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盲人マラソン

絆・6

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【絆・6】先日の4月21日(日)は、全国各地でマラソン大会等が多く開催されました。特に、障害者陸上に関する大会は、長野マラソン、かすみがうらマラソン、そして、熊本県で開催された「チャレンジ陸上大会2013」と、大きな大会が同日に3つも開催されました。

私自身は例年どおりなら、かすみがうらマラソンに役員として参加しますが、今年は熊本県で開催されたチャレンジ陸上2013へ出向きました。

前日の土曜日から全国的に悪天候が懸念されていましたが、案の定、東日本は厳しいコンディションとなりました。長野マラソンは積雪、かすみがうらマラソンも冷雨と、4月のコンディションとしては最も過酷な状況でした。

一方、熊本県の天候は回復し、朝から絶好のコンディションとなりました。今回、盲人マラソン協会の強化指定選手たちは、かすみがうらマラソンと、この熊本県で開催されたチャレンジ陸上大会2013に分かれました。その熊本には、トラック種目でIPC世界陸上を目指す、全盲の和田、谷口選手と、弱視の堀越選手の3選手が「5000m」に挑みました。

3選手とも好調をキープしており、特にロンドンパラリンピック5000mで銅メダルを獲得した全盲の和田選手は、そのときの日本記録を非公式ながら上回る「15分51秒」を、既にマークしております。3選手とも自己記録更新の期待がかかります。

12時45分、タイムテーブルどおりの時間にスタート。3選手ともそれぞれの目標タイムに沿ったそれぞれの設定タイムを刻んでいきます。ところが、3選手とも動きは悪くありませんが、設定タイムから微妙に遅れていきます。具体的には、1周(400m)毎に1~2秒前後ずつ遅れていく感じです。結局、3選手ともゴールでは、目標タイムに対して20秒~25秒前後遅れのフィニッシュとなりました…。※谷口選手はそれでも自己新記録でした。

3選手ともゴール後は首をかしげており、目標タイムを達成できなかった原因を特定できていない様子でした。もちろん、次の大会に向け、立て直していくしかありません。しかし、障害者陸上で国際公認記録となるIPC公認大会は、国内に4大会しかありません。すなわち、残りの大会はあと「3」です。

一般選手のように、日本陸連公認の各種記録会に出場しながら調子を上げていくことは、ルール上難しい状況です。そのため、常に調子のピークをしっかりと合わせていく「ピーキング」が最重要となります。※日本陸連公認とIPC公認は、原則としてリンクしません。

今回の熊本県で、日本記録も幾つか誕生しましたが、全体的に記録は低調でした。今シーズン最初のトレックレースだったことが、記録低調要因のひとつであったことは誰もが感じるところです。しかし、上記したとおり、「今年度のIPC公認の国内大会は残り3」です。

少ないチャンスで世界へのキップを目指すのが、障害者陸上の宿命でもあります。そのためには、「自己記録更新」を狙える状況を常にキープしておくことが、何より優先されます。

つまり、日々のトレーニングはもちろん、日々の自己管理や生活習慣等々、記録を最優先した生活スタイルにシフトしていく必要があるのです。今後は更に、この点を意識した強化を継続していきます。

つづく。

絆・5

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【絆・5】平成25年度もスタートし、マラソン&駅伝シーズンからトラックシーズンへと、本格的な陸上競技シーズンに突入しました。既に、全国各地で本格的な大会や記録会が始まり、私がコーチする選手たち(市民ランナー)も、果敢にトラックレースへ参戦しております。

さて、今年度はロンドンパラリンピックの翌年と言うこともあり、2016年のパラリンピックに向けた強化体制を再構築していくための大切な1年にもなります。

その第一歩として日本盲人マラソン協会は、今年度から正式に女子マラソンの強化をスタートします。最初の1期生となる女子選手は6名です。もちろん、全員が視覚障害者ですが、弱視から全盲の方までと、カテゴリーは様々です。

