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マラソン Archive

春を走る・7

【春を走る・7】4月に入ってから気温の変動が大きくなり、高い日は20度を優に超える日も出てきました。さらに、体も暑さに慣れていないため、特にランニングをするには厳しい季節です。

4月10日の富津練習会は10kトライアルを実施しましたが、参加者は例外なく暑さに苦しんでいました。また、同日は都内の10kレースに参加した仲間も多数いましたが、やはり暑さに苦しみタイムものびませんでした。

特に、暑い中でのレースは、ほとんどの方がベストパフォーマンスを発揮することは難しいのが現実です。もちろん、それは仕方のないことでもあり、いたずらに落ち込むこともないと考えます。

しかし、中には「暑さを言い訳にしたくない」と、失敗の原因を自分自身のメンタル面に持っていく人もいます。それはそれで、悪いことではありません。自分自身がそのように自覚しているなら間違いないことでしょう。

ところが、そのようなコメントをする人の中には、その後の練習で何とか粘り強さを身に付けようと頑張ることがあります。具体例として、明らかに気温が高いにも関わらず、無理な設定タイムで練習を開始し、途中から失速しても、ふらふらになっても、最後までやり遂げようと……。

そのような取り組みかたは、冬の時期ならともかく、これからの季節はとても危険であり、何よりも実施した本人が苦しくて辛いだけで、効果的とはいえません。つまり、暑さの中での練習やレースは、自分自身を冷静にコントロールできるか否かも大切です。

また、暑い中での練習は設定タイムを落とし、レースでは目標タイムを落とし、自分自身にプレッシャーをかけないことも重要で、そうすべきだと思います。

かなり昔の話ですが、「気温がある一定以上になった場合は、そのマラソンを走らない」と、スポンサーなどとの契約の中に、その一文を記載していた海外のトップ選手もいたようです。そのくらい暑い中で走ることは、ダメージが大きいということでしょう。

あらためて、これからランニングには厳しい季節に突入していきますが、決して無理をすることなく、「今日は走らない」と、いった選択も常に考えながらランニングと向き合ってほしいと思います。

春を走る・6

【春を走る・6】今年度の第1回強化合宿を千葉県富津市富津公園において実施しました。今合宿の目的は開催まであと2週間を切った「かすみがうらマラソン」へ向けたものになりました。

すでに何度も話してきましたが、マラソンの調整方法は様々で正解もありません。しかし、偉大な先人たちが残してきた実績(経験と科学的なデータに裏打ちされた実績)から個々の調整方法に大きな違いは少なくなってきたと思います。

特に、情報伝達が早くなった昨今は、実業団選手が実践しているトレーニングを市民ランナーの方がアレンジして実施しているケースも珍しくありません。もちろん、その記録や成績を保証するものではありませんが……。

一方で、高性能な腕時計などが登場し、心拍数や走行距離など様々なデータを確認しながら走ることも可能になりました。しかし、それを目安にレースを戦っているトップ選手はほとんど見かけません。不思議なことに……。

同様に、優勝インタビューで「30kの心拍数が170以下だったので勝てると思った」と振り返るトップ選手はほぼいません。逆に「30kから身体が楽になってきたので、勝負できると思った」と主観的なコメントが支配的です。同じく、調整の期間に入ってくると、主観的に自身の調子や状態をつかめている選手は本番のレースでも外すことが少ないと感じます(私の経験上)。

例として、2週間前の練習で「身体は重たい感じだが、スピードは出せる」「最初は無理やり動かす感じだが、後半になるほど楽になっていく」など、このようなコメントをする選手は「順調に走り込めたな」と見て取れます。

今回の強化合宿においても、何名かの選手からは、上記したようなコメントを聞くことができました。もちろん、本番のレースまで2週間あるので、最後の調整次第で良くも悪くも大きく変わります。いわゆる「危険なゾーン」に入ってきたともいえます。

昨年の東京パラ2週間前もこのような状態に仕上げることができ、逆にそこから本番までは徹底的に管理しました。もちろん、調子のピークを合わせるためでしたが……。今回はそのようなことはできないので、個々の裁量に委ねるしかありません。

しかし、これまでの失敗と成功から学んだ経験を活かしながら調子のピークを合わせてくれることでしょう。

春を走る・5

【春を走る・5】新年度が今日からスタートします。生活環境などが大きく変わった方も多いことでしょう。月並みですが、まずは新しい環境に慣れるまでは、無理をしないことが第一でしょうか。

