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盲人マラソン Archive

絆・8

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【絆・8】先日の5月18日(土)、茨城県笠松運動公園陸上競技場において、第55回東日本実業団陸上競技選手権大会が開催されました。そして、今年も昨年同様、同大会のプログラムに「視覚障害者1500m」を加えていただきました。まずは、ご尽力いただいた関係各位に感謝申し上げます。

今年の出場選手は、昨年のロンドンパラリンピックで銅メダルを獲得した全盲の和田選手を筆頭に4名でしたが、4選手ともかなり調子を上げており、自己記録更新も十分に可能な調子で挑みました。

◆視覚障害者男子1500m決勝:1位/和田伸也(全盲)/4分23秒11。2位/岡村正広(弱視)/4分26秒88。3位/谷口真大(全盲)/4分36秒21。4位/米岡聡(全盲)/5分25秒08。

残念ながらマラソンを狙っている岡村選手を除く全盲の3選手とも、目標タイムに届かない結果となりました。中でも、全盲の和田選手と谷口選手については、7月にフランスで開催されるIPC世界選手権(※)をイメージして挑んだだけに課題が残りました。※5月22日現在、日本代表選手は決定しておりません。

翌日の5月19日(日)は、兵庫県尼崎市において、第57回関西実業団陸上競技選手権大会の5000mが実施されました。同種目には弱視の堀越選手も出場し、ロンドンパラリンピックで自身がマークした日本記録更新を狙いましたが、後半大きく失速し、目標タイムには届かない結果となりました。

特に、ロンドンパラリンピックで好成績と好記録の両方を達成した和田選手と堀越選手については、周囲からの期待も大きかっただけに本人たちも落ち込んでいました。

至極当然のことですが、自分自身を評価してほしいとか、注目されたいと思ったなら、まずは相応の実績を残す必要があります。その逆はありません。昨年のロンドンパラリンピックにおいて、和田選手と堀越選手は素晴らしい結果を残しました。帰国後は、多くの関係者から表彰を受け、周囲から認められる選手へとステップアップしました。

しかし、周囲からの期待が重荷に感じる場面も増えており、記録や結果に対するプレッシャーを感じることが多くなってきたのも事実です。もちろん、ロンドンパラリンピック前もプレッシャーはあったと思いますが、心のどこかで「ダメで元々」と、プレッシャーを感じるより、チャレンジ精神の方が上回っていました。

ところが、最近は本来のチャレンジ精神以上に周囲からの期待(プレッシャー)が強くなり、それが各レースで見受けられるようになってきたのです。具体的には、レース中の「力み」です。特に、トラックレースでは、スタート直後からの「力み」は後半の大きな失速に直結します。

これは、多くの学生選手や実業団選手にも見受けられます。プレッシャーよりチャレンジ精神の方が上回る各種記録会や海外競技会では、常に好記録を残せる選手は多く見受けます。しかし、タイトルのかかった国際大会、国内の選手権大会や駅伝大会のように、プレッシャーの方が強く、結果を求められる大会で自己記録(目標タイム)を更新できる選手は意外と少ないのです。

和田選手、堀越選手ともに、周囲の期待を正面から受け止め、更に狙った大会で結果を残せる強い選手に脱皮するためにも、ここは避けてとおれない壁でもあるのです…。

つづく。

絆・7

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【絆・7】毎年恒例のGWも終わりましたが、計画どおりの走り込みや出場した大会では、目標を達成することはできたでしょうか?

