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秋を走る

10月を走る・4

【10月を走る・4】10月23日から実施した強化合宿は無事に終了。今回、東京パラで銅メダルを獲得した堀越選手も強化合宿に復帰し、久々に苦しんでいました。また、次のパリパラは3年後に迫っており、東京パラを1年延期した影響がいろいろと見えてくるのも、まさにこれからでしょう。

特に、東京パラに出場し、次のパリパラも視野に入れている選手たちにとっては、心と体をゆっくりする時間はあまりないかもしれません。たった1年の延期でしたが、これまで積み重ねてきた経験とノウハウが微妙にズレ、そのほころびが想定外に大きくなっていく可能性もあるからです。

いずれにしても、心身ともに健康第一で取り組んでほしいと願っております……。

さて、23日は箱根駅伝の予選会が実施されました。その翌日の24日は富津公園においても、箱根駅伝に出場するいくつかの大学がトライアルを実施していました。その中には前日の予選会を通過した国士舘大学と神奈川大学の姿もありました。

もちろん、その予選会を走った選手たちの姿はありませんでしたが、チーム一丸となって箱根駅伝を目指す足並みはしっかりと揃っていました。これも毎年のことですが、この時期になると、富津公園では箱根駅伝を目指す各大学の姿が多くなります。

また、全日本大学駅伝大会が近づいていることもあり、トレーニング内容もより実戦に近い、トライアルのようなハードなものが多くなっていると感じます。そして、その選手たちが疾走する姿は、いわゆる厚底シューズの影響もあるのか、まさにぶっ飛んでいます。

駅伝ファンのひとりとしては、「今年は〇〇大学が強い」「〇〇大学は厳しい」など、勝手なことを話す時期ですが、箱根駅伝には各大学ともたったの10名しか出場できません。また、どの大学にもその何倍もの選手たちがメンバー入りを目標に、日々過酷な競争を繰り返しています。

そのため、富津公園でトライアルをしているどの大学の選手たちも、まさに死に物狂いで走っています。もちろん、それは至極当然のことですが、年々加熱している箱根駅伝を目指す選手たちは故郷の期待など、相当なプレッシャーを背負っています。それはある意味、日本代表選手よりも過酷かもしれません。

単に駅伝ファンのひとりなので偉そうなことは言えませんが、心身ともに健康第一で取り組んでほしいと願っております……。

10月を走る・3

【10月を走る・3】先週は気温が高くて走り込むには厳しいと、話しをしましたが、今週は逆に気温が一気に下がりました。まさに体調管理の難しい季節です。また、今週末からは、本格的な駅伝シーズンがはじまります。駅伝ファンとしては、わくわくする季節の到来ですが、出場する選手の皆様、関係者の皆様においては、体調管理には注意してほしいと思います。

また、一般のマラソン大会も少しずつですが、復活してきた様子です。もちろん、富津合同練習会で切磋琢磨している中にも、それらのマラソンを目標にしている人たちもいます。しかし、久々にマラソンを走る人も多いので、今の調子や走力を自分自身で把握しきれていない人も、多いかもしれません。

やはり、夏以降の走り込みが計画的に推移してきたか否かが、その目安のひとつになると思います。まずは冷静に振り返り、現在の調子や走力を把握することからです。なかにはコロナの影響で、夏以前からも走り込めていない人もいることでしょう。そんな人は、初心にかえって素直に完走を目標にするのが賢明かもしれません。

反対に、大会が無い中においても、ストイックに走り込みを継続してきた人は、蓄えてきた力を存分に発揮できるチャンス到来です。特に、ここから最後の調整に入る人は、トレーニングの質をキープしながら量を落とし、自己記録更新を狙える調子に仕上げてほしいところです。

また、年末以降に開催される各地のマラソン大会の開催要項なども見えてきたので、出場可能な大会への申し込みと、それに向けた目標の設定を明確にしていくことが可能になりました。特に、次の目標を年明けの2月から3月のマラソン大会に設定している人にとって、本格的な走り込みを開始するには、今が最適なタイミングとなります。

つまり、場当たり的なトレーニングに陥らないよう、計画的にじっくりと走り込める時間があります。更に、自身の課題とそれを克服するための具体的なトレーニング方法などを吟味することも可能な時間があります。

繰り返しになりますが、コロナなどの影響でブランクのある人ほど、あせらずじっくりと走り込んでいきましょう。富津公園でお待ちしております!