ところが、パラリンピック種目に女子マラソンは存在しません。トラックでも長い距離は1500mまでと、マラソンどころか中距離種目もままならない現状です。しかし、彼女たちの中には、既に一般の大阪国際女子マラソンや名古屋ウィメンズマラソン等に出場しているランナーもいます。ある意味、男子選手以上にハイレベルな大会を経験しています。

そんな彼女たちの快走をもっと広く認知していただき、逆に、パラリンピック種目に加えていただけるよう、積極的にアピールしていく必要があります。

4月20日(日)、茨城県で開催される「かすみがうらマラソン」では、初めて「IPC公認女子の部」として6選手全員がスタートラインに立つ予定です。既に何度もこのブログで説明しておりますが、IPC公認になると、ドーピング検査や伴走者に対する厳格なルールが適用されたりと、彼女たちにとってはすべてが初めての経験であり、そのことがストレスになることも多くなります。

この1週間の間でも服用しようとする風邪薬の成分を入念に確認したり、レース中に飲食予定の安全性を確認したりと、慣れない確認作業に苦労しております。しかし、この経験を積み重ねていくことが、世界的にも認知されるマラソンランナーへの道であると、確信しております。

視覚障害者の女性ランナーたちにとって、新たな歴史の第一歩として、おくすることなく果敢に挑戦してほしいと心から願っております。そして、その走りを支えていけるよう、今年度も地道な強化活動を継続していく所存です。

皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

絆・4

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【絆・4】平成24年度最後の盲人マラソン強化合宿を3月2日(土)から1泊2日の日程で実施しました。合宿開催場所は、いつもの千葉県富津市です。今回の強化合宿は、毎年恒例となっている「千葉県民マラソン大会」、10kの部にも出場しました。

そして、今年も大会関係の皆様方のご理解とご尽力により、特別招待選手として出場させていただきました。もちろん選手たちにとっては、マラソンに対するモチベーションを高める絶好の機会となりました。あらためて大会関係の皆様方に対し、厚く御礼申し上げます。

今回の同大会には3名の全盲選手が出場しました。北京パラリンピック日本代表選手の新野正仁選手、加治佐博昭選手と、期待の若手選手である谷口真大選手です。特に、谷口選手については、このブログで何度か紹介した選手でもありますが、今回も「34分46秒」の自己新記録でゴールし、世界へ更に一歩近づきました。

さて、仕事や家庭との両立が原則となる市民ランナーの方々からレース後によく次のような発言を耳にします。「〇〇が無いから走り込めなかった」、「〇〇が忙しかったから走り込めなかった」、「〇〇の予定が急に入ったから走り込めなかった」、等々…。皆さんは、いかがでしょうか?

実は、視覚障害者マラソン選手たちも同じように、「伴走者がいないから走れない」、「誰に伴走をお願いして良いかわからないから走れない」、「伴走者が急にキャンセルしたから走れない」、等々、同じような愚痴を良く耳にします。

谷口選手もかつては全く同じようなことを口にし、自らの行動が伴わない選手のひとりでした。ところが、昨年の2月ごろからロンドンパラリンピックを意識するようになり、谷口選手自身の発言や行動が前向きに変化していきました。

しかし、ロンドンパラリンピック代表には、あと一歩及びませんでしたが、その後も積極的な行動で、トレーニングやトレーニング環境を自ら追い求める姿勢をより強くしていきました。具体的な変化として、合宿やレース後はもちろん、日ごろから伴走者たちに対し、「〇月〇日は伴走をお願いできますか?」、「〇月〇日は練習に伺ってもよろしいですか?」、「〇〇大会で自己記録を狙うので伴走をお願いできますか?」、等々、間髪入れずに積極的な発言と行動で伴走者を確実にゲットし、それに伴って記録もグングンのびてきました。

※谷口選手は今大会の翌週にあたる3月9日(土)には、再び単独上京して我々の業界では有名な熱血伴走者と、マラソン特訓を実施予定です。

物事に対して、「積極的になりなさい」と、誰もが一度は耳にしたことがあり、理解もしています。ところが、それを行動に移すことは意外と難しく、できない理由ばかりを並べてしまうものです。特に、単調で変化の少ないマラソンにおいては、その傾向がより強いと感じます。

