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夏を走る Archive

期分け・46

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今回も前回の続きですが、少し脱線した話しをしていきます…。

何度も話していますが、マラソンを攻略していく方法や考え方はたくさんあり、どれが正解とか間違っているとは簡単に言えません。むしろ、目指している記録や各選手の走力によって様々な攻略方法があって当然です。

ところが2000年以降、アフリカ勢の台頭により5000m以上の長距離種目は驚異的な記録に飛躍していきます。そして、その波はマラソンにも押し寄せ、もはや2時間の壁も夢ではなくなりつつあります。

かつて、2000年以前は「短距離は素質が全てであり、長距離は努力である」と、聞かされることが多かったと感じます。しかし、2000年以降、むしろ長距離の方が素質的な部分に影響されているのではと強く感じます。そして同時に、長距離種目でも盛んにスピードを重視する傾向が強くなり、20代前半からマラソンに挑戦する選手は少なくなりました。

ところが、2000年以降、短い距離から徐々に長い距離へ移行し、マラソンランナーとして活躍したランナーは、国内では逆にそれほど多くありあせん。男子選手では高岡選手、女子選手では弘山選手と、この2選手以外で目立った実績を残した選手は直ぐに思い浮かびません。※一発屋ではなく、安定した記録を残した選手として。

さて、高岡選手と弘山選手に共通している点は、20代はトラック種目で日本記録を連発し、少しずつ距離をのばしてマラソンランナーに成長していった点です。2人とも選手生命が長く、毎年安定したパフォーマンスを残していました。しかし、2人ともマラソンではオリンピックに出場することはできませんでした。

何度も言いますが、これが絶対と言うマラソンの攻略方法はありません。しかし、短い距離でスピードを磨き、そこから徐々に距離をのばしていってマラソンランナーとして成長していく方法は、とても理にかなっており理想的です。ところが一方で、とても長い年月と手間がかかり、多くの選手や指導者にとっては単なる夢を語っているだけで、あてのない目標にむかっている現実逃避のようにも感じます。

様々なトレーニング方法や考え方が確立してきた現在ですが、今一度、歴史をひもとき、1990年代まで主流だったトラックとマラソンを年間の中で同時に目指していく流れを見直してみることも必要な時代なのかもしれません…。

つづく。

期分け・19

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今回は、「ゆっくり長く」の「長く」を考えます。

実は、この「長く」は各自の走歴や体力、目標としているマラソンのタイム等によってかなりのバラツキがでる部分です。具体的には初心者の場合、「まずは30分以上走ってみよう」となりますが、マラソンの完走が目標なら「60分以上走り続ける」ことが最低限の目安とも言われています。

同様に、ある程度の走力や体力が身に付き、マラソンも何度か経験してより高い記録を目標にしてくると、1回で走る時間を更に増やしていく必要がでてきます。しかし、この「長く」のはっきりとした定義はなく、今言われている時間の多くは、これまで多くのマラソンランナーが試行錯誤してきた経験値が支配的と感じます。

もちろん、今回の「ゆっくり長く」だけでなく、多くのマラソントレーニングは長い歴史の中で、多くのマラソンランナーが試行錯誤してきた経験や自らの身体を駆使しながら新しいトレーニング方法に挑戦して後世に残してきたものです。そして、それらのトレーニング方法を裏付けるために運動生理学の研究等が・・・。

それでは話しを「長く」に戻し、具体的な時間を考えると、私の経験も含めて「2時間」あたりがひとつの目安となってきます。実は、各種国際マラソンに出場するエリートランナーたちが「30kの壁」とか「35kの壁」と言った表現をします。また、この距離を時間に換算すると、スタートしておよそ「2時間」に相当します。※例として2時間は、1kを4分00秒ペースで走ると30k地点となり、3分30秒ペースで走ると35k前後となります。

このように1年間365日すべてをマラソントレーニングに当てているようなエリートランナーでもスタミナが枯渇してくるひとつの目安が、2時間となるケースが多いと感じます。余談ですが、世界の男子マラソンは2時間の壁にかなり近づいてきたので、「スタミナ切れをおこす前にゴールできる?」。もちろん、今の常識ではあり得ない発想ですが、今後はそんな研究をする人も出てくるかもしれません・・・。

さて、皆さんの「長い」とは、どの程度でしょうか?

ゆっくり長く走ろうと、スタートしたところ90分をこえるあたりからスタミナが枯渇し、2時間前後で動けなくなった経験はないでしょうか?