10月を走る・2

【10月を走る・2】10月に入りましたが、気温が30度前後になる日もあり、走り込むには厳しいコンディションです。そんな中、いつもの千葉県富津市富津公園で強化合宿を実施しました。

目標はパリパラになりますが、東京パラという山の頂を目指したときと同じように地道な強化が必須であり、それを継続していきます。しかし、現時点の立ち位置は、その山頂も見えない山のふもとからも更に離れた場所になるでしょうか。

そして、これからその山を攻略していくためのルート探しや、途中に待ち構えている難関を調査する最初の段階になりますが、今はその山全体の姿すら確認することもできません。もちろん、最初から本命の大きな山を攻略していくことはできません。

東京パラのときと同様、途中に大小の山があり、それを乗り越えていかないと、本命のパリパラという山には辿りつけないのです。そして、その最初の山となるのは、12月に開催される「防府読売マラソン大会」になります。

同大会は、パリパラの位置から見ると、最も離れた山となりますが、ここをうまく登れた選手は勢いがつきます。特に、東京パラの代表に届かなかった選手たちにとっては、いろいろな意味で最初のチャンスです。

しっかりと走り込んで、最初の山に挑んでほしいと願っております。

10月を走る

【10月を走る】本格的なマラソンシーズンに向け、各地の練習会などが盛り上がってくる季節に入ってきました。と、いいながら秋以降の各種マラソン大会の動向も不透明な状況が続いています。

もはやモチベーションを維持しようとすることも、既にあきらめた人もいるかもしれません。目標としていたマラソン大会がことごとく中止や延期に追い込まれ、その目標の「的」が次々に無くなれば、どんな人でもやる気をなくします。

また、的が無くなれば走る目的もかすみ、練習会などからも足が遠ざかります。更に、その練習会に参加しなくなると、仲間の走る姿から刺激を受けたり、直接語り合う機会も激減し、ランニングを通じて仲良くなった友人とも疎遠になっていきます。もちろん、SNSを通じて、それらを補うことはある程度可能でしょう。

しかし、ランニングは単調なスポーツなので、SNS上にアップされている各種コメントやどの動画も、最終的には同じような内容に終始し、ここでもマンネリ化に陥っていきます。その結果、ランニングに関するSNSからも遠のいていくのでしょうか(個人的な感想)。

さて、今月から富津合同マラソン練習会も本格的に再開しました。3日の練習会では、久々にお会いした人もいました。やはり、直接お話しをすると、お互いのモチベーションは高まります。同様に、元気に走っている姿を拝見すると、こちらも元気になってきます。

先日、富津公園でジョギングをしているとき、実業団の強豪チームである「HONDA」が、全員で集団走を実施していました。見るからにかなりのハイペースでしたが、一糸乱れぬその集団の足取りに見とれてしまいました。「なんて強いチームだ!」と……。

やはり、その現場に直接足を運び、直接語り合い、直接見ることは、モチベーションを高め、継続していくための最もシンプルで最善な方法なのでしょう。かくいう私もランニングにかかわって数十年経過しましたが、飽きもせず継続できている最大の理由はそこにあると考えます。

そして、マラソン大会という的がかすんでいる今だからこそ、あえて練習会そのものを的にし、純粋に仲間と一緒に走り続ける喜びを目標にすることも、正しい選択のひとつといえるでしょう。