さて、こちらも毎年恒例となりました、日本盲人マラソン協会主催の強化合宿を千葉県富津市において開催しました。今年は、初の女子強化指定選手も参加し、総勢32名と過去最大規模の強化合宿となりました。

はじめに、その強化合宿で実施したトレーニング内容を記載します。

◆5月3日(1日目):午後/ドーピング講習会(JADA)、120分LSD+1k走(全力)。◆5月4日(2日目):早朝/各自フリー、午前/30k走、午後/グループ討議(トレーニング方法等について)、90分LSD+1k走(全力)。◆5月5日(3日目):早朝/各自フリー、午前/400m×20本、午後:解散。

以上のような内容ですが、実施内容については、毎年大きく変わることはありません。淡々と毎年継続している内容です。昨年のロンドンパラリンピックで銅メダルを獲得した全盲の和田選手もこのトレーニング内容で、地道に力を付けてきました。特に、2日目は1日の走行距離だけで、60kを軽くこえる内容です。

今回の合宿では、成長著しい全盲の谷口選手も和田選手と同じグループで、同じ設定タイムで、同じ距離をパーフェクトに実施しました。また、弱視の岡村選手も元気な走りを取り戻し、久々に充実した様子を見ることができました。

一方、初参加の女子選手たちですが、合宿前はトレーニング内容や他選手とのコミュニケーション等に対し、不安を持っている選手もいました。しかし、合宿先の富津に集合し、一緒に切磋琢磨していく中で、表情や走りも自信に満ちた様子に変わっていきました。

今回、参加した女子選手たちの中に、その傾向の強い人もいましたが、一般の市民ランナーの中にも、情報過多になっているランナーは意外と多いと感じます。具体的には、トレーニング方法や食事、更には調整方法等に関する知識は豊富なのですが、自分自身の身体にその知識を落とし込んで、常に的確な設定タイムや距離を導き出すことがうまくできず、故障や怪我を繰り返すパターンに陥っているケースです。

もちろん、理論や知識を学ぶことは大切です。しかし、マラソンを攻略していく上で最も重要な要素は、自分自身が経験したマラソンや日々のトレーニングでの成功体験です。そして、その成功体験に最も近い理論やトレーニング方法を実践している人やチームこそが、実は自分自身に最も適した理論であり、トレーニング方法とも言えるのです。

また、いつの時代も口で言うのは簡単です。特に、マラソンについては、相応の手間と時間が必ず伴います。今回、初参加した女子選手たちも、これまで同様、地道な走り込みを継続していってほしいと、心から願っております。

つづく。

絆・6

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【絆・6】先日の4月21日(日)は、全国各地でマラソン大会等が多く開催されました。特に、障害者陸上に関する大会は、長野マラソン、かすみがうらマラソン、そして、熊本県で開催された「チャレンジ陸上大会2013」と、大きな大会が同日に3つも開催されました。

私自身は例年どおりなら、かすみがうらマラソンに役員として参加しますが、今年は熊本県で開催されたチャレンジ陸上2013へ出向きました。

前日の土曜日から全国的に悪天候が懸念されていましたが、案の定、東日本は厳しいコンディションとなりました。長野マラソンは積雪、かすみがうらマラソンも冷雨と、4月のコンディションとしては最も過酷な状況でした。

一方、熊本県の天候は回復し、朝から絶好のコンディションとなりました。今回、盲人マラソン協会の強化指定選手たちは、かすみがうらマラソンと、この熊本県で開催されたチャレンジ陸上大会2013に分かれました。その熊本には、トラック種目でIPC世界陸上を目指す、全盲の和田、谷口選手と、弱視の堀越選手の3選手が「5000m」に挑みました。

3選手とも好調をキープしており、特にロンドンパラリンピック5000mで銅メダルを獲得した全盲の和田選手は、そのときの日本記録を非公式ながら上回る「15分51秒」を、既にマークしております。3選手とも自己記録更新の期待がかかります。

12時45分、タイムテーブルどおりの時間にスタート。3選手ともそれぞれの目標タイムに沿ったそれぞれの設定タイムを刻んでいきます。ところが、3選手とも動きは悪くありませんが、設定タイムから微妙に遅れていきます。具体的には、1周(400m)毎に1~2秒前後ずつ遅れていく感じです。結局、3選手ともゴールでは、目標タイムに対して20秒~25秒前後遅れのフィニッシュとなりました…。※谷口選手はそれでも自己新記録でした。