かくいう私も発言と行動が伴わない典型的なダメ選手でした。しかし、新年度からは谷口選手のように前向きな発言と行動を意識し、選手強化のお手伝いをしていきます。

引き続き、皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

絆・3

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【絆・3】視覚障害者マラソンの普及と発展に力を注いできた「NPO法人日本盲人マラソン協会(JBMA)」が30周年を迎えることができました。この30年の間、本当にたくさんの方々のご尽力とご支援に支えられてきました。あらためて、心より感謝申し上げます。

当協会は、故杉本博敬初代会長の「情熱と行動力」によって誕生しました。その杉本初代会長は自らも中途失明し、想像を絶する苦労を重ねた方です。しかし、同会長は周りの人々が「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」で、次々と理解者を取り込んで当協会の礎を築きました。

さて、視覚障害者がマラソンを走るには伴走者が必要不可欠であり、その伴走者に対しても称賛の声があがります。もちろん素晴らしいことに違いありませんが、マラソンを走ろうと決意して行動をおこすのは、あくまでも視覚障害者本人です。したがって、視覚障害者本人の情熱と行動力が無いと、マラソンのスタートラインに立つことすらできません。つまり、伴走者は選手(視覚障害者)の情熱と行動力によって、選手(視覚障害者)から伴走されるのです。

1996年のアトランタパラリンピックで日本人初の金メダルを獲得した全盲の柳川春己氏は「金メダルをとる!」と、合う人たちに言い続けました。そして、まさに「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」で、見事に金メダルを獲得しました。

これは、一般のマラソンにも当てはまります。今回の30周年記念大会にゲストランナーとして花を添えていただいた公務員ランナーの川内優希選手も決して恵まれた練習環境ではありません。しかし、実業団ランナー(プロ)たちも「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」で結果を残し、今や日本陸連までも熱い視線を注いでおります。

先日の京都福知山マラソンで、全盲の和田伸也選手が2時間36分32秒のアジア新&日本新をマークしました。上記した柳川氏がアトランタパラリンピックでマークした記録は2時間50分56秒と、当時のアジア新&日本新でした。1996年から記録的には14分弱も進歩したことになります。しかし、柳川氏が残してきた功績には、未だ到達することはできません。

これから世界と勝負していくために必要なことは、トレーニング環境やそれを裏付ける資金等、ハード面の整備は欠かすことができません。しかし、先人たちが身を持って示してきたソフト面にあたる、マラソンに対する「舌を巻くほどの情熱」と「圧倒的な行動力」を取り戻すことが、実はこれからの時代にも必要不可欠であると感じます。そして今回、30周年の節目をあらたな土台とし、意識改革も含めた新しい歴史を構築していきます。

引き続き、皆様方の絶大なるご理解ご支援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

絆・2

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【絆・2】千葉県富津市富津公園において、日本盲人マラソン協会主催の強化合宿を先日の11月3日(土)から1泊2日の日程で実施しました。今回も現役学生ランナーをはじめ、多くのランナーたちからの力強いサポートを得ることで密度の濃い合宿となりました。あらためて、厚く御礼申し上げます。

さて、今回の合宿からロンドンパラリンピックで4位入賞を果たした弱視の岡村選手も本格復帰し、この合宿から合流しました。岡村選手は、年齢的にはベテランの域に入っていますが、世界と互角に戦うための走力と高いモチベーションを維持しており、4年後のブラジルリオでも十分に戦える選手です。

しかし、ロンドンから帰国後は年齢的なこともあってか、今後のスケジュールについては、名言を避けていました…。そんなこともあり、我々関係者も様々なことを危惧しておりましたが、これからも我々と共に戦っていくことを自ら決断し、再び一緒に世界を目指せることになりました。特に、若手選手諸君にとっては、何物にも代えられない最高の目標となり、チームとしての高いモチベーションも維持していくことができます。

また、合宿後の今月23日は、京都福知山マラソン大会が開催されます。この大会は、盲人マラソン日本選手権も兼ねており、多くの盲人ランナーを輩出してきた伝統ある大会です。もちろん今回も多くの盲人ランナーがエントリーしております。