また、2時間が基礎体力を養成するのに適切な時間か否かについては、様々な考えもありますが、次回はその2時間についてもう少し考えていきます。

つづく。

期分け・18

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今回から「ゆっくり長く走る」について考えていきます。

はじめに、「ゆっくり」とは、どの程度のスピードなのでしょうか?

また、「長く」とは、どの程度の時間なのでしょうか?

実は、この2点の明確な定義については、少なくとも私自身はこれまで見たことも聞いたこともありません。したがって、具体的な数値を示し、必ずこのペースでこの時間を走り続けなさいと、言い切ることもできません。

・・・と、最初から無責任な言い方になりましたが、実は速く走るより、ゆっくり長く走る方が難しい面もあります。そのため、マラソンに向いてるかの判断をする材料として、単独でゆっくり長く走れるか否かを判断基準にしている指導者は意外と多く、もちろん私もその点は目安のひとつにしています。

では、話しを元に戻し、「ゆっくり」のペースについてですが、上記したとおり、明確な定義はありません。また、心拍数で管理する方法もありますが、今回は私の経験から数値で表してみます。

◆ゆっくりペースの目安 ≒ マラソンペース×1.5倍以上

具体例として、マラソンをサブスリーで走れるランナーの場合、1kペースは4分15秒になります。そのペースを1.5倍すると6分22秒となり、このペースより遅いペースが「ゆっくり」の目安になります。そして、このペースはサブスリーランナーにとって、仲間と会話をしながら走れるペースとなります。つまり、ゆっくりの目安は、「楽しく会話ができるペース」とも言えます。

更に、もう少し初心者レベルのランナーを例にとり、マラソンのタイムが6時間をこえる場合で考えてみます。この場合、1kのペースは8分30秒前後になります。そして、そのペースを1.5倍すると、12分40秒以上となります・・・。お気付きになったと思いますが、このペースはウォーキングのペースと変わらなくなります。即ち、マラソンのタイムが6時間をこえるようなランナーがゆっくり長く走ることは、長く歩くことと同じであるとも言えます。

このように、各自のゆっくりペースを計算していくと、ランニングペースがウォーキングペースと交錯するランナーもいます。いずれにしろ「ゆっくり」とは「楽しく会話ができるペース」であることを、ひとつの目安にしてほしいと思います。

次回は、「長く」について考えていきます。

つづく。

期分け・17

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今回も「基礎体力養成期(8月~9月上旬)」についてです。

既に大まかな流れについては話していますが、この期は「ゆっくり長く」がキーワードになります。具体的には、距離より時間です。即ち、「何キロ走る」から「何時間(分)走る」へのシフトです。その大きな理由は、気温や湿度が高い中で走り込みを実施する場合、距離を目標に一定のペースを保ちながら走ることが難しいからです。

例として、私がコーチする市民ランナーの中にはサブスリー達成者が多数います。そのランナーたちが30k以上のペース走を実施する場合、設定ペースは1kあたり4分30秒からが標準的な設定ペースと位置付けています。

ところが、この暑い8月にその設定ペースでペース走を実施すると、至極当然のことながら中盤あたりからペースを保つことが難しくなってきます。原因は言うまでもなく、気温と湿度が高いからです。そこで、更に設定ペースを落として走ればと考えます。実際に1kあたり30秒落とし、5分00秒ペースで走ると何とか走り切ることができます。

しかし、ここで新たな問題が出てきます。それは、設定ペースを落とし過ぎることで、11月のマラソンで目標記録にしているペースと大きくかい離することです。具体的には、次の「スピード持久力養成期」に移行した際、狙った設定ペースで30k以上のペース走が難しくなるランナーが・・・。もちろん私の経験上の話しが主なので全てのランナーに当てはまりませんが、設定ペースを落とし過ぎてペース走を実施する場合、自分自身が持っているペース感覚が遅い方へぶれるランナーが意外と多くなるのです。

・・・と、長々と説明してきましたが、暑い中でキッチリと設定ペースを守り、計画どおりの距離を走り込んでいくことはとても難しいのです。そして何より、苦しんだ割には身体に疲労を蓄積させるだけになり、精神的なストレスをためこむ結果にもなります。