3選手ともゴール後は首をかしげており、目標タイムを達成できなかった原因を特定できていない様子でした。もちろん、次の大会に向け、立て直していくしかありません。しかし、障害者陸上で国際公認記録となるIPC公認大会は、国内に4大会しかありません。すなわち、残りの大会はあと「3」です。

一般選手のように、日本陸連公認の各種記録会に出場しながら調子を上げていくことは、ルール上難しい状況です。そのため、常に調子のピークをしっかりと合わせていく「ピーキング」が最重要となります。※日本陸連公認とIPC公認は、原則としてリンクしません。

今回の熊本県で、日本記録も幾つか誕生しましたが、全体的に記録は低調でした。今シーズン最初のトレックレースだったことが、記録低調要因のひとつであったことは誰もが感じるところです。しかし、上記したとおり、「今年度のIPC公認の国内大会は残り3」です。

少ないチャンスで世界へのキップを目指すのが、障害者陸上の宿命でもあります。そのためには、「自己記録更新」を狙える状況を常にキープしておくことが、何より優先されます。

つまり、日々のトレーニングはもちろん、日々の自己管理や生活習慣等々、記録を最優先した生活スタイルにシフトしていく必要があるのです。今後は更に、この点を意識した強化を継続していきます。

つづく。

絆・5

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【絆・5】平成25年度もスタートし、マラソン&駅伝シーズンからトラックシーズンへと、本格的な陸上競技シーズンに突入しました。既に、全国各地で本格的な大会や記録会が始まり、私がコーチする選手たち(市民ランナー)も、果敢にトラックレースへ参戦しております。

さて、今年度はロンドンパラリンピックの翌年と言うこともあり、2016年のパラリンピックに向けた強化体制を再構築していくための大切な1年にもなります。

その第一歩として日本盲人マラソン協会は、今年度から正式に女子マラソンの強化をスタートします。最初の1期生となる女子選手は6名です。もちろん、全員が視覚障害者ですが、弱視から全盲の方までと、カテゴリーは様々です。

ところが、パラリンピック種目に女子マラソンは存在しません。トラックでも長い距離は1500mまでと、マラソンどころか中距離種目もままならない現状です。しかし、彼女たちの中には、既に一般の大阪国際女子マラソンや名古屋ウィメンズマラソン等に出場しているランナーもいます。ある意味、男子選手以上にハイレベルな大会を経験しています。

そんな彼女たちの快走をもっと広く認知していただき、逆に、パラリンピック種目に加えていただけるよう、積極的にアピールしていく必要があります。

4月20日(日)、茨城県で開催される「かすみがうらマラソン」では、初めて「IPC公認女子の部」として6選手全員がスタートラインに立つ予定です。既に何度もこのブログで説明しておりますが、IPC公認になると、ドーピング検査や伴走者に対する厳格なルールが適用されたりと、彼女たちにとってはすべてが初めての経験であり、そのことがストレスになることも多くなります。

この1週間の間でも服用しようとする風邪薬の成分を入念に確認したり、レース中に飲食予定の安全性を確認したりと、慣れない確認作業に苦労しております。しかし、この経験を積み重ねていくことが、世界的にも認知されるマラソンランナーへの道であると、確信しております。

視覚障害者の女性ランナーたちにとって、新たな歴史の第一歩として、おくすることなく果敢に挑戦してほしいと心から願っております。そして、その走りを支えていけるよう、今年度も地道な強化活動を継続していく所存です。

皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

絆・4

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【絆・4】平成24年度最後の盲人マラソン強化合宿を3月2日(土)から1泊2日の日程で実施しました。合宿開催場所は、いつもの千葉県富津市です。今回の強化合宿は、毎年恒例となっている「千葉県民マラソン大会」、10kの部にも出場しました。

そして、今年も大会関係の皆様方のご理解とご尽力により、特別招待選手として出場させていただきました。もちろん選手たちにとっては、マラソンに対するモチベーションを高める絶好の機会となりました。あらためて大会関係の皆様方に対し、厚く御礼申し上げます。

