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マラソン

ロンドンパラリンピック・3

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【ロンドンパラリンピック・3】多くの勇気と感動を与えてくれたロンドンパラリンピックも終盤です。ここまで多くの世界記録やパラリンピック記録誕生の瞬間を目にし、世界の驚異的なレベルアップに驚くばかりです。一方、日本チームの苦戦を目の当たりにすることは逆に多く、既に多くのメディアで報道されているとおりです。

しかし、それぞれの敗因を分析すると、単なる強化の遅れとも言えない側面も見えてきます。特に陸上競技の視覚障害クラス(T11~T12&F11~F13)や手足障害クラス(T42~T46)では、多くの種目が日本の一般選手と同等以上のレベルに到達しています。

つまり、単なる強化費や強化方法より、選手(タレント)の発掘方法をどのように構築していくかは、これからの最重要課題ではと強く感じます。特に今大会は、ホスト国であるイギリス、前回の開催国の中国、そして、次回開催のブラジルの圧倒的な強さばかり目についたのと、どの種目もそつなく多くの選手をエントリーしており、その選手層の厚さにただ単に驚くばかりでした。

さて、そんな中、立位長距離マラソンチームの選手たちは、ここまで目標どおりの力を出し切れています。

◆結果1).T11(全盲)クラス1500m:和田伸也(伴走者・中田崇志)/予選落ち(あと1人で決勝)/4分18秒71(日本新記録)。◆結果2).T12(弱視)クラス5000m:堀越信司/5位入賞/14分48秒89(日本新記録)、岡村正広/8位入賞/15分45秒98。◆結果3).T11(全盲)クラス5000m:和田伸也(伴走者・中田崇志)/銅メダル/15分55秒23(日本新記録)。

4年前の北京パラリンピックの惨敗を糧に地道な強化を積み重ねてきた選手の努力と、それを支えてきた多くの伴走者たちの成果であります。特に、どこまでの記録を狙え、どこまでの順位を狙えるかを選手と伴走者が共によく分析していました。そして、単なる憧れや理想論に陥らないよう、常に現状を直視し、強化の方向性がブレなかった点は大きかったと感じます…。

残すは、最大の目標であるマラソンです。

この4年間の集大成をしっかりと出し切れるよう、最後まで集中します。

皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

ロンドンパラリンピック・2

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【ロンドンパラリンピック・2】ロンドン入りしてほぼ1週間が経過し、こちらの生活にも慣れてきました。おかげ様で、ここまでは選手及び伴走者共々大きなトラブルも無くほぼ順調です。また、マラソンの試走も数回実施し、路面状況やアップダウンやコーナー個所等も、ある程度把握することができました。もちろん、マラソンスタート当日までに、まだ何度か試走を予定しています。

さて、パラリンピックをはじめ国際大会に参加すると、日々刻々と新しい情報が入り、情報収集はとても大切になってきます。特に、選手に直結する競技のタイムテーブルについては、現地での最終調整に大きく影響するので、とても敏感になります。事実、選手村に入ってから競技のタイムテーブルに大きな変更がありました。

◆変更点1).T11クラス(全盲)/1500m:予選+準決勝+決勝=計3本 → 予選+決勝=計2本。◆変更点2).T11クラス(全盲)/5000m:予選+決勝=計2本 → 決勝=計1本。◆変更点3).T12クラス(弱視)/5000m:予選+決勝=計2本 → 決勝=計1本。

以上のように、それぞれの予選や準決勝が割愛され、レースの本数が減りました。これにより、全盲の和田選手、弱視の岡村選手と堀越選手のレースは少なくなり、タイムテーブルも変更になります。

一見すると、本数が減ることで身体への負担が軽減されるので良いように感じます。実際に全盲の和田選手と弱視の岡村選手にとっては、最終日にマラソンが控えているので、今回の変更はプラスに受け取ることができます。

ところが、トラック種目の5000mのみにエントリーを絞って勝負をかけている弱視の堀越選手にとっては、若干状況が違ってきます。具体的には、現地に入って10日程度の間に5000mを2本(予選+決勝)走る調整計画だったのを1本に修正するからです。