そして、その中に今回初マラソンとなる全盲の谷口選手も含まれております。谷口選手は、まだ22歳と期待の若手選手のひとりですが、先日開催されたロンドンパラリンピックを目標に1500mでは、参加A標準記録を突破するまでに成長しました。本当にあと一歩のところで日本代表入りを逃しただけに、私自身としても責任を感じているところでした。しかし、その後も変わりなく地道に走り込む姿勢と、絶対に投げ出さない強い意志に、逆に勇気と希望を与えられました。もちろん、ロンドンパラリンピックに出場した先輩ランナーたちへの力強い後押しになったことは間違いありません。

そんな谷口選手が、いよいよマラソンデビューです。このブログにも何度か記載しておりますが、マラソンは理屈抜きで経験から学ぶことが圧倒的に多く、若いときからマラソンを経験していくことは、トラックを走る上でも必ずプラスに働くと確信しております。

同時に、私がイメージしている以上のスピードで進化している谷口選手のマラソンデビューは、ここまで共に切磋琢磨してきたベテラン選手たちへの起爆剤にもなります。今年の京都福知山マラソンはこれまで以上に注目です。

つづく。

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【絆】ロンドンパラリンピックが閉幕し、ちょうど1ヶ月が経ちました。帰国後、各種報告会や慰労会等々、慌ただしかった選手及び関係者の方々も少しは落ち着いてきた時期でしょうか。また、次のパラリンピックであるブラジル・リオに向けた課題や対策についても、より具体的な方針等がそろそろ見えてくる頃でもあります。

さて、先日の10月6日(土)から2泊3日の日程で、千葉県富津市において盲人マラソン強化合宿を実施しました。この合宿は、先日のロンドンパラリンピック強化とは別に、今年度の強化計画に予め組み込んでいたもので、特別な合宿ではありません。しかし、来年には、はやくもIPC世界陸上競技選手権がフランスで開催されます。したがって、今回の合宿はその大会に向けた最初の強化合宿でもあります。

既にご報告したとおり、ロンドンパラリンピックへは、日本盲人マラソン協会から4名の選手が選出され、それぞれが素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれました。そして、今回の合宿には、そのロンドンで戦ってきた全盲の和田選手、弱視の堀越選手の2選手をはじめ、期待の若手選手やパラリンピックを経験したベテラン選手たちと、久々に多彩な顔ぶれがそろいました。同時に、選手を支える伴走者も箱根駅伝を目指す現役学生ランナーにも多数ご協力いただき、量と質ともに充実した合宿でした。

しかし、一方で盲人マラソンと言っても一般ランナーたちのように全国各地に何万人もの視覚障害者ランナーは存在しません。そのため、マラソンでサブスリーレベルの視覚障害者ランナーは、全国的にも今回の合宿に参加した7名のランナーと、あと数名程度と圧倒的に数は少ないのです。したがって、言葉は不適切ですが、選ばれた選手と言うより、数少ないビックリ人間と言った表現が近いかもしれません。

ところが、この4年間で本当にビックリするほど選手たちは成長しました。それは、今回の合宿でも、選手たちの粘り強い走りを目の当たりすることで、その成長を強く感じることができました。また、若い選手と話しをしている中で、マラソンに対するモチベーションが高くなっていることを強く感じることもできました。

と、言いながら来年のIPC世界陸上競技選手権をはじめ、4年後のブラジル・リオに向け、課題はたくさんあります。しかし、少ない人数でもお互いがお互いを意識し、切磋琢磨していくことで、仲間意識や絆はより深まります。そして、その深い絆こそが、選手たちを大きく飛躍させる最大のエネルギーとなり、大きな目標へと向かっていく原動力となるのです。

これから4年後のブラジル・リオを目指していきますが、仮に強化費や環境が大きく改善されたとしても世界を目指せる視覚障害者ランナーが劇的に増加することは簡単なことではないと感じます。しかし、これまで以上に選手間や伴走者との絆が深まるなら、世界との距離は更に縮まっていくと確信しております。