今回の同大会には3名の全盲選手が出場しました。北京パラリンピック日本代表選手の新野正仁選手、加治佐博昭選手と、期待の若手選手である谷口真大選手です。特に、谷口選手については、このブログで何度か紹介した選手でもありますが、今回も「34分46秒」の自己新記録でゴールし、世界へ更に一歩近づきました。

さて、仕事や家庭との両立が原則となる市民ランナーの方々からレース後によく次のような発言を耳にします。「〇〇が無いから走り込めなかった」、「〇〇が忙しかったから走り込めなかった」、「〇〇の予定が急に入ったから走り込めなかった」、等々…。皆さんは、いかがでしょうか?

実は、視覚障害者マラソン選手たちも同じように、「伴走者がいないから走れない」、「誰に伴走をお願いして良いかわからないから走れない」、「伴走者が急にキャンセルしたから走れない」、等々、同じような愚痴を良く耳にします。

谷口選手もかつては全く同じようなことを口にし、自らの行動が伴わない選手のひとりでした。ところが、昨年の2月ごろからロンドンパラリンピックを意識するようになり、谷口選手自身の発言や行動が前向きに変化していきました。

しかし、ロンドンパラリンピック代表には、あと一歩及びませんでしたが、その後も積極的な行動で、トレーニングやトレーニング環境を自ら追い求める姿勢をより強くしていきました。具体的な変化として、合宿やレース後はもちろん、日ごろから伴走者たちに対し、「〇月〇日は伴走をお願いできますか?」、「〇月〇日は練習に伺ってもよろしいですか?」、「〇〇大会で自己記録を狙うので伴走をお願いできますか?」、等々、間髪入れずに積極的な発言と行動で伴走者を確実にゲットし、それに伴って記録もグングンのびてきました。

※谷口選手は今大会の翌週にあたる3月9日(土)には、再び単独上京して我々の業界では有名な熱血伴走者と、マラソン特訓を実施予定です。

物事に対して、「積極的になりなさい」と、誰もが一度は耳にしたことがあり、理解もしています。ところが、それを行動に移すことは意外と難しく、できない理由ばかりを並べてしまうものです。特に、単調で変化の少ないマラソンにおいては、その傾向がより強いと感じます。

かくいう私も発言と行動が伴わない典型的なダメ選手でした。しかし、新年度からは谷口選手のように前向きな発言と行動を意識し、選手強化のお手伝いをしていきます。

引き続き、皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

絆・3

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【絆・3】視覚障害者マラソンの普及と発展に力を注いできた「NPO法人日本盲人マラソン協会(JBMA)」が30周年を迎えることができました。この30年の間、本当にたくさんの方々のご尽力とご支援に支えられてきました。あらためて、心より感謝申し上げます。

当協会は、故杉本博敬初代会長の「情熱と行動力」によって誕生しました。その杉本初代会長は自らも中途失明し、想像を絶する苦労を重ねた方です。しかし、同会長は周りの人々が「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」で、次々と理解者を取り込んで当協会の礎を築きました。

さて、視覚障害者がマラソンを走るには伴走者が必要不可欠であり、その伴走者に対しても称賛の声があがります。もちろん素晴らしいことに違いありませんが、マラソンを走ろうと決意して行動をおこすのは、あくまでも視覚障害者本人です。したがって、視覚障害者本人の情熱と行動力が無いと、マラソンのスタートラインに立つことすらできません。つまり、伴走者は選手(視覚障害者)の情熱と行動力によって、選手(視覚障害者)から伴走されるのです。

1996年のアトランタパラリンピックで日本人初の金メダルを獲得した全盲の柳川春己氏は「金メダルをとる!」と、合う人たちに言い続けました。そして、まさに「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」で、見事に金メダルを獲得しました。

これは、一般のマラソンにも当てはまります。今回の30周年記念大会にゲストランナーとして花を添えていただいた公務員ランナーの川内優希選手も決して恵まれた練習環境ではありません。しかし、実業団ランナー(プロ)たちも「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」で結果を残し、今や日本陸連までも熱い視線を注いでおります。