9月を走る・5

【9月を走る・5】次の目標に向け、強化合宿を再開しました。場所は千葉県富津市富津公園です。来年3月末まではこの富津で走り込んでいきます。また、毎年恒例となっていますが、箱根駅伝を目指す大学やニューイヤー駅伝を目指す実業団チームの選手たちが走り込む姿も、この富津に戻ってきました。

一方、東京オリパラに出場し、活躍した選手たちの多くは体と心を休め、これまでの緊張感から少しは開放されている時期でしょうか。あるいは、そろそろ次の目標に動き出している選手もいることでしょう。

さて、惜しくも地元開催のオリパラに出場できなかった選手や同大会において目標を達成できなかった選手たちにとっては、逆にチャンス到来でもあります。なぜなら、前述したように東京オリパラで活躍した選手たちの多くが、本来の姿(調子)から離れた状況にいるからです。

国の代表を目標にしているような選手たちは、黙っていても猛練習を自分自身に課します。したがって、自分より実力が上位の選手たちも常に猛練習をしていることになり、自分自身がどんなに努力してもその差を縮めていくことは容易ではありません。

また、スポーツの多くは強化合宿などを通じて、ライバルたちと切磋琢磨しながら自らの実力も高めていきます。そのため、ライバルに対して、常に勝ちづづけることは相当難しい。しかし、一方的に負け続けることも少ない。まさに切磋琢磨であり、その実力差は紙一重の世界になっていきます。

ところが、東京オリパラ後のこの時期は特別な状況になっているともいえます。日ごろ切磋琢磨することで、お互いに実力を高めることができますが、そのライバルが何らかの理由で手を抜いている状況だとしたなら、まさにチャンス到来といえるでしょう。

少し不謹慎な言い回しになりますが、ライバルが動きを止めているとき(ケガや故障も含め)、いかにしてそのライバルに対し、更なる追い打ちをかけられるか否かは、勝負事においてはとても重要なことのひとつといえます。つまり、そのスキに自分自身がどれだけ練習を積めるか否か。

2016年リオパラのT12男子マラソンで銅メダルを獲得した岡村選手は、2012年ロンドンパラでは4位でした。今回、東京パラのT12男子マラソンで銅メダルを獲得した堀越選手は、2016年リオパラでは4位でした。実は両選手とも、相当悔しい思いを一度は経験し、その気持ちをその後の練習に反映させた結果が、悲願のメダル獲得につながったのです。

9月を走る・4

【9月を走る・4】前回の続きです。2020年12月の防府読売マラソン後は、走り込みをしながら春のトラックレースを目標にしました。一般的に長距離やマラソンでは、「スピードをつけてから長い距離に移行する」と言います。もちろん、必ずしもこのとおりではありませんが、考え方のひとつとしては間違いないと思います。

また、人の体は、「スピードがついてくるとスタミナは落ち、逆にスタミナがついてくるとスピードは落ちるため、両方を一緒に狙えない」とも言われています。つまり、マラソンを目標にしたスタミナ重視のトレーニングと、5kのスピードアップを目指すトレーニングの両立は難しいと言われている理由のひとつです(私の経験上もほぼ同じ)。

したがって、9月のパラマラソンに向けた本格的な走り込みを6月からと計画していたので、その走り込みに入る前は、トラックレースでスピードを高める流れにしました。実は、夏マラソンを攻略していく上で大切なポイントは、単なる暑熱対策だけではありません。そのポイントのひとつが、目標としている夏マラソン直前の冬マラソン(12月から2月)で自己記録を更新していることです。

これも夏マラソンをスタミナと仮定した場合、その直前の冬マラソンはスピードとも言えます(かなりこじつけですが)。つまり、オリパラのようなビッグイベントの多くは夏に開催されるので、スピード(冬マラソン)を高めてからスタミナ(夏マラソン)に移行する流れになり、それが理にかなっていると感じます。