そして、これも毎年のことですが、これから気温が高くなっていくので、その対策も不可欠になっていきます(引き続き花粉症対策も)。特に、「寒いから暑い」へ季節が移るため、いわゆる暑熱順化なども考えていく時期に入っていきます。

専門的な話しは割愛しますが、その対策を簡単にいうと「暑さに慣れるには暑い中で運動をする」ことになります。もちろん、何事も一気に実行すると危険が伴うので、少しずつ体を暑さに慣らしていくのはいうまでもありません。

具体的な方法のひとつとして、ゆっくり長く走るのが良いといわれています。ある程度の走歴がある方なら週末の午前中に90分から120分程度の「LSD」が効果的です。しかし、逆に熱中症に陥ってしまっては本末転倒なので、水分やミネラルの補給は忘れないようにすることは必須です。

4月は新しい環境に慣れるのと、暑さに慣れるのと、たいへんな時期になりますが、何事も出足がうまくいけば、その後もうまく回りだします。まずは、無理のない範囲で取り組んでほしいと思います。

あらためて、新年度もよろしくお願い申し上げます。

春を走る・4

【春を走る・4】今年度最後の強化合宿が終わりましたが、すぐに新年度がスタートします。また、4月は「かすみがうらマラソン」が実施されます。同大会は、ブラインドマラソン部門もあり、その中には「IPC公認の部」もあるので、今回の強化合宿に参加した選手たちも出場します。

特に、男子の弱視選手で単独走が可能な3選手が、揃ってマラソンを走ります。3選手とも調子は上向きなので、期待の持てるレースになりそうです。まずは、しっかりと最後の調整を実施してほしいところです。

さて、その「かすみがらうらマラソン」は、ウェーブスタートを採用しています。知っている方も多いと思いますが、いわゆる時差スタート方式です。具体的には、参加人数が数万人規模になると、何よりもスタートが大混雑します。特に、後方からスタートすると、スタート地点に到達するまでに相当なロスタイムが発生します。

また、マラソンは出走したどの選手も必ず同じ地点からスタートし、同じゴール地点を通過する競技なので、出走人数が増えれば増えるほど、スタート地点までのロスタイムが大きくなり混雑します。同時に、それを回避することもかなり難しい競技特性があるのです。

しかし、その問題を少しでも解消する効果的な方法のひとつが、ある一定間隔でグループごとにスタートさせていくウェーブスタートになります。かすみがうらマラソンの場合、マラソンは5分間隔で4グループが順にスタートしていきます。よく考えたとても良い方法だと、個人的にも思います。

一方、ゴールの着順もそのグループの中で決まれば良いのですが、総合順位については、それら複数のグループをまたいだ順位になるケースが一般的なので、少し複雑になります。かつて、ネットタイムとグロスタイムについて記載したときと同じように、見た目の順位と記録上の順位が一致しなくなります。

具体例として、最初のグループからスタートし、トップでゴールした選手よりも3グループからスタートし、見た目は50番目でゴールした選手の方がタイムが良かったということが起り得るのです。つまり、最後にスタートしたグループの選手たちがゴールするまでは、総合順位が決まらないことになります。

かくいう私自身は、上記したようなケースに出くわしたことはありませんが、他の大会においては、順位をめぐってトラブルになったケースもあるようです。皮肉なことですが、スタートの混雑を避けようとして、ゴールが複雑になってしまう。永遠の課題なのでしょうか……。

春を走る・3

【春を走る・3】今年度のマラソンシーズンを締めくくる「名古屋ウィメンズマラソン」が、13日に開催されました。東京マラソンのキプチョゲ選手同様、ケニアの チェプンゲティッチ選手 が圧勝しました。

ケニアやエチオピアをはじめとするアフリカ選手が長距離・マラソンで圧倒的な記録に到達するようになって久しいですが、あらためてその速さに驚きです。また、ここまで圧倒的な速さを見せつけられると、「長距離は努力」ではなく、「長距離は素質」だと、言えるでしょうか。

かつて、「日本人が100mで10秒の壁を突破するのは難しい」と言われていましたが、選手や関係者の「努力」で、その壁を突破しました。さらに、400mリレーにおいては、「技術」を磨いて、ついにオリンピックでメダルを獲得しました。

一方、日本の長距離・マラソンは、1990年前後までは世界のトップ集団に位置していましたが、上記したようにアフリカ選手たちの台頭で、その記録の差は歴然となりました。もちろん、日本人選手たちの記録ものびていますが……。