先日の京都福知山マラソンで、全盲の和田伸也選手が2時間36分32秒のアジア新&日本新をマークしました。上記した柳川氏がアトランタパラリンピックでマークした記録は2時間50分56秒と、当時のアジア新&日本新でした。1996年から記録的には14分弱も進歩したことになります。しかし、柳川氏が残してきた功績には、未だ到達することはできません。

これから世界と勝負していくために必要なことは、トレーニング環境やそれを裏付ける資金等、ハード面の整備は欠かすことができません。しかし、先人たちが身を持って示してきたソフト面にあたる、マラソンに対する「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」を取り戻すことが、実はこれからの時代にも必要不可欠であると感じます。そして今回、30周年の節目をあらたな土台とし、意識改革も含めた新しい歴史を構築していきます。

引き続き、皆様方の絶大なるご理解ご支援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

絆・2

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【絆・2】千葉県富津市富津公園において、日本盲人マラソン協会主催の強化合宿を先日の11月3日(土)から1泊2日の日程で実施しました。今回も現役学生ランナーをはじめ、多くのランナーたちからの力強いサポートを得ることで密度の濃い合宿となりました。あらためて、厚く御礼申し上げます。

さて、今回の合宿からロンドンパラリンピックで4位入賞を果たした弱視の岡村選手も本格復帰し、この合宿から合流しました。岡村選手は、年齢的にはベテランの域に入っていますが、世界と互角に戦うための走力と高いモチベーションを維持しており、4年後のブラジルリオでも十分に戦える選手です。

しかし、ロンドンから帰国後は年齢的なこともあってか、今後のスケジュールについては、名言を避けていました…。そんなこともあり、我々関係者も様々なことを危惧しておりましたが、これからも我々と共に戦っていくことを自ら決断し、再び一緒に世界を目指せることになりました。特に、若手選手諸君にとっては、何物にも代えられない最高の目標となり、チームとしての高いモチベーションも維持していくことができます。

また、合宿後の今月23日は、京都福知山マラソン大会が開催されます。この大会は、盲人マラソン日本選手権も兼ねており、多くの盲人ランナーを輩出してきた伝統ある大会です。もちろん今回も多くの盲人ランナーがエントリーしております。

そして、その中に今回初マラソンとなる全盲の谷口選手も含まれております。谷口選手は、まだ22歳と期待の若手選手のひとりですが、先日開催されたロンドンパラリンピックを目標に1500mでは、参加A標準記録を突破するまでに成長しました。本当にあと一歩のところで日本代表入りを逃しただけに、私自身としても責任を感じているところでした。しかし、その後も変わりなく地道に走り込む姿勢と、絶対に投げ出さない強い意志に、逆に勇気と希望を与えられました。もちろん、ロンドンパラリンピックに出場した先輩ランナーたちへの力強い後押しになったことは間違いありません。

そんな谷口選手が、いよいよマラソンデビューです。このブログにも何度か記載しておりますが、マラソンは理屈抜きで経験から学ぶことが圧倒的に多く、若いときからマラソンを経験していくことは、トラックを走る上でも必ずプラスに働くと確信しております。

同時に、私がイメージしている以上のスピードで進化している谷口選手のマラソンデビューは、ここまで共に切磋琢磨してきたベテラン選手たちへの起爆剤にもなります。今年の京都福知山マラソンはこれまで以上に注目です。

つづく。

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【絆】ロンドンパラリンピックが閉幕し、ちょうど1ヶ月が経ちました。帰国後、各種報告会や慰労会等々、慌ただしかった選手及び関係者の方々も少しは落ち着いてきた時期でしょうか。また、次のパラリンピックであるブラジル・リオに向けた課題や対策についても、より具体的な方針等がそろそろ見えてくる頃でもあります。

