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期分け・91

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【期分け・91】前回まで、ロードレースとトラックレースを比較してきましたが、どうもトラックレースの方が苦しいような感じです。同時に、その違いや感想をいくつかあげてきましたが、今回はもう少し掘り下げてみます。

特に、はじめてトラックレースを走った市民ランナーの多くが、走った後の感想として、「とにかく苦しかった」、「こんなに苦しい経験は初めて」とまで言う方もいます。では、その苦しさの要因を別の視点から考えてみます。

はじめに、考えられる最大の要因としては、以前にこのブログでも取り上げたトレーニング強度の指標となる「AT値」が、大きく影響していると考えられます。と、ここで久々に「AT値」が登場したので、もう一度簡単に説明しておきます。

ATとは、無酸素性作業閾値と言います。詳細については割愛しますが、簡単に説明すると、有酸素運動と無酸素運動の境界付近を指します。具体的には、遅いスピードで走っている段階では有酸素性エネルギーが供給され、乳酸を蓄積せずに(疲労せず)ランニングを継続していくことが理論上可能です。

ところが、スピードを上げていくと、無酸素的エネルギー供給機構が働き始め、乳酸がより多く産生(疲労してくる)されて、スピードを維持できなくなってきます。そして、その境界をAT値と言っています。しかし、その変換点はポイントと言うより閾値、つまり「ゾーン」と考えられています。

もちろん、正確なAT値を測定するには、専用の機器や血液検査等々、専門的なデータ分析が必要になります。しかし、ランニングペースの目安を導き出すため、簡易的な計算式でも、ある程度の目安を判断することは可能です。(個人差も大きいので目安として)

◆簡易計算式:5000mの記録を100%とした時の90%(5000mの記録/0.9)

例として、5000mを20分ちょうどで走れるランナーの場合、1000mの平均速度は4分ちょうどとなります。したがって、その90%なので、1000mを約4分27秒前後のスピードで走り続けると、理論上は乳酸が蓄積せずに(疲労せず)ランニングを長時間継続することが可能になります。また、そのペースの前後が閾値(ゾーン)となります。

さて、久々に難しい話しになりましたが、苦しさの要因となるヒントが何となく見えてきたでしょうか?

次回も引き続き考えていきます。

つづく。

絆・21

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【絆・21】梅雨の真只中ですが、6月21日(土)から1泊2日の日程で、日本盲人マラソン協会主催の強化合宿を千葉県富津市において開催しました。

毎年のことですが、梅雨と言いながらも晴れれば気温は30度以上に上がり、マラソントレーニングを実施していくには厳しい季節に突入しました。本来であるなら、実業団選手や箱根を目指す学生ランナーたちのように、暑い季節は涼しい場所へ移動しての長期合宿が理想です。そして、そのためには、相応の資金と時間の確保も必要不可欠になります。

もちろん、そのような環境づくりを目指して様々な方が様々な方面から努力をしていますが、理想と現実のギャップはそう簡単に埋まらないのが現状です。特に、長期合宿を実現させていくための時間を捻出することは、選手にとってもスタッフ(伴走者込)にとっても、最重要課題のひとつとして残っています。

一方で、パラリンピックや世界選手権と言ったビッグイベントのほとんどは、真夏に開催されます。2020年の東京パラリンピックも真夏に開催されます。その中においてのマラソンは、気温35度以上の中で走ることを想定し、それに対応できる日々のトレーニング方法や暑さ対策を構築していく必要もあります。

そんなことも考慮していくと、現状のように暑い季節でも東京に近い千葉県富津市において短期強化合宿を継続していくことは、決してマイナスではありません。

これからどんどん新しいことに挑戦し、新しいことを取り込んでいくことは重要なことですが、これまで同様、実施可能なことを確実に継続していくこともトレーニングの基本です。特に、近年は医科学サポートも充実してきており、それらのサポートを受けることによって、これまで厳しいと言われた環境やコンディション下でのトレーニングやレースへの対応策も構築されていくと考えます。

そんな中、日本盲人マラソン協会としては、毎年8月末に開催されている「北海道マラソン」に、今年から強化指定選手を公式に参加させます。もちろん、2020年の東京パラリンピックに対する暑さ対策も加味しての参加です。今後は、専門スタッフからのご協力を受けながら、まずは北海道マラソンでのデータを蓄積していきます。