既にこのブログでも記載していますが、最終調整の原則は、「迷ったら休養」です。しかし、今回のように、10日間の短いスパンで調子のピークを2回合わせる流れを1回に変更することは、意外と難しい修正になります。特に今回は、予選を走ることで現地に入ってからの調子を正確に把握することと、大会の雰囲気やトラックの状態を確認し、決勝へ向けたピーキングの精度をより確実にしたかったからです。

また、今回のようにレースを組込んでのピーキングは、予定していたレースが無くなった場合の代替えとなるトレーニングの選択はとても難しく、今回もかなり悩み、選手自身も迷います。ところが、上記しているように「迷ったら休養」とはいきません。なぜなら、今回のように短期間の調整スパンでは、それ相応の負荷を身体にかけておかないと、調子のピークが大幅にズレ、修正が極めて難しくなる可能性が高いからです。

と、言いながら通常のトレーニング感覚で追い込み過ぎることはご法度です。ここのサジ加減は、どんな有名なコーチでも悩むところですが、最後は選手自身が自ら決断し、「大丈夫」と思い込むことが大切です。同時に、4年に1回のこの大舞台で、ここまで蓄えてきた力を全て出し切れるよう、選手及び伴走者をサポートしていきます。

つづく。

ロンドンパラリンピック・1

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【ロンドンパラリンピック・1】12時間の長いフライトを経て8月23日、ロンドンパラリンピックの選手村に無事到着しました。いよいよこの4年間の努力を試すときが訪れました。

あらためて皆様方のご声援をよろしくお願いします。

さて、一夜明けた24日から本格的な選手村での生活がスタートしました。パラリンピックのような長期遠征で重要なことは、いかにして日本にいるときと同じような生活リズムを崩さないようにしながら体調を維持、向上させていくかです。

そのためには、一日も早く選手村の環境に慣れることと、3度の食事を確実にとっていくことです。まずはこの2つが最も重要項目となり、入村して最初のハードルとなります。

24日の早朝6時30分から早速、立位長距離マラソンチーム全員で選手村内をゆっくりジョギングしました。実は、長距離選手はトレーニングの一環として選手村内をジョギングしながら様々な施設や住居地との位置関係等をどの選手や関係者よりも早く把握することができます。これは長距離選手の特権でもあります(笑)。

今回の選手村は、私の感覚的な比較となりますが、前回の北京パラリンピックの2/3程度の大きさで、コンパクトにまとまった印象です。そのため、選手村の様々な場所に移動する負担が少なく、逆に機能的です。今更ながら、どんどん規模や内容が拡大しているオリンピックやパラリンピックですが、今回のロンドンは様々な意味で本来の原点に戻していこうとする流れを感じます。

続いて、食事についてですが、これについても全く問題なく、素晴らしい内容です。ロンドンの皆様方にはたいへん失礼な言い方ですが、ロンドンの食事については、悪い方のイメージを持っていましたので、とても安心しました。

さて、本日は早速、スタッフのみでマラソンコースの試走に行ってきました。特に、今回のように早い段階での試走が可能になったのも、私の知人で現地に留学している木島氏のご理解とご協力によるものです。彼女には、我々がロンドン入りする前から何度もコースのチェックをお願いし、マラソンコースを熟知していただきました。そのため本日の試走はとてもスムーズに実施することができました。あらためて感謝申し上げます。

そのコースについてですが、残念ながらかなり厳しい印象です。これから選手及びガイドランナーたちも試走を実施しますが、試走の回数を増やす必要があり、本番までに不安を払拭していきます。

つづく。

期分け・49

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【期分け・49】前回は、スピードトレーニングとセットで実施していくことで、効果が期待できるトレーニングとして「LSD」を紹介しました。既に何度かこのブログでも取り上げていますが、あらためて「LSD」について説明します。

LSDとはどんなトレーニングか?

これについては、「ゆっくり長く走る」と、ランナーなら一度は耳にしたとがあり、誰もが知っていることと思います。※心拍数を上げずに長時間走り続ける。

LSDの目的は?

主に2つの目的があげられます。◆目的1).ゆっくり長く走ることで体内の毛細血管を発達させ、全身の筋持久力を向上させる。◆目的2).ゆっくり長く走ることで体脂肪を燃焼させ、マラソン向きのスリムな身体をつくる。

LSDの方法は?