さて、今回の名古屋ウィメンズマラソンはペースメーカーも女子選手が担ったので、正真正銘の女子マラソンとして開催されました。そして、同大会には富津合同練習会で切磋琢磨してきた仲間たちも多数出場しました。しかし、当日の気温は20度以上になり、3時間30分以上のタイムを目標にスタートした方々には厳しいコンディションだったと思います。

また、コロナ禍の影響で久々にマラソンを走る方も多かったですが、「ここまでよくモチベーションをキープしてきた」と、感無量で応援しました。ゴールの名古屋ドームでは、今回も「泣いたり、笑ったり」と、数々のドラマを拝見することができました。

満足できる記録を残せなかった方も多かったかもしれませんが、参加した全てのランナーが大会開催に花を添え、多くの方に感動と勇気を与えました。最後になりましたが、大会開催にご尽力いただいた関係者の皆様に御礼申し上げます。

春を走る・1

【春を走る・1】第10回大阪マラソン・第77回びわ湖毎日マラソン統合大会が大阪で開催されました。しかし、諸事情により、実際はびわ湖毎日マラソン大会をそのまま大阪に移したような大会となりました。さらに、同大会のコースは折り返し地点が多く、記録を狙う視点からは難コースといわれていました。また、当日の天候は晴れて、気温がやや高くなる予報でしたが、9時10分のスタートだったこともあり、沿道で応援していた感覚だと、その影響はほぼなかったと感じました。

スタート後、何ヵ所か先回りし、直接応援もしましたが、先頭集団はまるで「練習会の距離走」を実施しているような感じで、たんたんと走っていました。実は、先日の別大マラソンも同様でしたが、ペースメーカーの役を担っている選手たちのペースが安定しているので、その集団で走っている選手たちは、30k前後あたりまではストレスを感じないからでしょうか。

マラソンの難しいところは、後半のスタミナ面など様々ですが、終盤までいかにストレスを感じない様にし、その力を温存できるか否かだと思います。いわゆるグリコーゲン(糖)を後半までいかにして温存できるか否か……。

さらに、マラソンはレース中、無我夢中になる局面がほとんどなく、常に頭が働いています(全力ではなく常に余力がある状態)。そのため、集団に入っていても周りの動き(かけ引き)など、目から入る情報がそのままストレスになり、頭で余計なことを考えやすくなります。したがって、そのことが多少なりともエネルギーロスにつながっていくと思われます。

しかし、最近のマラソンは、少なくとも30k前後までは一定のペースでレースが進むので、かけ引きなどを考えたり、周りの動きを意識する必要が少なくなりました。そのため、多くの選手がエネルギーロスを最小限に抑え、終盤まで集団に残れるようになったと感じます。特に、初マラソンの選手は、そもそも余計なことを考えず、無に近い状態で挑戦している点が、好記録にもつながっているのでしょう。

また、至極当然のことですが、「無欲でつかんだ結果」と「狙ってつかんだ結果」とでは、結果の意味がかなり異なります。特に、好結果の後ほど、周囲の評価や期待などを受け易く、激しく心が揺さぶられることにもなり、必ず真価を問われることになります。

もちろん、マラソンでの好記録は、個々のトレーニング量と質の向上が最大の要因になりますが、上記したとおり、30k前後までのエネルギーロスが少なくなっている点は大きいと感じます。しかし、日本代表選考会や国際大会などの場合、周囲の期待やプレッシャーを背負わされて走るため、選手の状況(選手から見える景色)が一変します。まさに真価を問われる場面になるのでしょうか……。

冬を走る・8

【冬を走る・8】今週末から大きなマラソン大会が3週連続で続きますが、最初の大阪マラソンに関しては、すでに出場ランナーの制限が発表されており、多くの市民ランナーは出場することができなくなりました。

さらに、3月に入ると、東京マラソン、名古屋ウィメンズマラソンと続きますが、今のところ出場制限のような発表はなく、このまま何もないことを祈るばかりです……。

また、毎年この時期は冬から春へと暖かい方に季節が移行していきます。そのため、長距離・マラソン選手にとっては、気温の上昇に伴い、調整が難しいと感じる選手も多くなる季節かもしれません。

実は、3月から4月は、マラソン大会の開催も意外と多く、同時期のマラソン大会を目標に走り込みを継続しているランナーの方々は特に、体調管理に注意してほしいと思います(花粉症もはじまったので)。

さて、昨日までの日程で、いつもの千葉県富津市富津公園において強化合宿を実施しましたが、別大マラソンも終わり、次は4月の「かすみがうらマラソン」が目標になります。もちろん、全ての選手がそれを目標にするわけではありません。トラックシーズンに入るので、そちらに目標をシフトしていく選手もいます。