引き続き、皆様方の絶大なるご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

期分け・90

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【期分け・90】前回は、ロードレースとトラックレースの相違点を3つあげました。更に、ロードレースから出場した市民ランナーの視点からまとめると、ロードレースと比較した場合、トラックレースの方がより厳格に実施される競技会であると言えます。

さて、今回もその違いについて、もう少し考えていきますが、実際にトラックレースの5,000mを初めて走った市民ランナー方に話しを聞くと、ほとんどの方が次のような感想を話します。

◆感想1).日本陸連の公認審判員からスタートまでの間、時間厳守で招集や腰ゼッケンの確認等を何度も受けるので、スタートまでに物凄く緊張した。◆感想2).スタート時の混雑が無いので、スタート直後から一気にスピードが上がってしまった。そして、1,000mを通過したあたりから今度は一気に苦しくなり、ゴールまでは経験したことのない苦しさだった。◆感想3).同じトラック上を12周半も走るのでコースを全て見渡せて変化が全くない。更に、ゴール地点に何度も戻ってくるので精神的に辛く、ゴールまでがとても長く感じた。また、仲間の応援にも全く反応できなかった…。

さて、皆さんはいかがでしょうか?

実は、トラックレースを経験したことのある方なら誰もが経験していることなのです。もちろん、実業団選手(プロ)や箱根駅伝を目指している学生ランナーも同じような苦しみを常に味わっています。

では、こんなにつらく苦しいトラックレースが、どうしてスピード強化につながるのでしょうか?

誰もが単純に思うことですが、まずは上記したトラックレースの感想を元に、ロードレースに出場した場合と、感じ方の違いをいくつかあげてみます。

◆違い1).ロードレースは、スタート直後まで音楽を聞いたり、仲間と談笑したりと、自分のリズムで過ごすことが比較的可能なため、精神的にリラックスできる。◆違い2).ロードレースは参加人数も多く、同じ目標タイムのランナーと一緒にスタートすることも可能で、個々のペースでスタートできる。◆違い3).一部の周回コースを除いてゴールまでの間、景色や沿道の応援が変化し、途中で苦しくなってもゴールまでは何度でも立て直すキッカケをつかめる。

次回は、上記した違いを更に掘り下げていきます。

つづく。

絆・20

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【絆・20】6月7日(土)から2日間の日程で、日本身体障害者陸上競技選手権大会が大阪長居で開催されました。日本盲人マラソン協会の強化指定選手たちも多数参加し、自己記録の更新に挑みました。

ご存知のとおり、既に梅雨入りして全国各地で記録的な雨量も観測しております。しかし、6月は梅雨の晴れ間になると、気温は30度をこえ真夏と変わらない厳しい暑さにもなります。特に、中長距離種目にとって梅雨らしい雨天の場合、雨がラジエターの役割を果たし、体温の上昇を抑えてくれるので、逆に好記録が期待できます。私自身も現役時代、6月の大会において、雨天の中で自己記録を更新した経験が何度かあります。

ところが、梅雨の晴れ間にぶつかると、気温は30度を大きくこえ、特にトラック上の気温は体温を上回る厳しいコンディションとなります。もちろん、そんな中で長距離種目を実施すること自体が自殺行為と言えます。

果たして、6月7日(土)と6月8日(日)の大阪長居は、見事に晴れました!

大会1日目は、5千メートル。T12クラス(弱視)の堀越選手を筆頭に、T11クラス(全盲)の和田選手や谷口選手たちが出走しました。スタートから記録を意識した積極的な走りを見せていましたが、暑さの影響が大きく、どの選手も後半は失速。特に、堀越選手と和田選手については、単に暑さだけの影響ではなく、動き自体にかたさも見られました。

大会2日目は、1500メートル。前日同様、堀越選手がスタートから先頭に立ち、積極的な走りを展開しましたが、残り300メートルから失速。逆に、和田選手はスタートから抑え気味に入り、残り300メートルからラストスパートを効かせてのゴール。堀越選手は前日以上に動きがかたく、和田選手は本来ののびやかな動きを取り戻していました。

堀越選手も和田選手も陸上競技に対する意欲や意識の高さはトップクラスで、まさに「命をかけて」います。一方で意欲や意識の高い選手ほど、調子の歯車が少しずれると、それが焦りとなって気持ちや感情をうまくコントロールできなくなってくるケースも意外と見受けます。