このように、8月の暑い中での無理なペース走は個人差もありますが、マイナス面の方が多いのです。

そこでこの基礎体力養成期では、自らを設定ペースや距離のストレスから解放させ、「ゆっくり長く」をモットーに走り込んでいきます。更に、ゆっくり長く走ることは、長距離ランナーに必要不可欠な毛細血管網の発達を促進させます。実は、長距離ランナーの速さや強さを決める要素のひとつが、肺から取り込んだ酸素を身体の隅々まで運ぶ毛細血管網にあります。※専門的な話しは割愛します。

それは、この基礎体力養成期でゆっくり長く走ることが、11月のマラソンに必要不可欠な長距離ランナーとしての身体つくりにつながるのです。

つづく。

期分け・16

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前回は、「第1次走り込み期」を大きく二つに分けました。そして、今回からはその前半にあたる「基礎体力養成期」について考えていきます。

既にこのブログでも何度か夏の走り込みについて考えてきましたが、今回の基礎体力養成期についても大きく変わることはありません。実は、1年で最も暑いこの時期と反対に最も寒い時期のことを陸上競技では鍛錬期とも呼んでいます。即ち、最も暑い8月とその前後の月と、最も寒い2月とその前後の月は自分の種目に必要な基礎体力を養成する期間と、多くの陸上選手は位置付けています。

そしてこの期間は、短距離選手も積極的な走り込みを重ね、同時に筋力をアップさせるようなトレーニングを集中的に実施します。もちろん、同じ走り込みでも長距離選手のような走り込みとは異なりますが・・・。そのため、8月の暑い時期は涼しい場所へ移動し、2月の寒い時期は暖かい場所へと移動しての合宿形式のトレーニングが多くなります。

ところが、マラソンを目指している選手にとって、2月はマラソンやロードレースのシーズンにあたります。そのため、基礎体力を養成できる期間は8月とその前後の月だけとなります。そして、マラソンを目指している選手にとっての基礎体力を養成するトレーニングは、もちろん走り込みが中心となります。

このように、基礎体力養成期にあたる8月とその前後の月は、単に11月のマラソンを目指した走り込みだけでなく、1年間をしっかりと走り切るための土台を構築する最も重要な期間とも言えます。

一方で、7月から8月は1年間で最も気温や湿度が高く、ランニングには最も適さない季節であることも違いありません。そのため、この暑い時期を逆に休養にあてる市民ランナーも多く見受けます。この考え方は、運動生理学的に言えば正しいのかもしれませんが、暑い季節を避けて9月から走り込みを開始した場合、はたして秋や冬のマラソンで狙った結果を残せるのでしょうか?

私の経験上の話しになりますが、答えは「NO」です。その理由はいくつかありますが、最も大きな理由のひとつは暑さを避けた結果、暑さや湿度に対する「暑熱順化」ができていない点です。詳細は割愛しますが、暑い時期にじっくりと汗をかくような走り込みを積み重ねてこなかった結果、9月以降の厳しい残暑で夏バテや脱水症状に・・・。

特に、ここ数年は温暖化の影響で11月のマラソン大会にも関わらず気温が20度をこえるケースも珍しくなくなりました。つまり、夏の暑い時期を休養にあてたランナーは、9月以降の走り込みやレースで残暑による暑さの影響を受け易くなります。

また、走力や出場する大会のレベルは全く違いますが、実業団選手(プロ)や箱根駅伝を目指す学生選手においても、実は同様のことが言えます。つまり、秋や冬の各種大会で不調な選手の原因を突き詰めていくと、その年の夏を計画どおりに走り込めなかったことが大きな要因となっている選手は多いのです。

このように、8月を軸にした基礎体力養成期は秋のマラソンに向け、とても重要な期であると・・・。

つづく。

期分け・15

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いよいよ今年も8月に突入です。そして、第1次マラソン期(11月中旬~12月上旬)に向けた本格的な走り込みをスタートさせる時期になってきました。今回からその第1次走り込み期にあたる8月から10月の走り込みについて考えていきます。

はじめに、期分け的に言えば「第1次走り込み期」となりますが、もう少し細分化して考えた方が理解し易いのと、実行し易くなります。そこで実際に細分化し、次のように分けます。

◆8月~9月上旬:基礎体力養成期。◆9月中旬~10月下旬:スピード持久力養成期。

以上のように大きく二つに分けることで、走り込みの具体的な目的や内容がより明確になります。もちろん毎度のことですが、期分けの呼び方や期分けの月割りや期間等については、各自それぞれのスタイルで全く問題ありません。同時に、トレーニングの流れやパターンについても絶対はありません。これまでの経験や実績のある人は、自分自身が積み重ねてきたデータをより重視していくようにしましょう。