これについても、「ゆっくり長く走る」ことは、誰もが理解しています。ところが、「ゆっくり」とはどんなペースなのかまでは、意外と把握していません。もちろん、このペースについては個々の走力や体力に大きく影響します。また、心拍数で管理する方法もあり、とらえ方は様々ですが、最もわかり易く誰もが実践しやすい目安としては、シンプルに「会話のできるペース」となります。

同時に、「長く」についても個々の走力によって様々で、30分程度の初心者から2時間以上走り続けることが可能なベテランまでと、かなり幅はあります。しかし、LSDで最も重要なポイントは、心拍数を上げ過ぎずに走り続けることです。これにより初心者や走力のないランナーでも長時間走り続ける(動き続ける)ことが可能となり、上記したような効果が期待できます。

さて、LSDについて簡単に説明しましたが、至極当然のことながら多くのランナーは上記のことを頭では理解できます。ところが、市民ランナーはもちろん、実業団ランナー(プロ)でもこの「ゆっくり長く」を実践することが苦手なランナーは、意外に多いと感じます。

その理由として、実は子供のころから「ゆっくり長く走る」経験や機会はほとんどないことが、ひとつの要因と感じます。特に、「ゆっくり走る」方法を学ぶ機会はほとんどなく、小学生の各種マラソン大会を見ていても、どんなに遅い子供でも「前半突っ込み型」の走りとなっています。※前回の「期分け・48」で記載した点もあります。

したがって、ランニングブームに伴いマラソンに挑戦した市民ランナーの多くは、小学生時代から経験してきた「前半突っ込み型」の走法が身についている傾向が強いと感じます。そのため、最初からゆっくり長く走る「LSD」がうまくできないランナーを多く見受けます。

更に、「前半突っ込み型」の走法が身についているためか、最初から飛ばしていく「スピードトレーニングを多く取り入れた方がマラソンのタイムも短縮できる」と、考えるランナーも多いと感じます。

ところが、スピードトレーニングを消化していくだけの体力や走力が不足しているため、逆に怪我や故障につながるケースが後を絶ちません。そこで、それを防止するためにも上記した「LSD」を組み合わせたトレーニングが必要不可欠になるのです。

話しが遠まわしになりましたが、皆さんはいかがでしょうか?

つづく。

期分け・48

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【期分け・48】前回はスピードトレーニングを実施しているにも関わらず、うまくスピードが身についていかないケースを取り上げました。今回はその対策を考えていきます。

皆さんは、マラソンや長距離走で大切な基準となるのはスピードと考えるでしょうか?あるいは、スタミナと考えるでしょうか?

実は、最初にここのとらえ方が違うと、マラソンを攻略していくトレーニング方法や流れが変わってきます。もちろん、マラソンを攻略していく上でどちらも大切な要素であり、どちらも必要不可欠になります。しかし、前回このブログでスピードが身につかないランナーの例をあげたように、スピードトレーニングを実施しても記録や成績に結びつかないケースは多く、エリートランナーにも多く見られるケースでもあります。

その主な理由として、ハードなスピードトレーニングに対応できる体力ができていない。すなわち、スタミナが身についていないことがあげられます。また、激しいスピードトレーニングの詰め込みは、単に苦しいことの繰り返しとなり、メンタル面にも悪影響を与えます。具体例として、トレーニングに対する意欲が著しく低下する「バーンアウト(燃え尽き症候群)」に陥る可能性が高まります。

そのため、スピードトレーニングを実施していくためのトレーニングが、もうひとつ必要になります。つまり、「練習のための練習」が必要になってきます。何だかおかしな言い回しですが、これを少し整理すると次のようになります。

◆1).スピードトレーニングのような質の高い内容に対応できる体力を身につけること。◆2).スピードトレーニングで疲労した身体を効率よく回復させること。◆3).スピードトレーニングで蓄積したメンタル面のストレスを和らげること。

以上、3つについての対応可能なトレーニングが、スピードトレーニングとセットで実施できれば、スピードトレーニングも効率よく身についてくるはずです。少なくとも私の経験上、強く感じます。そして、その代表的なトレーニングは、「LSD」となります。