特に、マラソンをメインに考えている選手たちの中には、4月からスピード強化の一環として積極的にトラックレースを走ると決めていたにも関わらず、結局は「何も走らなかった」と振り返る選手は、毎年一定数します(一般の市民ランナーの皆様も含め)。

ロードで実施される各種マラソン大会に関しては、常にアンテナを張って、大会申込みを抜け目なく実行できる方でも、トラック競技になると……。そんな方も今年はトラック競技だけでなく、河川敷などで定期的に開催されている10k以下の短いレースにも積極的に参加するのはいかがでしょうか。

マラソンは何十回も完走しているのに、ハーフマラソンより短い距離のレースはほとんど走ったことがない方は意外と多いからです。極端な例えになりますが、オリンピックのマラソン代表に選考される選手で、トラック競技や駅伝などを走ったことがない選手はいません。もちろん、それに対する例外も皆無です。

つまり、マラソンの自己記録を更新するためには、トラック競技や駅伝(短い距離のレースなど)を走ることは、必要不可欠なのです。

冬を走る・7

【冬を走る・7】先日の13日は、冷雨の中での富津合同練習会でした。その結果、多くの参加者が自分のイメージとかなりずれた悪い内容に陥っていました。もちろん、悪くなった最大の理由は、天候が悪かったためであり、マイナスに考える必要はありません。

しかし、3月のマラソン大会を目標に走り込んでいる方々にとっては、最後の調整(テーパリング)に入っていく時期なので、簡単に納得することは難しい。と、いいながら13日の練習をずっと悔やんでいても次に進まないので、上記したように、「悪かった原因は全て悪天候」とし、気持ちを切り替えることが大切です(月並みですが)。

さて、マラソンは本番のレースも含め、練習においても「長距離を長時間動き続ける特性」があるため、当日の天候に最も左右されるスポーツのひとつといえます。同時に、「長距離を長時間動き続ける特性」のため、同じ練習を短期間に何度も繰り返すことは、体力的にも難しい競技ともいえます。

つまり、「うまくいかなかったこと」を、短時間で繰り返し反復しながら身に付けていくことが、かなり難しい特性もあるといえるでしょうか。具体例として、午前中に40k走を実施したが、強風のため後半失速。そのため、風がおさまった午後からもう一度、40k走をやり直す。

こんなハードなことを実行できるランナーはほとんどいないと思われますが、いかがでしょうか。そこで、天気予報を常に確認し、「悪天候になる日は長距離練習を回避する方法が良いのでは?」と考えますが、マラソン大会の日程は原則として天候に左右されません。したがって、最終的には、マラソン大会当日のコンディションそのものが、その日の天候に左右されることになります。

このように、マラソン競技は練習も含め、当日の天候に左右される特性が強く、記録そのものも当日の天候に大きく左右されます(ある意味、それで記録も決まる)。そのため、別の見方をするなら「記録に対して、自分自身でコントロールできる部分が少ない競技」と、いえるかもしれません。

それらのことから、マラソンに向けた練習は、悪天候の中においても計画どおりに実行していくことは意味があるともいえます。つまり、マラソン大会当日のコンディションがわからない以上、逆にあらゆる天候下での練習経験は不可欠であると……。

そして、その積み重ねが、たんなる記録だけでなく、マラソン競技に不可欠な「勝負強さ(特に精神面)」を身に付けていく、最適な手段のひとつに違いありません。

冬を走る・6

【冬を走る・6】第70回記念大会となった今年の別府大分毎日マラソン大会でしたが、大会当日はスタート前から強い寒風がふきつける悪コンディション。そのため、多くの関係者が、「記録を狙うのは難しいかな?」と思っていたに違いありません。

しかし、ゴールまで積極的に競い合う好レースが続き、西山選手が「2時間7分47秒」の大会新記録で初優勝。更に、上位6名全員が「MGC出場権」を獲得し、記念大会に相応しいレースとなりました。そして、今回も実施いただいた「IPC視覚障がいの部」においては、T11男子で世界記録を樹立するなど、こちらも素晴らしい結果を残してくれました。

まずは、あらためて大会関係者の皆様に御礼申し上げます。

さて、今大会のIPC視覚障がいの部は、昨年実施された東京パラ大会においてメダルを獲得した選手たち全員がエントリーするなど、記録への期待は高まっていました。特に、トラックでメダルを獲得したT11クラスの和田、唐澤両選手が世界記録(2時間31分59秒/T11男子)を更新するのはほぼ確実な調子に仕上がっていました。