では、続いて細分化したそれぞれの期について簡単な説明をしておきます。

◆基礎体力養成期(8月~9月上旬):ゆっくり長く走ることが基本となります。具体的にはペースを意識せず、走行距離でなく走行時間を目安に走り込んでいきます。もちろん、距離走やペース走を実施しても問題ありませんが、ペースを落としてじっくりと、スタミナをを蓄えていくイメージで走り込んでいくことがひとつのポイントになります。したがって、涼しい高原での開放的な走り込みや、登山(トレイルラン)をうまく活用することは全身持久力を養成するためにも効果的なトレーニングのひとつとなります。

◆スピード持久力養成期(9月中旬~10月下旬):目標とするマラソンの記録を意識したペース走や距離走が中心の走り込みとなります。そのため、距離表示の正確なコースやトラックでのペース走が重要なポイントになります。また、この時期に10kからハーフマラソンのレースをうまく活用することはペース感覚を養成することにもつながり、とても有効的なトレーニングとなります。そして、この期では目標のペースで確実に走り切るためのスピードも要求されてくるので、ひとつひとつのポイント練習(ペース走や距離走)に対する集中力が、とても重要になってきます。

次回からは、基礎体力養成期について考えていきます。

つづく。

猛暑から残暑へ・レース編

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先日の29日(日)は、夏マラソンの代名詞である「北海道マラソン大会」が開催されました。今年の大会も、高温多湿の悪コンディションでの大会となりました。また、同日は福島県で、「伊達ももの里マラソン大会」も開催され、私の選手(市民ランナー)も参戦しましたが、こちらも高温多湿の厳しいコンディションでした。

今更説明するまでもありませんが、長距離走にとって最もパフォーマンスを低下させる要因は、高温多湿です。暑い時期は、軽いジョギングをするだけでもかなりの負担を感じるのに、全力で走るレースでの負担や苦しさは計り知れません。

では、具体的に暑い中でのレースは、秋や冬でのレースと比較すると、どれだけのタイム差があるのでしょうか?

ところが、これについては様々な考え方があり、個人差も大きく一言でまとめることはできません。そこで、29日の「北海道マラソン大会」と「伊達ももの里マラソン大会」に出場した、私の関係する選手(市民ランナー)が残した記録を参考に、今年の1月から3月にマークした記録と対比して考えていきます。

◆北海道マラソン大会).K男子選手/2時間41分46秒(2月マラソン)→2時間55分17秒(▼8%)。T男子選手/2時間45分42秒(2月マラソン)→2時間57分10秒(▼7%)。U女子選手/2時間53分18秒(3月マラソン)→3時間7分3秒(▼8%)。

◆伊達ももの里マラソン大会).T男子選手/33分57秒(1月10k)→36分19秒(▼7%)。Y女子選手/36分23秒(1月10k)→39分22秒(▼8%)。

以上のように偶然かもしれませんが、どの選手(市民ランナー)も7%から8%のマイナスとなっています。実は、北海道マラソンを走った3名については、目標タイムとほぼ同じタイムでゴールしました。また、後半余力があればペースアップするように指示しましたが、目標タイムを落としたにも関わらず、暑さのためそのペースを維持していくことが、精一杯だったようです。

もう少し別の見方をすると、暑い中でのマラソンは、最初から自己記録の更新やそれに近い記録を目指して前半から飛ばすと、後半は大きなリスクを伴う確率が高くなります。そのため、直近の冬や秋に走ったマラソンの記録から更に落とした設定タイムで完走を目指す方が、暑い時期のマラソンは攻略し易くなります。

そして更に、暑い時期のマラソンは、秋から冬のマラソンと決定的に違う点があります。それは、最後の調整方法です。この点については、別の機会に詳しく話しをしますが、秋から冬のマラソンは走り込みを実施しながら途中で、10kからハーフ程度のレースに出場する流れをつくれます。しかし、暑い時期のマラソンは、走り込みの疲労が少しでも残っていると、短い距離のレースでもうまく走りきることはできません。

それは、今回の「伊達ももの里マラソン大会」で10kを走った2名が証明しています。2名とも1週間前の菅平合宿でしっかりと走り込みを実施しており、今大会に向けた調整を実施させませんでした。※ゴール後、二人とも「スタートから全く脚が動かなかった」と、振り返っていました。