意外と簡単な答えですが、市民ランナーをはじめ多くのランナーは、トレーニング効率や、できるだけ走らない方法を求める傾向が強くなってきています。特に、ランニングフォームやトレーニング理論ばかりに目がいき、時間をかけてゆっくり長く走る「LSD」の重要性が少し薄れているようにも感じます。

もちろん、私が勝手に感じていることでもありますが、次回はこの「LSD」についても考えていきます。

つづく。

期分け・47

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【期分け・47】前回は、1990年代までのランナーたちが主流にしてきたトレーニングの流れについて振り返りました。今回は話しを戻し、あらためてスピード養成期におけるスタミナ養成について考えていきます。なんだか不可解な言い回しですが、要はマラソンを目標にしているランナーも単にスピードを磨きたいと考えているランナーにとっても、土台となる部分である「スタミナ(持久力)」についての話しです。

既に7月後半に入り、夏の走り込み期に入ってきましたが、4月から7月前後までのスピード養成期にさかのぼって考えます。この期は、市民ランナーの方々でも10k程度までのロードレース大会や各種駅伝大会、あるいはトラック種目と、短い距離のレースを積極的に走ります。あるいは、走らされます(笑)。

日々のトレーニングについても、スピード系を中心に「ゼーゼーハーハー」と、かなり苦しい内容です。ところが、記録に直結しないケースは意外に多く、苦しんだ割には成果のでないランナーが多いのも事実です。

では、何故そのようになるのでしょうか?

もちろん様々な理由が考えられますが、最も大きな要因は「スタミナ不足」です。では、その具体例をいくつかあげてみましょう。

◆1).10kより短い距離のロードレース大会や駅伝大会において、同じようなレベルのランナーたちと集団で競り合っても、ラスト勝負になる前の中盤で、その集団から離れてしまう。◆2).気温や湿度が高くなったり、向かい風になったりと、レース当日のコンディションが悪化した場合、高い確率で失速している。◆3).日々のトレーニングやレースにおいて、適切な設定タイムでスタートしても後半に入ると失速するパターンが多く、最後まで目標のペースや本数を維持できない。

いかがでしょうか?上記の内、ひとつでも引っかかる人は、スタミナが不足している可能性が高いと言えます。特に、3の最後まで目標のペースを維持できない人は要注意です。また、上記に共通していることは、スピード養成を目的に適切な設定タイムにしているにも関わらず、ラストまでそのスピードを維持できない点です。

これについては極めて重要で、このようなランナーの場合、単に設定タイムや本数を調整したとしても、上記のような失速パターンになる可能性が高く、スピードに対する苦手意識が強く残ります。

次回は、その対策も含めて更に考えていきます。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・12

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【ロンドンパラリンピックへの道・12】いよいよロンドンオリンピック開幕が迫ってきました。もちろん、オリンピックの後はパラリンピックです。パラリンピック日本代表選手たちもこれから最後の調整段階に入っていきます。

先日の7月14日(土)から7月22日(日)の日程で、北海道深川市においてロンドンパラリンピック陸上競技に出場する日本代表合宿がおこなわれています。選手はもちろん、スタッフたちもそれぞれのスケジュールを調整しながらこの合宿に参加しています。

視覚障害の長距離マラソン代表選手の3選手は、14日から2泊3日の日程で参加し、トラック種目に出場する弱視の堀越選手については、最終日の22日まで頑張ります。

さて、ここで陸上競技日本代表選手の障害クラス別の人数を大まかに紹介しておきます。はじめに、上記合宿現在の陸上競技日本代表人数は合計36名。その内、車イス選手が18名、立位選手が18名となっており、その18名の中で視覚障害選手は6名です。

更に、視覚障害選手6名の内、2名が女子選手で、残りの4名は長距離マラソン選手です。したがって、この6名以外で陸上競技日本代表に選考された視覚障害選手はいません。

実は、立位の視覚障害クラスや切断クラスの記録は年々レベルアップしており、どの種目も健常者の記録と遜色なく、かなりのレベルに到達しております。そのため、オリンピック同様、立位選手がトラック種目でのパラリンピック出場は極めて難しい状況になりつつあります。

また、視覚障害クラスの全盲選手につていは、伴走者をはじめ日々のトレーニングをサポートしてくれる協力者が必要不可欠であり、その人材を確保できるか否かが最初に高いハードルになっています。

