの記録向上につながる、AT値(無酸素性作業閾値)やLT値(乳酸性作業閾値)を高めるトレーニングを考えていきます。

はじめに、このブログでも紹介した5kとマラソンの記録の関係から適切な設定タイムを算出していきます。もちろん、ひとつの例としてなので、全てにおいてこのパターンどおりになるとは限りません。この点は、予めご理解いただければと思います。

◆関係1).5k記録×2倍+1分≒10kの記録。◆関係2).10kの記録×4.5~5.0≒マラソンの記録。

今回もマラソンで「サブスリー(3時間突破)」を目指しているランナーを例にしていきます。但し、5kの記録が、サブスリーを目指すことのできる理論上の最低ラインを突破していることを条件として考えていきます。すなわち、5kを19分30秒以内(10kを40分以内)の記録をマークしていると仮定します。

次に、乳酸が蓄積していかない限界の速度を計算します。それは、5kの記録に対して90%~93%の速度なので、計算すると次のようになります。

◆計算1).19分30秒÷5=3分54秒(1kのスピード)-①。◆計算2).①の90%~93%の記録≒4分12秒~4分20秒(1kのスピード)。

上記のように1kを4分12秒~20秒の間のスピードで走り続けることが、サブスリー達成に必要なAT値やLT値を効率的に高めることにつながるはずです。同じく、5kに換算すると、21分00秒~21分40秒です。更に、5kを19分30秒前後のランナーは、21分00秒前後のペースに対して「ややきつい」と、感じるケースが多く、感覚的な部分もほぼ合致しています。(私の経験上)

また、サブスリーを達成するためのペースを1k毎に換算すると「4分15秒」なので、乳酸を蓄積させない境界強度(速度)のスピードとしては理論上も一致しています。では、5kを19分30秒で走れるランナーなら誰でも上記したとおり、5kを21分00秒~21分40秒間のペースで簡単にマラソンを走り切れるのでしょうか。

もちろん、個人差もありますが、答えは「NO」です。

次回は、この点も加味しながら更に考えていきます。

つづく。

期分け・57

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【期分け・57】前回、AT値(無酸素性作業閾値)やLT値(乳酸性作業閾値)を高めることは、マラソンの記録短縮につながると、話しをしました。今回は、それぞれの数値を高める具体的なトレーニング方法を考えていきます。

では最初に、乳酸が一気に増加してくるスピードとはどこを指すのでしょうか?また、それはどんな感覚なのでしょうか?

至極当然の疑問として最初に誰もが思う疑問であります。同時に、マラソン歴の長いベテランランナーにとってもよく理解できない点だと思います。その最も大きな理由のひとつが、AT値やLT値と言ってもそれは「閾値」であり、「ゾーン」を指すからです。すなわち、マラソン経験の豊富なランナーがこれまでの経験や実績を元に次のマラソントレーニングを開始しても、そのときの調子やコンディション等によってそれらの数値も常に変化しているからなのです。

と、言いながらやはり目安となるスピードを導いておく必要はあります。そして、効率的なマラソントレーニングを積み上げていく上で様々な数値が必要不可欠になります。しかし、大切なことは、これらの数値を参考にしながら常に、「自分自身の身体と対話する能力を高める」ことが、トレーニングの目的であり基本になります。したがって、それぞれの数値もその都度、微調整する必要があることを、はじめに理解しておく必要があると考えます。

さて、前置きが長くなりましたが、これから具体的なスピードを考えていきます。何度かこのブログにも記載しましたが、マラソンの自己記録を更新していく上でスピードの目安となる距離があります。もちろん、様々な距離があり、どれが正しいか否かを簡単に決めることはできませんが、今回のAT値やLT値を高める上で目安とする距離を「5k」で考えていきます。

ここでもう一度、5kの記録とマラソンの記録との関係を振り返っておきます。

◆関係1).10kの記録≒5kの記録×2倍+1分。◆関係2).マラソンの記録≒10kの記録×4.5倍~5.0倍。

全てのランナーに上記の関係式が成り立つとは言い切れませんが、走歴を重ねていくとほとんどのランナーがこれに当てはまってきます。逆に大きく食い違っている場合は、そもそも5kや10kのような短い距離を走ることがほとんどなく、ハーフ以上の距離がメインになっているランナーと想像できます。特に、学生時代以前に競技経験がなく社会人になってからランニングをはじめた市民ランナーの多くは、このケースに当てはまるのかもしれません。しかし、これから話しを進めていくAT値やLT値に関しては、この5kやそれよりも短い距離の記録がとても重要になっていきます。※5kのタイム計測は、定期的に実施することを推奨します。