両選手にとって、この2日間の記録と成績のため、直ちに大きな痛手を受けることはありませんが、気持ちや感情をどのようにコントロールしていくかは、課題のひとつと感じました…。

さて、同じ日程で福島県において開催された一般の日本陸上競技選手権大会で、前人未到の20連覇を達成したハンマー投の室伏選手を筆頭に連覇を重ねた選手が複数いました。同じ大会に毎年連続して出場すること自体、自己管理と節制が必要不可欠となり、誰にでもできる偉業ではありません。

そして更に、勝ち続けることは、ライバルとの駆け引きや外部からのプレッシャーは相当大きくなりますが、最後は自分自身の気持ちと感情をどのようにコントロールしていけるかが重要なカギです。

至極当然のことですが、我々としては同じ陸上選手として学ばせていただく点ばかりです。しかし、それは単に技術やトレーニング理論だけでないことを、世界を相手に戦う真のトップアスリートたちから学ばなくてはいけない…。

つづく。

夏合宿・6

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【夏合宿・6】夏合宿シリーズの最終回です。今回はこれまでの各ポイントを踏まえ、具体的なトレーニング計画を考えていきます。但し、この夏合宿の目的は、最初に記載したとおり、秋からのマラソンシーズンに向けた走り込みです。この点は忘れないようにして下さい。

それでは、多くの市民ランナーたちに当てはまる1泊2日の合宿について、いくつかのパターンを考えていきます。最も一般的なパターンとして、土曜日の午前中に合宿地へ移動し、午後からトレーニングを実施。翌日は、早朝と午前にトレーニングを実施して午後に解散。ちょうど24時間の日程です。

◆パターン1).合宿1日目:午前/合宿地入り、午後/2時間~3時間LSD(走力に合わせて)。合宿2日目:早朝/各自でジョグ or 散歩、午前/2時間~3時間LSD(走力に合わせて)、午後/解散。

◆パターン2).合宿1日目:午前/合宿地入り、午後/30k~40k走(走力に合わせて)。合宿2日目:早朝/各自でジョグ or 散歩、午前/2時間~3時間LSD(走力に合わせて)、午後/解散。

◆パターン3).合宿1日目:午前/合宿地入り、午後/30k~40k走(走力に合わせて)。合宿2日目:早朝/各自でジョグ or 散歩、午前/スピード系トレーニング(10k以内のタイムトライアル or 設定タイムを落としたインターバル)、午後/解散。

3つのパターンを例にあげましたが、どれも距離と時間を多く走れるような内容です。もちろん、単にどのパターンが苦しくて、どのパターンが楽とかの判断は簡単にできません。特に、「パターン1」は、楽なLSDと思いますが、2日間連続でゆっくり長く走ると、体内のスタミナが枯渇するのを体感でき、まさに真綿で首を絞められていくような感覚は、スタミナ養成には最も適したパターンとも言えます。

また、「パターン3」は、1日目の距離走で足が相当重くなった状態の中、2日目にスピードを上げることで、マラソンの30k以降に必要な粘りを養成する効果も期待できます。もちろん、上記したパターンが絶対ではありません。それぞれが走力に合った内容を工夫しながら計画し、それを確実に最後までやり遂げることが最も重要と考えます。

さて、9月に入り、残暑も少しずつ和らいできた感じです。また、9月は連休も多く、週末を活用した短期合宿には最適な月です。同時に風邪が流行ってくる季節です。うがいや手洗いを励行し、体調管理にも注意してほしいと思います…。

おわり。

夏合宿・5

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【夏合宿・5】今回も前回に引き続き、「良いトレーニング」についてのポイントを考えていきます。

はじめに、1泊から3泊程度の短期合宿は、あれもしたい、これもしたと、欲を出して詰め込んだトレーニング計画になる傾向が強くなります。更に、合宿に参加するメンバーの走力や体力を考慮せず、理想や知識ばかりが前面に出てしまい、気が付いたら「凄い(無謀な)トレーニング」に陥ってしまうケースも後を絶ちません。