今回、日本代表選手に選考された全盲クラスの高橋選手と和田選手についても、「日々の伴走者をどのように確保するか?」を、常に悩みながらのトレーニングとなっています。至極当然のことながら選手にとっては相当なストレスであり、選手生命に直結する重要な問題でもあります。

特に、全盲の和田選手は、1500mにもエントリーしております。和田選手のベスト記録は、「4分19秒」ですが、4分10秒前後の記録も狙えるレベルにまで到達しています。ところが、このレベルの選手を伴走するには、1500mで3分台相当の走力が求められてきます。ご存知のとおり、ランニングブームの到来でランナー人口は爆発的に増加していますが、1500mを3分台で走れる市民ランナーは全国的に見てもほぼ皆無と言ってよいでしょう。

このように、パラリンピックに出場する視覚障害選手の走力は確実に上がっていますが、それを本当にサポートできる環境は不十分と言うのが現状です。

しかし、パラリンピックに出場することで、それぞれの選手にとっては、障害者スポーツを世間に知ってもらう一番の舞台であることに違いありません。そして何より、パラリンピックの舞台で選手自身が最高のパフォーマンスを発揮することが、今後のトレーニング環境改善や次世代育成へとつながっていくのです。

つづく。

期分け・46

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今回も前回の続きですが、少し脱線した話しをしていきます…。

何度も話していますが、マラソンを攻略していく方法や考え方はたくさんあり、どれが正解とか間違っているとは簡単に言えません。むしろ、目指している記録や各選手の走力によって様々な攻略方法があって当然です。

ところが2000年以降、アフリカ勢の台頭により5000m以上の長距離種目は驚異的な記録に飛躍していきます。そして、その波はマラソンにも押し寄せ、もはや2時間の壁も夢ではなくなりつつあります。

かつて、2000年以前は「短距離は素質が全てであり、長距離は努力である」と、聞かされることが多かったと感じます。しかし、2000年以降、むしろ長距離の方が素質的な部分に影響されているのではと強く感じます。そして同時に、長距離種目でも盛んにスピードを重視する傾向が強くなり、20代前半からマラソンに挑戦する選手は少なくなりました。

ところが、2000年以降、短い距離から徐々に長い距離へ移行し、マラソンランナーとして活躍したランナーは、国内では逆にそれほど多くありあせん。男子選手では高岡選手、女子選手では弘山選手と、この2選手以外で目立った実績を残した選手は直ぐに思い浮かびません。※一発屋ではなく、安定した記録を残した選手として。

さて、高岡選手と弘山選手に共通している点は、20代はトラック種目で日本記録を連発し、少しずつ距離をのばしてマラソンランナーに成長していった点です。2人とも選手生命が長く、毎年安定したパフォーマンスを残していました。しかし、2人ともマラソンではオリンピックに出場することはできませんでした。

何度も言いますが、これが絶対と言うマラソンの攻略方法はありません。しかし、短い距離でスピードを磨き、そこから徐々に距離をのばしていってマラソンランナーとして成長していく方法は、とても理にかなっており理想的です。ところが一方で、とても長い年月と手間がかかり、多くの選手や指導者にとっては単なる夢を語っているだけで、あてのない目標にむかっている現実逃避のようにも感じます。

様々なトレーニング方法や考え方が確立してきた現在ですが、今一度、歴史をひもとき、1990年代まで主流だったトラックとマラソンを年間の中で同時に目指していく流れを見直してみることも必要な時代なのかもしれません…。

つづく。

第29回富里スイカロードレース大会

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6月24日、千葉県富里市において「第29回富里スイカロードレース大会」が、開催されました。この大会は、富里市の名産であるスイカを給水にするユニークなアイディアで、1万人以上のランナーが参加する大きな大会となりました。

また、この時期は気温や湿度も一気に高くなりますが、安全面も考慮してかメイン種目は10kまでとしてあるのも特徴です。同時にマラソンブームが高まり、ハーフマラソンをメインにする大会が増えている中、10kまでの距離で1万人以上のランナーが参加する大会は国内屈指ではないでしょうか。

さて、私がコーチする選手(市民ランナー)たちも毎年参加しておりますが、今年は参加申込が抽選となったため、涙をのんだ選手もいました。そんな中、なぜか、私の女子選手はほぼ全員が抽選に当たっていました(笑)。