つづく。

年末年始

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【年末年始】今年もいよいよ数日となりましたが、皆さんにとってどんな一年だったでしょうか。自己記録更新や目標の記録を達成した方、怪我や故障に悩まされた方、振り返ると様々な出来事が頭の中を駆け巡ることでしょう。もちろん、良かった点、悪かった点を反省し、来年に活かしてほしいと思います。

同時に、これまた毎年のことですが、これから年末年始の休日に入ります。ところが、大掃除や忘年会、実家への帰省等々、同じ休日でも他の休日とは違い、かなり慌ただしくなります。一方で年が明けると後半のマラソンシーズンがはじまります。そのため、この年末年始は、後半のマラソンシーズンにとって、とても重要な時期となります。

さて、これまでも何度かこのブログでも取り上げてきましたが、年末年始の走り込みについてあらためて考えてみます。

はじめに、この年末年始に相当する12月24日前後から1月7日前後までの約2週間は、1月末から2月以降のマラソンを目指しているランナーにとっては、欠かすことのできない重要な走り込み期となります。特に、一般的な市民ランナーは、週末集中型のトレーニング方法を実践しているケースが多く、マラソンを目指していく上で休日の走り込みは重要なポイントになっています。

ところが、この年末年始に限って言えば、上記したような行事や予定が入り、いつものように走り込むことが難しくなっていきます。更に、飲食を伴う行事も多く、断ることすら難しいケースも多々見受けます。以上のことから走り込みが不足し、更に暴飲暴食が重なるパターンに陥り易く、マラソンを目標に走り込みを実施していくためには、逆に最悪の時期となり得るリスクを伴うとも言えます。

では、上記したような悪循環に陥らないための注意点をいくつかあげてみます。

◆注意点1).早朝型走り込みの実践:年末年始の予定は昼から夜にかけての行事が多いので、少し早起きをして早朝型の走り込みにシフトする。また、これを機に早朝型を習慣化していく。◆注意点2).LSDを軸にした走り込みの実践:どんな状況でも単独で30k以上の距離走が可能な方は別ですが、年末年始は無理に長距離を走るより、少しのんびりとした気持ちに切り替えて長時間を走るようにしていく。◆注意点3).ラジオを活用した走り込みの実践:元旦から3日までは国内最大級の駅伝中継が続きます。実は上記した以外に、この駅伝中継のために走り込みができなくなるケースもあります。そこで、ラジオ中継を聞きながら走ることができれば、モチベーションアップにもつながります。もちろん、音楽を聞きながら走ることと同様に、周囲への安全を確保した上でのことになりますが。

以上の3つが主な注意点となりますが、大切なことは忙しいことを理由に「走り込みができなかった」と、言うことを回避することが最大の目的となります。そのためには、年末年始を前に、最初から無謀な走り込み計画を組まず、少し気持ちにゆとりを持つことは大切です。

そして、この休日でヒットやホームランに相当する質の高い走り込みを過度に追及せず、休日明けからスムーズに移行するためのバンドに相当する「つなぐために走り込み」を意識することは、ひとつのポイントになると考えます。

最後になりましたが、このブログも皆様方のおかげで、何とか今年も継続することができました。あらためて感謝申し上げます。来年も何とか継続できるよう精進していきますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

期分け・56

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【期分け・56】少し間が空きましたが、久々に期分けシリーズです。前回からの続きで週末トレーニングの組合せパターンについて検証していきます。今回はパターン3の「土曜日:スタミナ系トレーニング+日曜日:スタミナ系トレーニング」についてです。

結論から言いますと、このパターンについての判定は「〇」です。

特に、マラソンを目標に走り込みを継続している初心者から上級者ランナー全てのレベルにおいて効果的なトレーニングパターンと言えます。もちろん、ランナー毎に走力の差があるので全く同じ内容のトレーニングを実施することはできません。しかし、ある数値を用いることで推奨できるトレーニングパターンや内容が見えてきます。