さて、先日の10月6日(土)から2泊3日の日程で、千葉県富津市において盲人マラソン強化合宿を実施しました。この合宿は、先日のロンドンパラリンピック強化とは別に、今年度の強化計画に予め組み込んでいたもので、特別な合宿ではありません。しかし、来年には、はやくもIPC世界陸上競技選手権がフランスで開催されます。したがって、今回の合宿はその大会に向けた最初の強化合宿でもあります。

既にご報告したとおり、ロンドンパラリンピックへは、日本盲人マラソン協会から4名の選手が選出され、それぞれが素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれました。そして、今回の合宿には、そのロンドンで戦ってきた全盲の和田選手、弱視の堀越選手の2選手をはじめ、期待の若手選手やパラリンピックを経験したベテラン選手たちと、久々に多彩な顔ぶれがそろいました。同時に、選手を支える伴走者も箱根駅伝を目指す現役学生ランナーにも多数ご協力いただき、量と質ともに充実した合宿でした。

しかし、一方で盲人マラソンと言っても一般ランナーたちのように全国各地に何万人もの視覚障害者ランナーは存在しません。そのため、マラソンでサブスリーレベルの視覚障害者ランナーは、全国的にも今回の合宿に参加した7名のランナーと、あと数名程度と圧倒的に数は少ないのです。したがって、言葉は不適切ですが、選ばれた選手と言うより、数少ないビックリ人間と言った表現が近いかもしれません。

ところが、この4年間で本当にビックリするほど選手たちは成長しました。それは、今回の合宿でも、選手たちの粘り強い走りを目の当たりすることで、その成長を強く感じることができました。また、若い選手と話しをしている中で、マラソンに対するモチベーションが高くなっていることを強く感じることもできました。

と、言いながら来年のIPC世界陸上競技選手権をはじめ、4年後のブラジル・リオに向け、課題はたくさんあります。しかし、少ない人数でもお互いがお互いを意識し、切磋琢磨していくことで、仲間意識や絆はより深まります。そして、その深い絆こそが、選手たちを大きく飛躍させる最大のエネルギーとなり、大きな目標へと向かっていく原動力となるのです。

これから4年後のブラジル・リオを目指していきますが、仮に強化費や環境が大きく改善されたとしても世界を目指せる視覚障害者ランナーが劇的に増加することは簡単なことではないと感じます。しかし、これまで以上に選手間や伴走者との絆が深まるなら、世界との距離は更に縮まっていくと確信しております。

今後とも皆様方の絶大なるご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

ロンドンパラリンピック・4

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【ロンドンパラリンピック・4】最大の目標としてきたマラソンも無事に終了しました。3人の選手と5人の伴走者で世界に挑んだ結果は次のとおりです。

◆岡村正広(T12・弱視クラス):4位入賞/2時間28分51秒(日本新記録)。◆和田伸也(T11・全盲クラス):5位入賞/2時間40分8秒、伴走者:志田淳、中田崇志。◆高橋勇市(T11・全盲クラス):7位入賞/2時間42分9秒、伴走者:大崎栄、北村拓也、早田俊幸。

目標のメダル獲得には、あと一歩でしたが、全員が入賞を果たすことができました。

今回のマラソンコースは小刻みなアップダウンとコーナーの多さに当初から記録より勝負重視のレースになると予測していました。そのため各選手の設定タイムは下記のとおりとし、それぞれのラップタイムをマイル換算したラップ表を作成しました。

◆岡村正広:2時間24分52秒~2時間27分58秒。◆和田伸也:2時間39分38秒~2時間42分27秒。◆高橋勇市:2時間42分27秒~2時間45分16秒。

9月9日8時00分、T12クラス(視覚障害)とT46クラス(腕の障害)が一緒にスタート!