今後とも皆様方の絶大なるご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

ロンドンパラリンピック・4

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【ロンドンパラリンピック・4】最大の目標としてきたマラソンも無事に終了しました。3人の選手と5人の伴走者で世界に挑んだ結果は次のとおりです。

◆岡村正広(T12・弱視クラス):4位入賞/2時間28分51秒(日本新記録)。◆和田伸也(T11・全盲クラス):5位入賞/2時間40分8秒、伴走者:志田淳、中田崇志。◆高橋勇市(T11・全盲クラス):7位入賞/2時間42分9秒、伴走者:大崎栄、北村拓也、早田俊幸。

目標のメダル獲得には、あと一歩でしたが、全員が入賞を果たすことができました。

今回のマラソンコースは小刻みなアップダウンとコーナーの多さに当初から記録より勝負重視のレースになると予測していました。そのため各選手の設定タイムは下記のとおりとし、それぞれのラップタイムをマイル換算したラップ表を作成しました。

◆岡村正広:2時間24分52秒~2時間27分58秒。◆和田伸也:2時間39分38秒~2時間42分27秒。◆高橋勇市:2時間42分27秒~2時間45分16秒。

9月9日8時00分、T12クラス(視覚障害)とT46クラス(腕の障害)が一緒にスタート!

スタート直後から視覚障害クラスの5選手がトップ集団を形成し、岡村選手の設定どおりのペースでレースは展開されました。また、和田選手と高橋選手も設定タイムどおりの走りで前半を自重し、11番から13番あたりをキープしながらレースを進めました。

レースは後半に入り、先頭集団に動きが出てきます。優勝したスペインの選手がペースアップすると、3人の先頭集団から岡村選手が脱落していきます。しかし、このときの30k通過ラップは、1時間43分2秒と設定した上限タイムとわずか2秒の相違しかなく、あまり余裕がありません。その後、ビルの影から日向に変化する個所で恐れていた転倒もあり、メダルへの可能性が遠のいていく展開となりました。しかし、最後まで持ち前の粘り強さを十分に発揮し、堂々の4位でゴール!

一方、和田選手と高橋選手は淡々と設定タイムを刻み後半に突入していくと、8位集団を猛追です。圧巻は、40k過ぎからの驚異的なスパートで順位をアップし、和田選手が5位、高橋選手が7位と、共に入賞を果たしました。参考までに和田選手と高橋選手は、T11クラス(全盲)ならワンツーフィニッシュでした。

4年前の北京パラリンピックで、視覚障害マラソンは障害クラスの統廃合により、T12クラス(弱視)に統合されました。その結果、メダルどころか入賞もできない厳しい成績での帰国となりました。

この4年間、その時の悔しさを糧に地道な強化を積み重ねてきました。今回のロンドンパラリンピックでは、メダル獲得にはなりませんでしたが、全員が入賞する快挙を果たせました。また、5位に入った全盲の和田選手は、トラックの5000mで日本人初となる銅メダルを獲得するなど、これまでの強化の方法や方向性が間違っていないことを証明することもできました。

しかし、世界との距離はまだあり、4年後のブラジルに向け、引き続き地道な強化で課題を克服していきます。

最後になりましたが、ここまで様々な方から多くのご支援を賜りました。本当にありがとうございました。4年後に向け、更に突き進んでいきます!

おわり。

ロンドンパラリンピックへの道・13

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【ロンドンパラリンピックへの道・13】先日の8月3日(金)から8月5日(日)にかけ長野県菅平高原において、ロンドンパラリンピック強化合宿を実施しました。今回の合宿はロンドンパラリンピックに向けた最後の合同合宿でした。

さて、現在開催中のロンドンオリンピックも後半に入ってきましたが、何よりも日本選手の活躍が目を引きます。それに対し、偉そうなコメントはできませんが、競技団体毎に長期展望に立った計画的な強化や最先端の技術を駆使した成果であることに違いありません。そして、それ以上に狙ったレースや対戦に調子を合わせる「ピーキング」の精度に驚きます。