このように、暑い時期の各種レースについては、「自己記録を更新する」と言った至極当然の目標を掲げて大会に挑むことは、かなり難しいことになります。そして同時に、大きなリスクが伴うことを覚悟しておく必要もあります。また、レース後のダメージも秋や冬より確実に大きく残り、何となく大会の参加申込をするなら、暑い時期の各種レースに出場する意味や目的を、一度よく吟味することをおすすめします。

猛暑から残暑へ・下

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先日の8月21日(土)から8月23日(月)にかけて、長野県菅平高原で合宿を実施してきました。しかし、標高1500mあたりでのトレーニングにも関わらず、日中の気温は30度以上にもなります。そんな中、今回の目的は、「40k走を実施する」ことでした。

実は前回のブログで、「夏の走り込みの目安は距離より時間」と、話しをしました。そんな話しをしたにも関わらず、「40k走を実施する」とは・・・、とても矛盾していますね。そこで今回は、その点を中心に話しをすすめていきます。

はじめに、私の経験上の話しになりますが、暑い時期でも距離を目安に走れるレベルの人と、時間を目安に走り込んだ方が効率的なレベルの人が、実はいます。まずは、その境目のレベルについて話しをします。

最初に、フルマラソンのベスト記録(その時点の走力)を1k毎のタイムに換算し、そのタイムに1.2をかけ、2割遅いタイムを導きます。そして、そのタイムが「5分00秒」より遅い人は、距離走から時間走に切りかえた方がより効率的となります。具体的には、30k以上の距離走は全て時間走に切りかえて、トータル時間も最大120分から150分以内にします。つまり、5分00秒より遅いペースで走る場合、ある距離に到達するより、時間(120分から150分)の方が先に経過したなら、時間で打ち切るようにします。

では、1.2をかけて5分00秒以内のランナーとは、どんな走力なのでしょうか?

逆の計算をしてみれば直ぐにわかりますが、1kあたり4分10秒から4分15秒のペースでマラソンを走れる走力となります。即ち、フルマラソンで3時間を突破(サブスリー)できる走力が備わっていれば、夏の走り込みでも30k以上の距離走に耐えられるひとつの目安となります。※もちろん個人差もあります。

実際に先日の菅平合宿では、15名の選手(市民ランナー)が気温30度以上の中、30k以上の距離走に挑みました。そして、10名が40k走を設定どおりのタイムで走りきりました。その時の設定タイムを参考までに記載しておきます。

◆Aグループ).フルマラソンで2時間30分以内の走力:1kあたりの設定タイムは、4分5秒~10秒。◆Bグループ).フルマラソンで2時間40分以内の走力:1kあたりの設定タイムは、4分15秒~20秒。◆Cグループ).フルマラソンで2時間50分以内の走力:1kあたりの設定タイムは、4分30秒~35秒。◆Dグループ).フルマラソンで3時間00分以内の走力:1kあたりの設定タイムは、4分50秒~55秒。また、Dチームにはフルマラソンを3時間10分前後で走れる人も2名走りましたが、2名とも30k手前で集団から脱落しました・・・。

ところが、設定どおりのタイムで40kを走りきれた人たちも、最後まで余裕があったわけではありません。つまり、自己ベスト記録より2割も遅い設定タイムで走っているにも関わらず、思ったような余力を残せない状態に、逆に自信を失う人が出てくる可能性もあるのです。

このように暑い時期の走り込みは、単に距離やタイムだけを頼りに、勢いだけで乗り切ることはとても難しく、リスクも伴います。

しかし、何度かこのブログにも記載していますが、マラソン練習に絶対はありません。しかし、最後までゆとりを持って継続できなければ成果もでません。暑い時期の走り込みは、この点を特に意識しながら安全に取り組んでほしいと思います。そして、9月からの本格的なマラソン練習につなげてほしいと・・・。

※参考までに、菅平合宿の40k走では、スポーツドリンクを40リットル、水を40リットル、スポンジ、氷・・・を準備し、約3k毎に補給できる体制でサポートしました。

猛暑から残暑へ・中

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今回から暑い時期のランニング方法について考えていきますが、今年はいまだに猛暑日が続いています。さすがに、その中をまともに走ることは自殺行為です。暑い時期に走り込むことは年間を通じてとても重要ですが、炎天下でのランニングは、内容によっては熱中症や脱水症等の危険にさらされる可能性もあります。特にランニング経験の浅い初心者や暑さに弱いと自覚のある人は、絶対に無理をしないようにしましょう。