さて、4月から5月までのトラックレースでスピードを高める計画(自己記録更新)でしたが、実際はそうなりませんでした。それは、昨年12月の防府読売マラソンで自己記録を達成した選手たちほど、その後は故障や不調などのリバウンドが大きく、結果的には春先まで体を休める方が主となったからです。

コーチの立場としては、焦りのような気持ちもありましたが、これも結果的には良い休養期間となり、日本代表選手たちは6月からの走り込みに集中することができました。その走り込みは、定期的に距離走(長い距離)を実施していくオーソドックスな方法です。もちろん、暑さを考慮し、設定タイムをコントロールしながら走り込んでいきました。

その詳細は割愛しますが、6月は長野県上田市菅平高原で強化合宿を実施し、起伏の激しいコースを使った「40k走」を4本。7月は北海道北見市に場所を移して強化合宿を実施し、同じく起伏の激しいコースを使った「40k走」を2本、平坦なサイクリングコースを使った「40k走」を2本の合計4本走りました。8月の第1週も北海道北見市で最後の「40k走」を実施したので、6月から合計すると、「40k走」を9本実施しました。

最後の40k走後は、距離を落としながら設定タイムを少しずつ上げていく流れに移行していきました。8月26日午前、北海道北見市における最後の練習を終え、午後から千葉県富津市富津公園に移動。いつも慣れ親しんだこの富津を最終調整の場所に選びました。そして、パラマラソン1週間前は富津で最後の「16k走」を実施し、9月1日の午後から選手村に入村しました。

オリパラが1年延期となりましたが、上記した計画は2年前に決定していました。もちろん、その前から何年も同じ場所で強化合宿を繰り返しながら東京パラの戦略を練り上げてきたので、選手たちもその土地や宿泊旅館、そして、地元の人たちにもなじみ、ストレスなく長期滞在できるようになっていた点が何よりでした。

このように、多くの方々にご支援いただいた結果がメダル獲得につながりました。あらためて、お世話になった皆様方に厚く御礼申し上げます。地元開催の地の利を活かした戦略と戦術が成功しました。

9月を走る・3

【9月を走る・3】東京パラマラソンに向け、強化合宿などを積み重ねてきましたが、どのような過程を経て、9月5日を迎えたのかを、少し振返ってみます。もちろん、「こんなにすごいことをしてきた」とか「この方法や考え方しかない」と、言ったことではありませんので、予めご了承願います。

まずは何と言っても東京オリパラの開催が「1年延期」になったことでしょうか。これにより、東京オリパラに関係する全ての選手やスタッフなどに大きな衝撃が走りました。更に、世論も含め、様々な意見が飛び交い、強化活動を継続していくことが不透明な状況に陥った競技団体も多数ありました。

ブラインドマラソンの選手たちにも動揺は見られましたが、それもすぐに収束し、「個々にできることをしっかりと継続していこう」と落ち着きました。既に、日本代表選手にほぼ内定している選手や有力候補選手たちの地元でのトレーニング環境については、どこでも走れるマラソン競技の特性上、それほど悪化することがなかった点も幸いしました。

ところが、全国各地のマラソン大会や各種競技会などが軒並み中止や延期に追い込まれていったのは、正直言って困りました。このまま、1年と数ヶ月後の東京パラマラソン当日まで1回もマラソン(各種競技会なども)を走れないとしたなら、それが選手たちにとって最も不安要素になるからです。

しかし、2020年12月の防府読売マラソン大会は関係者のご尽力により、予定通りに開催する方向で調整が進みました。同大会は、ブラインドマラソンを早くから取り入れていただいている大会でもあったので、この大会で記録を狙うことに目標が定まりました。

そして、誰が東京パラマラソンの日本代表選手に選考されたとしても、その当日までに走れるマラソンは「この大会が最初で最後」と、どの選手たちも並々ならぬ決意で、2020年の夏から走り込みを重ねていきました。結果的には、この「一点集中力」を東京パラマラソンの1年前に実践(予行)できた点が大きかった。