過去のオリンピックを振り返ってみても、「自己新だったらメダルがとれた」とか、「怪我が無ければメダルだった」等、「タラ、レバ」のコメントに終始する姿が多かったように感じます。しかし、今回のオリンピックは逆に劣勢な下馬評を覆し、見事にメダルを獲得しているシーンが多く、たくさんの勇気や感動を与えています。

そして、そのオリンピック後に開幕するパラリンピックも1ヵ月弱に迫ってきました。オリンピックで熱戦を繰り広げている日本代表選手のように、素晴らしいパフォーマンスをあの大舞台で発揮するための重要な最終調整期に入っていきます。

同時に、狙ったところに調子を合わせるピーキングに移っていきますが、その難しさは誰もが感じているところであり、ここからが本当の勝負です。ピーキングについては、あらためて説明するまでもありませんが、肉体的な部分よりメンタル的な部分に大きく影響を受けると、少なくとも私は感じます。

その具体例として、大会1週間前に突然猛練習を実施したり、日ごろ受けたことのない新しい治療やサプリメントを試したりと、どんな種目の選手でも狙った大会が近づくにしたがって、大なり小なり精神的に不安定な状況に陥っていきます。その結果、調子や体調を崩し、あるいは大きな故障をしたりと、取り返しのつかない状況に追い込まれるケースは意外と多いのです。※私は「不安症候群」と呼んでいます。

そんなメンタル的には不安定な時期に入りましたが、今回の菅平合宿では選手毎にトレーニング内容や設定タイムに相違があり、それぞれが個々の調整時期に入っていきました。もちろん、この合宿そのものに参加せず、独自のトレーニング計画に沿って調整している選手もいます。

具体的な合宿の内容として、弱視の岡村選手は最後の40k走に挑み、全盲の和田選手は逆に質を重視した内容にシフトしていました。また、この合宿に参加しなかった代表選手たちもそれぞれの計画に沿ったトレーニングをキッチリと消化しております。

このように、それぞれが自分自身の調整計画に沿って淡々と消化していくことこそが重要です。これからロンドンパラリンピックに向け、周囲からの期待やプレッシャーをうまく受け流しつつ、いつもと変わらぬ調整を貫いてほしいと願っています。

そして、最終調整期のポイントは、「迷ったら休養」です。

最後になりましたが、あらためて皆様方の絶大なるご声援をお願い申し上げます。

おわり。

ロンドンパラリンピックへの道・12

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【ロンドンパラリンピックへの道・12】いよいよロンドンオリンピック開幕が迫ってきました。もちろん、オリンピックの後はパラリンピックです。パラリンピック日本代表選手たちもこれから最後の調整段階に入っていきます。

先日の7月14日(土)から7月22日(日)の日程で、北海道深川市においてロンドンパラリンピック陸上競技に出場する日本代表合宿がおこなわれています。選手はもちろん、スタッフたちもそれぞれのスケジュールを調整しながらこの合宿に参加しています。

視覚障害の長距離マラソン代表選手の3選手は、14日から2泊3日の日程で参加し、トラック種目に出場する弱視の堀越選手については、最終日の22日まで頑張ります。

さて、ここで陸上競技日本代表選手の障害クラス別の人数を大まかに紹介しておきます。はじめに、上記合宿現在の陸上競技日本代表人数は合計36名。その内、車イス選手が18名、立位選手が18名となっており、その18名の中で視覚障害選手は6名です。

更に、視覚障害選手6名の内、2名が女子選手で、残りの4名は長距離マラソン選手です。したがって、この6名以外で陸上競技日本代表に選考された視覚障害選手はいません。

実は、立位の視覚障害クラスや切断クラスの記録は年々レベルアップしており、どの種目も健常者の記録と遜色なく、かなりのレベルに到達しております。そのため、オリンピック同様、立位選手がトラック種目でのパラリンピック出場は極めて難しい状況になりつつあります。

また、視覚障害クラスの全盲選手につていは、伴走者をはじめ日々のトレーニングをサポートしてくれる協力者が必要不可欠であり、その人材を確保できるか否かが最初に高いハードルになっています。