では、上記のことを踏まえた上で、暑い時期のランニング方法を考えていきます。

◆1).水分補給とランニングの実施時間

はじめに水分補給についてですが、まずはランニングを開始する前に、コップ一杯程度の水分を補給してから走るようにします。次にランニング中の補給目安ですが、15分から20分程度に1回の補給が良いでしょう。この時の摂取量についても、身体が吸収できる量が決まっているので、コップ一杯程度が大まかな目安となります。そして、補給する水分については、単なる水よりミネラルの入ったスポーツドリンクを2倍程度に薄めたものがおすすめです。それは、発汗が多くなると、汗と一緒に体内のミネラルも大量に排出され、ケイレンをおこす原因にもなるからです。

◆2).ランニングの目安は距離より時間

暑い時期のランニングについては、「何キロ走る」から「何分走る」へと、量の目安をシフトさせます。これについては、例えば走る距離を10kに決めると、一般的にはどんなペースで走るかを考えます。しかし、暑い中では、設定ペースを落としたとしても、そのペースで最後まで余裕を持って走りきることができるのかどうかの判断は、ベテランランナーでも難しいのです。仮に、走りきれたとしても予想以上のダメージに、逆に自信を無くすケースも少なくありません。つまり、距離を目安に走り込みを実施すると、肉体的にも精神的にも大きなダメージを残す可能性が高くなるのです。

そこで、40分間走とか60分間走と言った時間走にシフトします。その時のポイントとして、ペースは全く意識する必要はなく、とにかく余裕を持ってゆっくりじっくりと走ることを意識します。もちろん、途中の給水も立ち止ってゆっくり補給します。また、途中でウォーキングに切り替え、ランニングと交互に実施しても構いません。

ところが、このように説明してもほとんどの人が、効果が無いのではと不安になり・・・、途中からペースをどんどん上げていき・・・、結果的には決めた時間を走りきれない人も意外と多いのです。実は、ペースを落としても速くしても、同じ時間動き続けるのであるなら、同じような効果を期待できます。※専門的な話しは割愛します。

つづく。

猛暑から残暑へ・上

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記録的な猛暑だった夏も、暦の上では既に秋へと移りました。そして、今更ながらその秋のマラソンに向け、夏の走り込みはとても重要であると、皆さんも一度は耳にしたことがあると思います。

と、言いながら現実的には、暑さの中で走ることは簡単なことではありませんね。また、暦の上では秋と言いながらも、厳しい残暑はまだまだ続きそうです。

さて今回は、その暑い中を走る意味について、少し考えてみます。

はじめに、年間トレーニング計画の流れからみた、7月から8月の位置付けについてです。まずは、簡単に1年間の期分けを記載します。◆1).9月から12月は、第一次マラソン期と、それを目指した走り込み期。◆2).12月から3月は、第二次マラソン期と、それを目指した走り込み期。◆3).4月から6月は、5kから10k程度の短い距離のレースを積極的に走る、マラソンに向けたスピード養成期。※期分けの考え方については、狙う大会やその時期等によって異なります。

大雑把に記載すると、以上のようになりますが、7月から8月が抜けています。実は、7月から8月については、1年を通じて気温と湿度が最も高くなり、ランニングには適さない時期となります。そのため、記録を目指すのも一般的にはかなり困難な時期とも言えます。

もちろん、根本的に暑さが苦手な人も多くいます。そんな様々な理由からか、この2ヵ月間に限っては、ランニングの量を減らしたり、休養したりする人が増加します。言い方をかえると、そんな人たちにとっての7月から8月は、休養期とでも言いましょうか。

では、7月から8月を休養にあてた人たちは、9月からスムーズに走り込みを開始できるのでしょうか?また、第一次マラソン期で目標のマラソンを狙い通りに攻略できるのでしょうか?

実は、このあたりの正確(学問的)な話しを、少なくとも私自身は目にしたり、聞いたことはありません。しかし、20年以上も同じようなトレーニングの流れを繰り返していると、経験的なことも蓄積されて、ある程度の傾向は見えてきます。

それは、7月から8月の暑い時期を意味もなく休養にあてたり、練習量を極端に落とした人は、10月から12月のマラソンをうまく攻略できない人が意外と多いことです。そして、その悪い流れは、年が明けた1月から3月のマラソンにまで影響し、1年間を通じて負の連鎖に陥るパターンの人も多く見てきました。

また、逆の見方をするなら、7月から8月の暑い中でのトレーニングは、1年間をフルに安定した走りをしていく上で、とても重要であると・・・。

さて、皆さんはいかがでしょうか?

つづく。

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