2020年12月の防府読売マラソン大会の結果は、男子は堀越選手が大幅な自己新となるアジア新で優勝。女子は道下選手が、自身の持つ世界記録を更新する自己新で優勝。更に女子の2位は、藤井選手がWPA世界ランキング上位に入る大幅な自己新を達成。

この後は悪い方の予想が的中し、この防府読売マラソン大会が東京パラマラソン前に出走した最後の大会となりました。そして、先日の東京パラマラソンでは、堀越選手が銅メダル、道下選手が金メダルを獲得。そして、藤井選手が5位入賞と、2020年12月の防府読売マラソン大会で快走した3選手が、東京パラマラソンでも上位にキッチリと食い込みました。

これは、単なる偶然ではなく、昨年の防府読売マラソン大会で見せた「一点集中力」を、今回も個々に再現できたからなのです。

9月を走る

【9月を走る】9月1日に最後のポイント練習を富津で実施し、その日の午後、都内の選手村に入りました。昨年から大会が1年延期となり、一時的に不安定な状況になりましたが、何とかここまでたどり着くことができました。

幸い、この間もパラマラソンに出場する選手とガイドランナー全員が、順調にトレーニング計画を消化することができました。これも、延期後も変わらず、多くの方々からご支援いただいたその成果です。重ねて御礼申し上げます。

さて、入村後は天候不順が続いており、このままの状況でマラソン当日を迎えそうですが、何よりも「暑さ対策」を第一に強化してきたので、逆に複雑な心境でもあります。とはいうものの、8月の北海道北見合宿においては今と同じような天候や気温が続き、その中においての調整だったので、天候や気温に対する不安は感じておりません。

また、マラソンの勝負は「1対1」ではなく、「1対他」になります。したがって、レース展開や相手の動きをコントロールしていくことは極めて困難なスポーツとも言えます。更に、勝負している時間が単調で長時間なので、その日の天候に大きく左右されますが、その日の天候をコントロールすることはできません。

つまり、ライバルを個々に分析したり、当日の天候を過去の実績から統計的に予測していくことはたいして意味のないことと、あらためて感じます。別の見方をすれば、マラソンはほとんどのことを自分自身でコントロールすることができないスポーツとも言えるでしょうか。

至極当然のことですが、ライバルの動きや当日の天候を自分自身でコントロールすることはできませんが、自らの身体と心を自在に動かせる状態に仕上げることは自分自身で可能です。要は、自分自身が、肉体的にも精神的にも最高の状態で大会当日を迎えることができるか否かだけが勝負するポイントになります。

偉そうなことを言ってきましたが、「そんなことは誰でもしている」と。しかし、多くの選手がそれに気づいていながら周りばかりに気を取られ、それを実践することに失敗してきたのも事実です。

レース当日まであと数日ですが、「休養第一」で、おだやかに過ごします……。

秋を走る・8

【秋を走る・8】この1週間は、全日本大学駅伝大会をはじめ各地区の実業団駅伝大会などが開催され、いよいよ本格的な駅伝シーズンが到来しました。また、12月開催予定の福岡国際マラソン大会や防府読売マラソン大会の当選発表(?)もあり、マラソンシーズンに向けても動き出してきました。

同様に、大学関係が主催するトラックでの長距離記録会も例年並みに戻りつつあるでしょうか。また、それぞれのリザルトを拝見すると、特に学生選手(男子)たちの記録躍進は驚異的と感じるのは私だけでしょうか。

いわゆる「厚底シューズ」の使用ルールが決まりましたが、国内に限っては11月末までのトラック競技使用も事実上認められている状態です。その影響は間違いなく好記録に結び付いていると感じます。