スタート直後から視覚障害クラスの5選手がトップ集団を形成し、岡村選手の設定どおりのペースでレースは展開されました。また、和田選手と高橋選手も設定タイムどおりの走りで前半を自重し、11番から13番あたりをキープしながらレースを進めました。

レースは後半に入り、先頭集団に動きが出てきます。優勝したスペインの選手がペースアップすると、3人の先頭集団から岡村選手が脱落していきます。しかし、このときの30k通過ラップは、1時間43分2秒と設定した上限タイムとわずか2秒の相違しかなく、あまり余裕がありません。その後、ビルの影から日向に変化する個所で恐れていた転倒もあり、メダルへの可能性が遠のいていく展開となりました。しかし、最後まで持ち前の粘り強さを十分に発揮し、堂々の4位でゴール!

一方、和田選手と高橋選手は淡々と設定タイムを刻み後半に突入していくと、8位集団を猛追です。圧巻は、40k過ぎからの驚異的なスパートで順位をアップし、和田選手が5位、高橋選手が7位と、共に入賞を果たしました。参考までに和田選手と高橋選手は、T11クラス(全盲)ならワンツーフィニッシュでした。

4年前の北京パラリンピックで、視覚障害マラソンは障害クラスの統廃合により、T12クラス(弱視)に統合されました。その結果、メダルどころか入賞もできない厳しい成績での帰国となりました。

この4年間、その時の悔しさを糧に地道な強化を積み重ねてきました。今回のロンドンパラリンピックでは、メダル獲得にはなりませんでしたが、全員が入賞する快挙を果たせました。また、5位に入った全盲の和田選手は、トラックの5000mで日本人初となる銅メダルを獲得するなど、これまでの強化の方法や方向性が間違っていないことを証明することもできました。

しかし、世界との距離はまだあり、4年後のブラジルに向け、引き続き地道な強化で課題を克服していきます。

最後になりましたが、ここまで様々な方から多くのご支援を賜りました。本当にありがとうございました。4年後に向け、更に突き進んでいきます!

おわり。

ロンドンパラリンピック・3

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【ロンドンパラリンピック・3】多くの勇気と感動を与えてくれたロンドンパラリンピックも終盤です。ここまで多くの世界記録やパラリンピック記録誕生の瞬間を目にし、世界の驚異的なレベルアップに驚くばかりです。一方、日本チームの苦戦を目の当たりにすることは逆に多く、既に多くのメディアで報道されているとおりです。

しかし、それぞれの敗因を分析すると、単なる強化の遅れとも言えない側面も見えてきます。特に陸上競技の視覚障害クラス(T11~T12&F11~F13)や手足障害クラス(T42~T46)では、多くの種目が日本の一般選手と同等以上のレベルに到達しています。

つまり、単なる強化費や強化方法より、選手(タレント)の発掘方法をどのように構築していくかは、これからの最重要課題ではと強く感じます。特に今大会は、ホスト国であるイギリス、前回の開催国の中国、そして、次回開催のブラジルの圧倒的な強さばかり目についたのと、どの種目もそつなく多くの選手をエントリーしており、その選手層の厚さにただ単に驚くばかりでした。

さて、そんな中、立位長距離マラソンチームの選手たちは、ここまで目標どおりの力を出し切れています。

◆結果1).T11(全盲)クラス1500m:和田伸也(伴走者・中田崇志)/予選落ち(あと1人で決勝)/4分18秒71(日本新記録)。◆結果2).T12(弱視)クラス5000m:堀越信司/5位入賞/14分48秒89(日本新記録)、岡村正広/8位入賞/15分45秒98。◆結果3).T11(全盲)クラス5000m:和田伸也(伴走者・中田崇志)/銅メダル/15分55秒23(日本新記録)。

4年前の北京パラリンピックの惨敗を糧に地道な強化を積み重ねてきた選手の努力と、それを支えてきた多くの伴走者たちの成果であります。特に、どこまでの記録を狙え、どこまでの順位を狙えるかを選手と伴走者が共によく分析していました。そして、単なる憧れや理想論に陥らないよう、常に現状を直視し、強化の方向性がブレなかった点は大きかったと感じます…。

残すは、最大の目標であるマラソンです。

この4年間の集大成をしっかりと出し切れるよう、最後まで集中します。

皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

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