このブログでも記載しておりますが、この時期は「スピード養成期」と位置付け、積極的にトラックや10k以下の短い距離のロードレースを走る期です。もちろん、私がコーチする選手(市民ランナー)たちもこの流れに沿って日々のトレーニングに励んでおります。

今回の富里スイカロードレース大会は、スピード養成期の後半にあたり、積極的に短い距離を走ってきたこれまでの成果を見極める意味でも重要視していました。

結果は下記のとおり、参加した選手全員がほぼ予定どおりの内容でした。また、ロンドンパラリンピック代表候補選手である弱視の岡村選手も40歳以上男子10kの部で大会新をマークし、断トツの優勝でした。

◆一般女子10kの部:優勝/H・Y選手/36分23秒(大会新)、2位/M・S選手/38分16秒、3位/M・S選手/38分56秒、5位/A・K選手/39分14秒、6位/M・K選手/39分33秒。◆40歳以上女子10kの部:優勝/M・Y選手/38分10秒(大会新)、2位/A・K選手/39分32秒。

この大会は毎年、気温や湿度が高くなるのも特徴で、今回もかなり厳しいコンディションとなりました。実は、スピード養成期と言って、インターバル系のトレーニングばかりでは、逆に思うような成果はでません。

それは、今回のような過酷なコンディション下では、スピードと同様にスタミナも要求されるからです。そのため、スピード養成期のトレーニングにおいても、ある程度の距離走やペース走を取り入れておかないと、実はスピードも効率よくアップしていかないのです。※この点の詳細については、あらためて、このブログにもアップしていく予定です。

今回、この点のバランスを見極めることができたことは、大きな収穫でした。そして、秋からのマラソンシーズンに向け、これから本格的な走り込みに入っていけそうです。

期分け・45

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マラソンの設定ペースを10kの持久係数から導いたにも関わらず、30k以降失速してしまうケースについてです。もちろん、単にスタミナ不足と言ってしまえばそれまでですが・・・。

実は、ここで取り上げている10kの記録についてですが、その記録を狙うためのトレーニング方法やその記録のとらえ方として大きく2つあります。◆その1).トラックや駅伝を年間の目標とし、10kの記録更新を最大の目標にスピード系のトレーニングを軸にしている。◆その2).マラソンを最大の目標に年間を期分けし、マラソンの記録更新を目標に、10kはそのためのスピードトレーニングと位置付けている。

至極当然のことですが、マラソンをメインにしているランナーのトレーニング方法は「その2」となります。すなわち、年間を期分けする際、マラソンを走るための10kと位置付けておかないと、持久係数がうまくあてはまらなくなるのです。※このブログの「期分け」シリーズです。

少し古い話になりますが、1990年代までのマラソンランナーの多くは、「その2」のトレーニングで確実に成果を上げてきたと感じます。そして、その代表的な選手として、1980年代のマラソン界を席巻していた瀬古利彦選手や中山竹通選手です。

2人に共通していたのは、春から夏にかけては、海外を転戦しながら積極的にトラックを走り、秋から冬は国内のマラソンを走るスタイルを貫いていた点です。※2人とも当時の1万mとマラソンで日本記録を樹立し、専門種目はマラソンと発言していた。

ここで重要なことは、毎年少しずつ距離をのばしてマラソンに到達したのではなく、年間をトラックシーズンとマラソンシーズンに期分けし、それを毎年繰り返しながらマラソンを極めていった点です。これを年間の流れにすると下記のとおりになります。

◆10kの記録を更新する(スピードアップ)→ ◆マラソンのペースが楽に感じる(以前より速いペースにも対応できる)→ ◆マラソンの記録を更新する(スタミナアップ)→ ◆10kの距離が短く感じる(スタートから全力で走っても最後までつぶれない)→ ◆10kの記録を更新する(スピードアップ)・・・。

このように、ある年齢まではトラックを軸にスピードを追及し、それからマラソンに移行する流れではありません。1年間を大きくトラックでスピードを高める時期と、マラソンでスタミナを高める時期とに期分けし、それを交互に繰り返しながらスピードもスタミナも少しずつスパイラルアップしていく流れです。

つづく。

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