このように、短期合宿は様々なトレーニングを一気に実施しようとするには、時間が足りません。しかし、ほとんどの市民ランナーは、出勤前の早朝や、仕事の終わった後の少ない時間を活用して、日々のランニングを継続しています。したがって、たとえ1泊としてもランニング漬の生活は、願ったり叶ったりに違いありません。つまり、夏の短期合宿は、ポイントを絞ってじっくりと走り込むには十分な時間を確保できます。

次に、短期合宿の場合、合宿会場に移動した後、直ぐにトレーニングを開始することになります。特に、この移動については、ほとんどの方が多くの時間を要するため、慌ただしくなるのと、目に見えない負担として心身へのストレスも大きくなります。しかし、この移動も捉え方によっては、良いトレーニングに結びつけることができます。

実は、マラソン大会に出場する際、休日の取得や宿泊費等の負担をできるだけ少なくするため、多くの方は日帰りでの参加をします。その結果、日頃経験しない長時間の移動が、高い確率で伴います。場合によっては、渋滞や交通機関の混乱等に巻き込まれ、スタート前に疲れ果ててしまった経験をした方も多いと思います。

やはり、長時間移動後のランニングは、日頃経験していないだけにパフォーマンスにも直結します。それも悪い方に…。しかし、夏の短期合宿で長時間移動後のトレーニングを経験しておけば、様々な対応策を考えるきっかけになります。

では、前回同様、上記のことをまとめてみます。

◆トレーニングのポイント1).様々なトレーニングを詰め込み過ぎない。→ スタミナをメインにしたトレーニングを優先。◆トレーニングのポイント2).短期合宿でも走る時間は多くある。→ ゆっくり目のペース設定で長く走る。◆トレーニングのポイント3).現地入り後のタイミングを活用する。→ 現地入りした日に長い距離を走る。

次回は、これらを参考に、具体的なトレーニング内容及びトレーニングパターンを考えていきます。

つづく。

夏合宿・4

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【夏合宿・4】前回から「良いトレーニング」と、「凄い(無謀な)トレーニング」について考えています。はじめに、「凄い(無謀な)トレーニング」について考えましたが、今回は「良いトレーニング」についてです。

はじめに、「良いトレーニング」と、聞くと直ぐに記録が短縮できるとか、前回記載した「凄い(無謀な)トレーニング」をイメージし、実行するランナーが多いものです。確かに記録を短縮するには、ハードトレーニングが必要不可欠な時期もあります。しかし、短期間の夏合宿に関しては、それらのイメージを変える必要があります。

なぜなら、この夏合宿の目的は、9月以降から開始するマラソンに向けた本格的な走り込みを実施していくための「脚つくり」と、モチベーションを高めることが最大の目的だからです。つまり、本格的な走り込みに移行するための「心身の土台つくり(基礎)」となる走り込みです。

そのためには、次の3つのポイントが重要となります。◆ポイント1).余裕を持ったゆっくり目の設定タイムにする。◆ポイント2).日頃の走り込みより距離や本数を少し多めにする。◆ポイント3).所属クラブチームや友人たちと一緒に合宿する場合、走力のあるランナーがリーダーとなり、遅いランナーに合わせてペースメークする(走力別にグループを分ける)。

要約すると、「ゆっくり長く」がベースとなり、合宿計画を最後まで確実にやり遂げることが重要なポイントとなります。また、走力のあるランナーが遅いランナーに合わせたペースメークをすることは、走力のあるランナーにとっては無駄のように感じます。しかし、遅いと感じるペースを最初から最後までキッチリと刻んでいくためには、逆にしっかりとしたペース感覚が身に付いていないと務まりません。

実際に夏合宿や練習会等で現役学生ランナーに、1kあたり5分や4分30秒でペースメーカーをお願いすることが多々あります。ほとんどの学生ランナーにとっては、日々のジョギングより遅いペースになるので、気を抜いて走ると瞬く間にペースアップしてしまいます。ところが、走力のある学生は、どんなに遅いペースをお願いしても、キッチリと刻んで最後までペースがブレません。逆に、走力の安定していない学生ランナーは、出足が速くなったり、遅くなったりして、練習そのものが崩壊するケースは意外と多いのです。

このように、走力のあるランナーにペースメーカーをお願いすることで、彼らにとってもペース感覚を養成する絶好の機会にもなります。もちろん、後ろに付いて走るランナーにとっても一定のペースで走れるので、最後までしっかりと走り抜くことが容易になります。