同様に、マラソンでメダルを獲得したT12男子クラスの堀越選手と、T12女子クラスの道下選手にもその期待がありました。両選手とも昨年9月の東京パラマラソン後も調子を崩すことなく、記録を狙えるモチベーションと、それに向けたトレーニングもしっかりと継続していたからです。

結果は、上記したとおり、T11クラスの和田、唐澤両選手が見事な世界新記録。そして、T12男子クラスの堀越選手は強い向い風の中、新記録を狙って一般選手たちの集団に位置しながら10kを通過。ところが、11k付近にある給水地点で他選手との接触を避けようとしたところ、まさかの転倒。立ち上がって走り出したが、そのときに強打(かなり深い擦り傷も)した脚や臀部のダメージが大きく、15k過ぎにリタイヤ……。

自他ともに記録への期待も大きかっただけに、堀越選手自身が無念だったことでしょう……。その堀越選手ですが、左目が義眼です。したがって、左側にいる他選手の動きや給水テーブル(障害物など)を把握することは特に難しく、過去にも今回のようなアクシデントは経験してきました。

実は、レース中は伴走者のいる選手より、単独で出走する弱視選手の方が、「給水をうまくとれない」、「転倒のトラブルに巻き込まれる」などのリスクが高く、レース本番に限っては、伴走者の有無がそのまま有利不利には結びつかないのです。とても悩ましい点ですが、弱視選手に対するレース中のサポートなどについては、あらためて再徹底していきます。

そして、最も注目されていたT12女子クラスの道下選手は、目標どおりに世界新記録ペースでレースを進めていきました。ところが、35k以降の強い向い風にリズムを崩し、惜しくも記録更新には届きませんでした。しかし、ゴール後はレースを振り返り、謙虚に自身の課題を自ら指摘し、それに対する具体的な対策のイメージもできていました(振り返りが、たんなるグチになっている選手は多い)。

引き続き、パリパラ大会に向け、皆様のご声援をお願い申し上げます。

冬を走る・5

【冬を走る・5】先日の大阪国際女子マラソン大会は、松田瑞生選手が大会新記録で優勝しました。また、同大会には富津合同練習会で切磋琢磨してきた女性市民ランナーの皆様も多数参加し、最後まで力走してくれました。そしてなにより、厳しい状況下にもかかわらず、大会開催にご尽力いただいた関係者の皆様には、あらためて御礼申し上げます。

さて、ご存知の方は多いと思いますが、松田瑞生選手が達成した大会記録については、「男女混合レースの部」と但し書きがつきます。つまり、大阪国際女子マラソン大会は前回大会から男子選手のペースメーカーをつけたこともあり、大会の扱いが女子ではなく、今回も男女混合大会扱いとなったのです。

したがって、大阪国際女子マラソン大会の大会記録は2つ存在することになります。ひとつは、女子選手のみ(ペースメーカーも含め)で実施してきたときに達成した「野口みずき選手の2時間21分18秒(2003年)」。そして、男子ペースメーカーがつくことによって、男女混合レース扱いとなった昨年からの記録です。

同様に、日本記録も厳密には2つ存在します。野口みずき選手の持っている「2時間19分12秒」は、男女混合レースでの日本記録となり、女子のみのレースで達成した日本記録は、一山麻緒選手が2020年の名古屋ウィメンズマラソン大会で達成した「2時間20分29秒」。

さらに、女子世界記録も男女混合レースでの世界記録は、「2時間14分04秒」。女子のみの世界記録は、「2時間17分01秒」となっています。もちろん、男子にかんしては、2つの記録はありませんが……。

また、今大会でも話題になった「男子のペースメーカー」については、現状のルール上では問題なく、ペースメーカーが走れる距離の規制もありません。あるのは、途中でペースメーカーが代わることができない点です。つまり、「ペースメーカーはスタートから行けるところまで」となるので、5kごとにペースメーカーをかえることはできません。

そのため、男子のレースについては、相当な実力者がペースメーカーを引き受けたとしても「ハーフから30k前後」が目標設定タイムの維持を保証できる限界になるでしょう……。一方の女子は、2時間10分前後でマラソンを走れる男子選手ならゴールまで余裕で並走することは十分可能です。

先日の大阪国際女子マラソン大会は、40k過ぎまで男子のペースメーカーが並走していたので、なかには違和感があるとの意見も散見されましたが、ルール上は特に問題ないといえるでしょうか。

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