一方、それぞれの大学や選手たちが厚底シューズを上手に乗りこなす技術や、厚底シューズを着用したトレーニング時の設定タイムなどのノウハウが確立されつつあるとも感じます。これからはじまる本格的な駅伝・マラソンシーズンで、驚異的な記録を目の当たりにする可能性が高まっているのは事実であり、駅伝・マラソンファンとしてはとても楽しみです。

また、この厚底シューズはトップ選手だけでなく、市民ランナーや高校生、中学生にも深く浸透しています。特に、市民ランナーの方々は学生選手や実業団選手たち並みに普及している印象です。

厚底シューズの記録への影響について、正確なデータや報告を私は見たことがありません。しかし、マラソンを目標にしている市民ランナーの場合、厚底シューズに変えたことで5分以上の記録短縮を達成した方もいるでしょうか。特に、走力が3時間20分程度以内の市民ランナーの方々は、トップ選手以上に厚底シューズの恩恵を受けている方も多いと感じます。

ランニングは道具を使わないスポーツとして広く知られているので、誰でも気楽にはじめることができます。一方、シンプルなだけに「上手い、下手」ではなく、まじめに努力した人が結果を残せるスポーツとしても広く知られていると思います。

しかし、まさかの厚底シューズの登場で、記録はもちろん、トレーニング理論などにも大きな影響を与えるかもしれません。その昔、トラックはアンツーカー(土)でしたが、1968年のメキシコ五輪あたりから今の原型となるタータントラック(全天候型)に移行し、記録が大躍進しました。

厚底シューズを着用し、トラックで驚異的なスピードを出せるノウハウをつかんだランナーたちが、ロードの駅伝やマラソンでどんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみです。

秋を走る・7

【秋を走る・7】コロナ禍の影響で各種大会が中止や延期に追い込まれている中、皮肉にも今年の秋は例年以上に走り易い気候になっていると感じているのは私だけでしょうか。

千葉県富津市富津公園において実施した強化合宿も恵まれた天候のおかげもあり、順調に走り込むことができました。今回の強化合宿は6日間の日程でしたが、26kビルドアップ走を1回、40k走を2回など、どの選手も積極的に走れていました。

また、箱根駅伝予選会も無事に終了し、全日本大学駅伝や東日本実業団駅伝などが迫っていることもあってか、今回の合宿期間中は学生選手も実業団選手もほとんど見かけない珍しい状況でした。特に平日の富津公園内は人も車もまばらになっていたので、のびのびと走り込むことができました。

11月もこの富津公園を拠点とした強化合宿を2回実施予定です。11月は10月の強化合宿よりスピードを高める内容にシフトしていきますが、走り易い気候が続いているので、一気に調子が上がっていかないような見極めとサジ加減が必要になります。

12月の防府読売マラソンを目標にしているので、11月に調子が一気に上がりだすと、12月に入るころには調子が落ちていく可能性も出てきます。もちろん、目標の大会に調子を合わせる方法は様々ですが、これまでの経験だと、調子を引き上げていくよりも上がり切ってしまった調子を維持(継続)する方が圧倒的に難しいと感じます。

例えるなら、ある入れ物に水を注いで満杯にしてく作業より、その入れ物から溢れて外に流れ出た水を元の入れ物に戻す作業の方が難しいとでも言いましょうか。11月は更に走り易い気候が予想されるだけに、より慎重な距離やタイムの設定が不可欠になります。

特に、10月を順調に走り込めた選手ほどその見極めが難しいと感じます。単に調子が良いのなら11月後半から調子が落ちていくことが懸念されます。しかし、走力そのものが一段上のレベルに到達しているとしたなら、距離やタイムの設定を上方修正する必要があるからです。

もう少し掘り下げて言うなら、12月の防府読売マラソンで、「自己記録更新を狙えるか否か」の判断を選手ごとに見極めていく時期に入ってくるのが11月でもあるからです。物事は難しく考えると難しい答えしか出ないと言いますが、シンプルに考えてもその見極めは難しいものです。

これからは風邪にも注意です。

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