そして何より、合宿に参加した仲間全員と一緒に最後までやり遂げることで、チームとしての達成感や一体感を味わうことができ、モチベーションも高まるに違いありません。

つづく。

夏合宿・3

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【夏合宿・3】この1週間も厳しい猛暑日が続きました。本来ならランニングはもちろん、外出そのものを控えて、涼しい場所で安静にしておくことを推奨する天候です。

しかし、前回もお話ししたとおり、この8月は秋からのマラソンシーズンに向け、極めて重要な走り込み期でもあるのです。そして、そのためには可能な限り涼しい場所や時間帯を確保しながらの走り込みとなり、仲間たちとの短期合宿がとても有効的な手段であると、話しをすすめてきました。

今回は、短期合宿の具体的なトレーニング内容に入っていく前に、どんな心構えが必要なのかを考えていきます。少しかたい表現ですが、要は短期合宿の具体的なトレーニング内容を考える上での注意点です。

実は、短期合宿を計画すると、良かれと思って考えたことが、「良いトレーニング」ではなく、「凄い(無謀な)トレーニング」になってしまうケースは意外と多いのです。その結果、短期合宿に参加した多くのランナーが、計画したトレーニングを最後までやり遂げることすらできず、逆に故障や怪我、あるいは熱中症等の危険なトラブルに巻き込まれてしまうケースも少なくありません。

ポイントは、「良いトレーニング」と「凄い(無謀な)トレーニング」をしっかりと見極める眼力を持ったコーチがトレーニング計画を立案することです。また、そのような短期合宿に参加することが理想的ですが、実際に参加してみないと分からないことなので、現実的には難しいことでもあります。※合宿に参加している個人毎の走力が違い、質や量の見極めが難しい。

では、短期合宿の具体例をあげて、トレーニング内容を考えていきます。まずは、短期合宿の失敗例です。

◆失敗例1).涼しい高原なので距離や時間を増やして40k走や3時間LSDを参加者全員で、ゆっくりペースでスタート。しかし、途中から先頭を走っていたリーダーが、どんどんペースアップ。最後は、リーダーが独走となり、他のランナーは大きく失速。更に、後方のランナーは歩きだし、途中リタイヤ。◆失敗例2).同じく長い距離を走る際の給水を各自に準備させたところ、500mlのペットボトル1本程度しか準備しないランナーが多く、案の定、前半から給水が底をつき、多くのランナーが脱水症や熱中症の危険な状況に陥った。◆失敗例3).トラックにおいて、インターバルトレーニングを実施。合宿なので本数を多くしたのだが、各自の設定タイムがバラバラだったので、出足からトラックを半周するほどの縦長状態。その後、最初から速く走ったランナーは中盤で力尽きてリタイヤし、後方のランナーはペースを乱されて途中リタイヤ。結局、誰もトレーニング計画どおりに完走できなかった。

以上の失敗例はほんの一部です。もちろん、少なくとも私が実際に目撃した事例です。まさに、折角の合宿なので、「充実したトレーニングを」と、考えて実行した結果、「良いトレーニング」から「凄い(無謀な)トレーニング」にシフトしてしまった事例です。

皆さんの計画した短期合宿は、大丈夫でしょうか?

また、これらの事例は市民ランナーの方々だけでなく、成績が低迷したり伸び悩んでいる学生チームや実業団チームにも見受けられる事例のひとつでもあります。

次回は、「良いトレーニング」について考えていきます。

つづく。

夏合宿・2

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【夏合宿・2】前回からの続きで短期夏合宿についてです。今回は、合宿での具体的なトレーニング計画を作成する前に、どんな点に注意していくかを考えていきます。

さて、短期合宿と言え、宿泊や移動を伴うので「お金と時間」がかかることは間違いありません。ましてや、涼しい環境を求めると、更に移動のための費用や時間も増していきます。この点については、皆さんも常に織り込んだ上で、合宿を計画していると思いますが、いかがでしょうか。

今回は合宿地を選定するための注意点をいくつか考えていきます。

最初の注意点として、合宿候補地までの移動手段と移動時間を可能な限り正確に把握することです。至極当然のことですが、ここをいい加減にしたまま合宿地を決めてしまうと、合宿当日に苦労する可能性もでてきます。その代表的な例として、合宿地への移動に時間がかかってしまい、トレーニング時間も大幅に減ってしまうケースです。主な具体例は次のとおりです。