その数値として、「AT(無酸素性作業閾値」や「LT(乳酸性作業閾値)」がよく登場します。実は、私も専門的なことを細かく説明することはできませんが、ポイントを説明すると次のようになります。

はじめに「AT」についてですが、ランナーなら誰でも経験していることです。すなわち、ゆっくりと走りはじめ、少しずつスピードを上げていくと、あるスピードから突然苦しさが増していきます。つまり、楽なスピードでは、疲労物質である乳酸が蓄積されることはありません。しかし、あるスピードからはその乳酸が蓄積はじめるため、それ以上のスピードで走ると苦しさが増していき、走り続けることができなくなります。その境界を「AT」と言っています。

次に「LT」ですが、血液中の乳酸濃度についてです。具体的には、VO2max(最大酸素摂取量)の50%~70%程度の強度であれば、血中乳酸濃度は2~3mmol程度でそれ以上増加することはありません。しかし、運動強度を急激に上げていくとこの血中乳酸濃度は急激に増加していきます。そして、3~4mmol程度を境にこのカーブが急激に上昇し、この限界点を「LT」と呼んでいます。同時に、マラソンのようなスタミナ系の運動は、VO2maxより「LT」の方が持久力を判断する上ではふさわしいと言われています。

また、「AT」も「LT」も境目はポイントではなく閾値と言うだけであって「ゾーン」と考えられており、個人差やその日の体調等によってかなり違いがあります。

以上のように言葉で表現すると、簡単に説明したつもりでもかなり専門的で難解になります。かくいう私もこれ以上専門的な話しをすることはできません。しかし、「乳酸」と言う言葉がひとつのキーワードになることは何となく理解できます。同時に、この乳酸がある一定以上蓄積されないペースなら理論上はずっと走り続けることが可能と言えます。

つまり、乳酸が急激に増加してくる閾値のレベルを改善することができれば持久力アップにもつながり、マラソンの記録も向上するはずです。

つづく。

絆・3

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【絆・3】視覚障害者マラソンの普及と発展に力を注いできた「NPO法人日本盲人マラソン協会(JBMA)」が30周年を迎えることができました。この30年の間、本当にたくさんの方々のご尽力とご支援に支えられてきました。あらためて、心より感謝申し上げます。

当協会は、故杉本博敬初代会長の「情熱と行動力」によって誕生しました。その杉本初代会長は自らも中途失明し、想像を絶する苦労を重ねた方です。しかし、同会長は周りの人々が「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」で、次々と理解者を取り込んで当協会の礎を築きました。

さて、視覚障害者がマラソンを走るには伴走者が必要不可欠であり、その伴走者に対しても称賛の声があがります。もちろん素晴らしいことに違いありませんが、マラソンを走ろうと決意して行動をおこすのは、あくまでも視覚障害者本人です。したがって、視覚障害者本人の情熱と行動力が無いと、マラソンのスタートラインに立つことすらできません。つまり、伴走者は選手(視覚障害者)の情熱と行動力によって、選手(視覚障害者)から伴走されるのです。

1996年のアトランタパラリンピックで日本人初の金メダルを獲得した全盲の柳川春己氏は「金メダルをとる!」と、合う人たちに言い続けました。そして、まさに「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」で、見事に金メダルを獲得しました。

これは、一般のマラソンにも当てはまります。今回の30周年記念大会にゲストランナーとして花を添えていただいた公務員ランナーの川内優希選手も決して恵まれた練習環境ではありません。しかし、実業団ランナー(プロ)たちも「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」で結果を残し、今や日本陸連までも熱い視線を注いでおります。

先日の京都福知山マラソンで、全盲の和田伸也選手が2時間36分32秒のアジア新&日本新をマークしました。上記した柳川氏がアトランタパラリンピックでマークした記録は2時間50分56秒と、当時のアジア新&日本新でした。1996年から記録的には14分弱も進歩したことになります。しかし、柳川氏が残してきた功績には、未だ到達することはできません。

これから世界と勝負していくために必要なことは、トレーニング環境やそれを裏付ける資金等、ハード面の整備は欠かすことができません。しかし、先人たちが身を持って示してきたソフト面にあたる、マラソンに対する「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」を取り戻すことが、実はこれからの時代にも必要不可欠であると感じます。そして今回、30周年の節目をあらたな土台とし、意識改革も含めた新しい歴史を構築していきます。

引き続き、皆様方の絶大なるご理解ご支援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

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