今回、日本代表選手に選考された全盲クラスの高橋選手と和田選手についても、「日々の伴走者をどのように確保するか?」を、常に悩みながらのトレーニングとなっています。至極当然のことながら選手にとっては相当なストレスであり、選手生命に直結する重要な問題でもあります。

特に、全盲の和田選手は、1500mにもエントリーしております。和田選手のベスト記録は、「4分19秒」ですが、4分10秒前後の記録も狙えるレベルにまで到達しています。ところが、このレベルの選手を伴走するには、1500mで3分台相当の走力が求められてきます。ご存知のとおり、ランニングブームの到来でランナー人口は爆発的に増加していますが、1500mを3分台で走れる市民ランナーは全国的に見てもほぼ皆無と言ってよいでしょう。

このように、パラリンピックに出場する視覚障害選手の走力は確実に上がっていますが、それを本当にサポートできる環境は不十分と言うのが現状です。

しかし、パラリンピックに出場することで、それぞれの選手にとっては、障害者スポーツを世間に知ってもらう一番の舞台であることに違いありません。そして何より、パラリンピックの舞台で選手自身が最高のパフォーマンスを発揮することが、今後のトレーニング環境改善や次世代育成へとつながっていくのです。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・11

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7月3日、ロンドンパラリンピック日本代表選手及び役員の公式発表がありました。日本盲人マラソン協会の強化指定選手からは、4名の選手が選出されました。

◆T12クラス(弱視):岡村正広、堀越信司。◆T11クラス(全盲):和田伸也、高橋勇市。

エントリー種目は、高橋選手はマラソンのみの出場ですが、パラリンピック3大会連続出場。堀越選手は、トラック種目のみの出場で、北京パラリンピックからの2大会連続出場となります。そして、岡村選手と和田選手は初めてのパラリンピック出場となりますが、マラソンとトラック種目のとちらにもエントリーします。

さて、4年前の北京パラリンピックでは、障害クラスの統廃合が実施された影響もあり、メダル獲得はおろか入賞すらできず、本当に悔しい思いで帰国したことを今でも鮮明に覚えています。そして、その悔しい思いを決して忘れることなく、この4年間は地道にかつ冷静に強化を継続してきました。

しかし、今回のロンドンパラリンピックでは前回の北京大会と同じく、視覚障害者マラソンはT12クラスのみの実施となります。したがって、T11クラスの和田選手と高橋選手は前大会同様、障害の軽い選手たちと勝負する厳しい状況は変わりませんが、入賞ラインは視野に入っています。そして何より、T12クラスの岡村選手がチームジャパンとしては、2大会ぶりのメダル獲得を狙える位置までに仕上がってきました。

また、T11クラスの和田選手は、トラック種目の1500mと5000mにも出場します。しかも両種目とも上位入賞を目指せる記録を残しています。大いに期待のかかるところですが、歴代のオリンピック選手を振り返っても、トラックの1500mからロードのマラソンまでを同時に走りこなした選手はほとんど皆無です。

なぜなら、若いころは短い距離でスピードを養成し、少しずつ距離をのばしながらマラソンに移行していくスタイルが一般的だからです。ところが、和田選手の場合、最初からマラソンを目指しました。その結果、マラソンをしっかりと走り切れる強靭なスタミナと脚力が身についていきました。

そして、ここからが和田選手の特徴的なところで、マラソンを走り切れる強靭なスタミナと脚力が身についたことで、質の高いトラックでのスピード練習がどんどん消化できるようになりました。その結果、この1年間で和田選手が潜在的に持っていたスピードが、一気に開花してきたのです。

特に、近年のトラック種目で世界と対等に勝負を挑める日本選手は、オリンピック選手を含めても稀です。今回トラック種目に出場する和田選手や堀越選手の活躍を大いに期待したいと思います。

この4年間でロンドンパラリンピック代表選手に選出された上記4選手とは、多くの強化合宿を共にしてきました。4年前の北京大会と比較してもその成長ぶりは一目瞭然です。ロンドンパラリンピックではそれぞれが持ち味を発揮し、「チームジャパン」として世界と対等に勝負してくれるに違いありません。

皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

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