◆例1).車で移動中、渋滞に巻き込まれてしまう。◆例2).公共交通機関を利用したが、電車やバスの本数が極端に少ない。◆例3).無事に合宿地に到着したが、合宿地内での移動する手段を確保できない。

ふたつ目の注意点ですが、トレーニング環境や施設を事前に把握できる合宿地を選ぶことです。人の話だけをあてにし、涼しいとか宿泊費が安い等の理由で安易に合宿地を決めてしまうと、現地到着後、現地のトレーニング環境を把握するのに時間がかかり過ぎてしまいます。その結果、計画どおりのトレーニングが実行できないケースも意外と多いのです。

◆例4).宿泊している宿からお目当てのランニングコースが意外と遠く、簡単にたどり着けなかった。◆例5).クロカンコースがあると聞いていたが、実際は手をついて登るようなガケがあったり、胸まである雑草をかき分けて道なき道を走るようなコースだった。◆例6).山の中なので走れる場所が限られており、逆に少ないランニングコースにランナーが殺到し、都内の皇居周辺と変わりなかった。

以上のような例をあげましたが、短期合宿は少ない時間との戦いでもあります。そのため、合宿地に到着するまでの交通手段や合宿地のトレーニング環境を事前に把握しておくことは、重要事項のひとつです。

また、上記したことは、誰でも理解していることですが、意外と頭の中から抜けている点でもあります。今一度、合宿候補地を再確認し、単に涼しいとか、宿が格安であると言ったことだけに目がいかないよう注意して下さい。

つづく。

夏合宿・1

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【夏合宿・1】8月に入りましたが、連日暑さとの戦いです。至極当然のことですが、暑い中でのランニングはとても危険です。しかし、秋からのマラソンシーズンに向け、そろそろ走り込みを開始していくのも8月あたりからです。とても矛盾する話しですが、暑い夏のランニングはとても危険ですが、とても重要です。

そこで今回から暑い8月に効率よく走り込んでいくため、夏休みやお盆休みを活用した短期合宿について考えていきます。

はじめに、短期合宿の「短期」とは、どの程度の日数を指すのでしょうか?

ほとんどの市民ランナーは、1泊2日から3泊4日程度の期間を指すと思います。もちろん、私が考えている短期についても同じです。実は、走りのプロである実業団選手や箱根を目指す学生選手たちの合宿は、1週間から2週間程度の期間が一般的で、それ以上の長期合宿も珍しくありません。

こんな話を聞くと、1泊2日程度の短期合宿で効果はあるのか疑問を持ったり、不安になったりする方もいますがご心配なく。合宿は目的や日数によって内容も変わり、単純に短期だから効果が薄いとは言えません。同時に、市民ランナーの方がマラソン合宿を実施するために1週間も休暇を取得したり、その費用を自己負担することは簡単なことではありません。

更に、ランニング漬になる合宿生活を、市民ランナーの方が1週間以上も継続することは体力的にも無理があり、仮に実現可能としてもおすすめできません。では、実際に短期合宿と長期合宿の違いをシンプルにまとめてみます。

◆違い1).合宿費用:短期=安い、長期=高い。◆違い2).スタッフ(世話役人):短期=不要、長期=必要。◆違い3).怪我や故障のリスク:短期=低い、長期=高い。

一つ目の合宿費用については、まさにそのとおりです(笑)。二つ目のスタッフについてですが、合宿期間が長期になるほど、選手たちの疲労も重なり、トレーニングの合間は食事か寝ているだけの状態になっていきます。そのため、動けるスタッフが帯同していないと、合宿そのものが計画的に実行できなくなります。※合宿に帯同してくれる人を探したり、その人の諸経費を誰がどのように負担するかの問題が発生する。

最後の怪我や故障のリスクについても、トレーニング漬になる合宿は身体への負担が格段に大きくなります。走りのプロである実業団選手や学生選手でも1週間以上の合宿を怪我や故障なくパーフェクトにこなすことは簡単なことではありません。※合宿中に怪我や故障をした場合の対応は、トレーナーを帯同させていたとしても難しいケースが多い。

以上のことから逆に短期合宿は、市民ランナーに適した無理のない合宿であると考えます。

次回は短期合宿について更に掘り下げていきます。

つづく。

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